【瞬間、心、重ねて】
ご覧頂き、ありがとうございます。
今回は少し文字量が多くなってしまいました。
“ワルキューレ・ブレイズ”の袈裟掛けの一撃。
“ジャンヌ・ダルク”はその一撃をSVSで防ぐ。破裂音とも取れる、耳を刺す金属音が響き両機が激しく肉薄する。
背面スラスターを全開にした一撃もパワー型パトリオットの“ジャンヌ・ダルク”は容易に受け止める。
しかし凄まじい衝撃波が起こり、ビルのガラスが割れた。
勢いに乗せた剣撃も一旦“ジャンヌ・ダルク”が受け止めてしまったら更に押し返すのは困難だ。
押し切るのは不可能と判断した俺は、すぐさま後方に跳躍し間合いを取る。
左腕で腰部のアサルトライフルを引き抜き、フルオートで斉射。
『効きませんわっ!!』
砲身から放たれた無数の弾丸が“ジャンヌ・ダルク”が纏った魔導光子障壁に阻まれてデタラメな方向に跳弾し、ビルのガラスを突き破り、けたたましい音を立てた。
「んなこと分かってんだよぉ!」
魔導光子障壁を常時展開できるとは言え、自身が攻撃している時は当然解除しなければならないのは知っているし、その逆も。
つまり展開中は攻撃出来ない。
アサルトライフルをフルオートで斉射。
もちろんこの射撃でのダメージなど期待していない。本命は……こっちだよ!
俺は右手に装備していたヴァリスセイバーを地面に突き刺し、叫んだ。
「ロングバレルキャノン用意っ!!」
「了解!」
俺のその言葉を待っていた佐倉がすぐさまコンソールパネルを弾き、“ワルキューレ・ブレイズ”にロングバレルキャノンを装備させる。
背面右側のアームが可動し、やがて右脇に収まる。その間アサルトライフルでの牽制射撃を怠らない。
『くっ! 時間稼ぎだったのですね、小賢しい!』
大口径の大砲が装備された“ワルキューレ・ブレイズ”を見て、流石に焦りを見せたシュヴァリエ。
三十六mm弾を正面から受けるのを止めてスラスターを起動、射線上から逃れようと移動を開始する。
「逃すかよっ!!」
時間が惜しいと感じた俺は、伸縮式の砲身を伸ばすことなく発砲。
七十六mmライフル弾を発射した。猛烈な反動が“ワルキューレ・ブレイズ”の各関節を軋ませ、黒い硝煙が銃口から吐き出された。
百二十mm弾を選択しなかったのは“ワルキューレ・ブレイズ”を固定する暇が惜しかったからだ。
固定なしでぶっ放すと反動で機体に何らかのダメージが出る可能性がある為だ。
“ジャンヌ・ダルク”は足を止め、両腕を前に突き出す。
『――はぁぁぁ!!』
シュヴァリエの掛け声と共に展開された魔導光子障壁。
先程までの薄い膜ではなく、今度は強固な虹色の壁が現れ、ロングバレルキャノンから発射された七十六mm弾を受け止めた。
高速で飛来したはずの弾丸は不思議な事に、その虹色の壁に阻まれて空中でぴたりと静止している。
それでも弾丸はゆっくりとジャイロ回転し、“ジャンヌ・ダルク”に迫ろうとしている。
バチバチとスパークが弾け、衝撃の強さが見て取れた。
アサルトライフルの小口径弾とは違い、大口径弾なのでそれなりに強固な壁を展開しなければならない。
シュヴァリエが弾丸を処理している隙にロングバレルキャノンを格納。突き刺していたヴァリスセイバーを引き抜き、スラスターを焚いて突撃を仕掛けるっ!
「うおおおおおおっ!!」
急加速によって生まれる荷重が全身にのしかかる。
佐倉も辛いのか歯を食いしばり耐える。
「有馬くんっ!」
ヴァリスセイバーを振りかぶったのと同時に、魔導光子障壁で防いでいた七十六mm弾が粉々になり、消えた。
『無駄ですっ!!』
追い討ちをかけるように振るった剣も“ジャンヌ・ダルク”の魔導光子障壁によって阻まれる。
ヴァリスセイバーを防いでいる間に体勢を立て直した“ジャンヌ・ダルク”は大型SVSを脇に構えて横薙ぎに剣を振るう。
それと同時にバリアは解除され、支えを失ったヴァリスセイバーが空を斬る。
『勝負ありですわっ!!』
“ジャンヌ・ダルク”の刃が迫る。
超振動する特殊合金製のそのブレード、それは確実に“ワルキューレ・ブレイズ”の首を狙って来ている。
……これを待ってた。
アドレナリンが分泌されたのか、スローモーションのようにゆっくりと迫る刃。
“ジャンヌ・ダルク”のツインアイに“ワルキューレ・ブレイズ”が、俺が写っている。
ヴァリスセイバーから手を離し一時的に破棄。
“ワルキューレ・ブレイズ”全身の【魔導力伝達線】に佐倉の魔力を送り込むと人工筋肉が躍動し、関節トルクモーターが唸った。
左脚を大きく踏み込んで右腕で拳を握り、力任せに突き出す。
支点となる右脚部で踏み抜いたコンクリートの歩道に蜘蛛の巣状のヒビが入った。
不意をつかれた動きをしたのか、シュヴァリエが驚嘆の声を上げるが……もう遅いっ!!
振り抜いた拳は“ジャンヌ・ダルク”の左腕を破壊。シュヴァリエは勢い余って大剣を取りこぼす。
あんな大きな剣なら片手じゃ、いくらパワー重視のパトリオットとはいえ扱えない。
『ぐっ……な、なんですって!?』
主力武器を奪った。でもまだ終わらない、
“ジャンヌ・ダルク”にはまだ――。
「有馬くんっ!!」
佐倉の声がコクピットに響く。
“ジャンヌ・ダルク”は中遠距離用の武装を捨て、浮いたコストで各関節のトルクを上げた接近格闘用のパトリオット。
けれど苦手射程を補う唯一の武器がまだ残っている。
『行きなさいっ、les ailesっ!!』
そう、“ジャンヌ・ダルク”の背面に装備された二枚の翼。
空中を自在に飛び回るSVS。【les ailes】だ。
シュヴァリエの魔力で操られているであろうその刃の切先が“ワルキューレ・ブレイズ”に向けられる。
そして停止するとこなく高速で迫る。
でも、
「読んでるんだよっ!!」
“ジャンヌ・ダルク”の上後方から迫る、対の刃。
腰部ハードポイントから【パンツァー】を引き抜き発砲。マズルフラッシュが瞬き、大口径散弾砲が吠えた。
間髪入れず二発。
無数の散弾が左右それぞれのレ・ゼルを捉える。
火花が散り、散弾の威力に押された二枚の翼は激しくスパークした後コントロールを失い、あらぬ方向へ飛び去ってビルと歩道にそれぞれ突き刺さった。
『な、なんですって!?』
SVS、そしてレ・ゼルを潰した。
「佐倉っ!!」
「了解っ! 【魔導力変換装置】出力最大っ!!」
“ワルキューレ・ブレイズ”が一瞬しゃがみ込み、次の瞬間に空中に飛び上がった。
機体出力をその瞬間に集中し、最大にしたそのパワーは、“ジャンヌ・ダルク”にも匹敵する。
「魔導光子障壁展開!」
見上げるほど跳躍した“ワルキューレ・ブレイズ”の上方に虹色の壁、魔導光子障壁を展開させ、機体を反転。
空中でバリアに着地する。
逆さになった状態で再び大きくしゃがみ込み、全身にタメを作る。
【魔導力伝達線】が人工筋肉に魔力を流し込むと膨張したそれが特殊装甲を内側から押し上げて軋んだ。
「スラスター全開ぃッ!!」
「了解、スラスター最大出力!!」
佐倉が応答するとの同時に、こちらを見上げる“ジャンヌ・ダルク”に向けて跳躍。スラスターが火を噴いた。
コクピット内のあらゆる計器類の針が振り切れ、機体が軋んだ。
強烈なGが操縦桿を押し込む腕を押し返してくる。
それを全力で拒み、全体重をかけて倒す。
空中にバリアを展開させ足場にし、そこからの地面にむけて重力落下、そして全力加速。
全体重を乗せた飛び蹴りを繰り出すッ!!
「うおぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!」
「【魔導力増幅装置】、出力全開ぃッッ!!」
【魔導力増幅装置】が起動し、佐倉の魔力を帯びた“ワルキューレ・ブレイズ”の右脚、いや、全身が虹色の粒子に包まれた。
狙うは腹部!
“ジャンヌ・ダルク”の【魔導力変換装置】を貫く!
『そんなもの、受け止めてみせますわ!!』
“ジャンヌ・ダルク”はこちらに右腕と、砕けた左腕をかざす。【魔導力増幅装置】を起動させて魔導光子障壁を展開させる。
バリアの透明度が極めて低い。強度が今までの比ではない事を物語っている。
“ジャンヌ・ダルク”の周りに突風が吹き遊び、屈強な虹色のバリアが現れた。
その中心に向けて猛烈な蹴りを繰り出す――‼︎‼︎
「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!」
虹色に輝く“ワルキューレ・ブレイズ”の右脚と“ジャンヌ・ダルク”の展開するバリアが触れた瞬間に、接触部分を中心に巨大な魔法陣が展開される。
イナズマの様な光が瞬き、爆発じみた破裂音が弾ける。
接触の際に生まれた衝撃波で二.三棟のビルが崩れた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」
俺の前で佐倉が吠えた。
普段の優しげな雰囲気は消し飛び、目の前の敵を倒す事だけを考えているのだろう。
絶叫とも取れる雄叫びは、正に戦士のそれだった。
“ワルキューレ・ブレイズ”の蹴りを受け止めはしたが、層になった“ジャンヌ・ダルク”のバリアを一枚、また一枚と破り、少しずつ近づいていく。
『ぐっ!? この私が押されているっ!? ルゴール王国の騎士のマリオン・シュヴァリエがッ!?』
上空からの飛び蹴りを必死で耐える“ジャンヌ・ダルク”の両脚はアスファルトにめり込んでいる。
それでも“ワルキューレ・ブレイズ”を受け止めようとバリアの出力を更に上げた。
『あってはなりません……私に敗北などぉぉぉッ!! はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
しかし“ワルキューレ・ブレイズ”は、俺たちは止まらない。
佐倉は最後の魔力を振り絞り【魔導力増幅装置】の出力を維持する。
“ジャンヌ・ダルク”の魔導光子障壁が残り一枚になった時、両機の力が相殺されたのか、ようやく“ワルキューレ・ブレイズ”は“ジャンヌ・ダルク”の機体に届くか届かないかのギリギリの所で止まった。
それを見たシュヴァリエがまたも恍惚な声色で笑う。
『ふふっ……あはははっ! 止めましたわ、渾身の一撃をっ!!』
あたかも勝利を確信したかの様に。
でも、勝つのは俺たちだ。
「パイルバンカー、射出ッ!!」
「っ!!」
俺の合図を待っていた佐倉が右脚に格納されているパイルバンカーを作動させた。
超磁力で加速された鋼鉄の杭が踵部から射出されると、“ジャンヌ・ダルク”が展開していた最後の魔導光子障壁を突き破り、その先にあるエンジン、【魔導力変換装置】をも貫く。
『な、な……』
もはや衝撃から守る盾は無い。
魔導光子障壁が消えると、スラスター全開の“ワルキューレ・ブレイズ”が勢いそのままに“ジャンヌ・ダルク”を蹴り飛ばした。
エンジンを貫かれた“ジャンヌ・ダルク”は脱力し、それこそ糸の切れた操り人形の様に吹き飛び、地面を転がり、ビルに激突し、沈黙した。
膝をついた状態で着地した“ワルキューレ・ブレイズ”の装甲の繋ぎ目からは白い煙が上がり、内部に発生した熱の高さを物語っていた。
勝った。俺と佐倉で。
次の瞬間、俺と佐倉は拳を握り、短く勝鬨を上げた。
ご覧頂き、ありがとうございました。
見事“ジャンヌ・ダルク”を討つことに成功した二人。
これにてサッポロ市街戦は終了です。
後日談でも触れますが、残された“ヴォルガー”は全機武装解除して決闘を見届けておりました。
彼女らは野盗などではなく、誇り高き騎士団員なので隊長がやられたとしても無様に襲い掛かってくるような事はありません。
そしてこの回のタイトルですが、私の愛する作品からお借りしております。
優介と莉子の二人の力で“ジャンヌ・ダルク”を倒すお話だったので、敬意を込めて使わせていただきました。
お読みいただき、ありがとうございました。
少しでも『面白い!』『続きが読みたい!』『頑張っているな』と思っていただけましたら、【ブクマ】【評価】を頂けると嬉しいです♪
続きは鋭意執筆中ですが、お話はまだまだ続きます。
引き続き、ご愛顧のほどよろしくお願いします。
2021.10.02 悠木悠




