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【非番】

ご覧頂き、ありがとうございます。


今回から数話は日常回になります。

有馬くんと莉子ちゃんのやりとりをお楽しみくださいませ。

 シュヴァリエとの決闘より数日。

 〝非番〟の俺はトウヤ基地正門前にいた。

 

 歩道と車道の間に設置された焦茶色のポール型のガードレールに腰掛け、ジーンズのポケットに両手を突っ込む。

 

 時刻は午前九時を回ったところ。

 夏の日差しは確実に気温を上げようと照り続けているが、夜の間に冷やされた空気はまだ冷たく、気持ちが良かった。


 “ジャンヌ・ダルク”のエンジンを破壊した後、俺たちは大型の輸送ヘリに回収されて基地に戻った。 

 そのヘリに“ワルキューレ・ブレイズ”も吊り下げられたわけだけど、結局今回の戦闘での損傷は〝ゼロ〟。

 かすり傷一つする事なかったその機体を見て、オヤジさんは相当に驚いていたなぁ。


 オヤジさんと言えば。


 基地に帰った佐倉は出迎えたオヤジさんと抱き合って喜んでいた。

 この基地を守りたい一心で、頑張り続けてきた佐倉とそれを支え続けてきたオヤジさん。

 更にそれを見守ってきたクルー達。佐倉を迎える彼らの涙がすごく印象的だった。


 その後は基地に泊まり込み、身体の検査やら何やらをしてるうちに数日が過ぎて、やっと今日休みを頂けたというわけだった。


 ルゴールの奴らのサッポロ掃討作戦の後の俺の処遇はどうするか決まってなかった訳だけど、結果的に俺は〝傭兵〟として帝国軍と契約する事にした。


 そもそも兵隊の経験がない引きこもり&不登校の高校生もどきの俺が、傭兵ってのも変な話だけど。


 正式に【帝国軍】に入るっていう手もあるにはあるみたいなんだけど、それこそこの世界の情勢も把握しきれていない。

 けど佐倉は悪いヤツじゃなさそうだし、少なからず情も移っている。だからこの世界に慣れるまではここで世話になろうかなって思ってる。

 

 それに傭兵になれば給料も出る。それに住居の方も融通してくれるらしい。

 佐倉の家族と過ごすのが嫌ってわけじゃないけど、これである程度自立した生活を送れるはずだ。


 今更だけど、俺はこの世界で生きていく決心をした。


 そういうと少し大袈裟かな。

 実際には〝諦めがついた〟と言った方がいいのかもしれない。

 

 前の世界での俺の一生は終わっているらしいし、あの世界に帰りたいとも思わない。残念ながら。

 

 それより俺の力、【パトリオット・オンライン】での経験と知識で救われる命がもしあるのなら、こんな俺でも誰かのために出来ることがあるのなら。


 この世界で暮らしていくのも悪くないかなって思う。


 基地に帰ってきた俺たちを迎えてくれたトウヤ基地のクルー達の多くは笑顔だった。そして笑っていなかった者は漏れなく泣いていた。


 俺のやったことで誰かが喜んでくれるなら、しかもそれで自立した生活が送れるなら言うことないよな?


 そう思った俺はトウヤ基地で働く事になったわけだ。

 中卒の就職先としてはまあまあなんじゃないかと自分でも思う。


「……ちょっと早く来すぎたかな」


 俺は軍から支給されたイカツイ腕時計で時間を確認する。

 時刻は午前九時四分。


 今日は佐倉がどうしても連れて行きたい所があるからと、こうして待ち合わせしている。

 女の子と待ち合わせなんかしていない俺は実は結構ビビっていたりする。


 デートか、これはデートなのか。


 俺は異性との交流はリアルでは全くの皆無だったので、そういう事に関する知識は全部ラノベやアニメなんだけど。

 それと照らし合わせると、どうやらこれはデートと言って差し支え無さそうだな。


 ただ、持ってきてくれと言われたこの“ワルキューレ・ブレイズ”のパイロット・ヘルメットは一体……。


 と視線をヘルメットに落としていると、バイクのエンジン音が聞こえてきた。

 夏とは言え、まだ気温が上がりきっていないこの時間ならツーリングにはもってこいなんだろうな。


 そんなことを思いながら音のする方に何気に目をやる。


 落葉樹が均等に植樹された車道の向こうから、そのバイクが颯爽と走ってきていた。

 エンジン音ももとより、下品すぎないマフラーの音が耳に心地よい。

 バイクには詳しくはないけど、『ザ・オートバイ』と言った外見の丸いヘッドライトの大型バイクが近いてきて、何故か俺の前で止まった。


「お待たせ有馬くん。って言っても、ずいぶん早いね? 約束は十時のはずだけど」

「……?」


 なんで俺の名前を。


 ヘルメットのシールドはスモークがかかっており、ライダーの顔が見えない。

 けど身体のシルエットや、何より声が女性……って。


「……さ、佐倉か?」

「え、そうだよ。あははっ、分からなかった?」


 そう笑ってからライダーがシールドを上げる。

 声の主はやはり佐倉だった。


 白いTシャツに黒の薄手のジップアップパーカー。

 タイトなダメージジーンズをハイカットブーツにインしている。

 革製の手袋をしてハンドルを握る姿は、なるほどこれはまたサマになっている。


「いや、まさかバイクで登場するとは思わないだろ」

「ちょっとしたサプライズだよ。ふふふっ、どうやら成功したみたいだね」

 

 しししっと白い歯を見せてイタズラっ子のように佐倉は笑った。

 確かに驚かされたので、佐倉のサプライズは見事成功した事になる。

 華奢な佐倉が跨る大型バイクとが見事にギャップを演出し、サプライズにもう一個違う感情が上乗せされている。


 けれどその不釣り合い具合が何とも言い難いが良く似合っていた。


 完全にサプライズしてしまった俺は、それを素直に認める事にした。


「成功も成功だよ、いや驚いた」

「サプライズも成功した事だし。さ、乗って」

「……は?」


 そうあっさりと言うと、佐倉は後ろの席をポンポンと叩いた。

お読みいただき、ありがとうございました。


 少しでも『面白い!』『続きが読みたい!』『頑張っているな』と思っていただけましたら、【ブクマ】【評価】を頂けると嬉しいです♪


 莉子ちゃん×バイク。いい掛け算だなぁ…

 

 バイクのイメージはカワサキのZ900RSのイメージです♪

 良かったら画像検索してみてください(^^)


 次回の投稿日は未定ですが、近々に投稿致します。

 どうか変わらぬご愛顧よろしくお願いします。

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