【マリオン・シュヴァリエ】②
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「……さぁ、胸を貸してやるよ。かかって来いッ!」
『ふっ……ふふふっ。面白いですわっ!! このマリオンの前で世界最強を謳い、あまつさえ胸を貸してやるなどと……私、貴方に興味が沸きました』
そうシュヴァリエが言った後に、不思議な事にアサルトライフルを携えた“ワルキューレ・ブレイズ”の目の前に光の粒子……恐らく魔力の粒子で形作られた四角い何かが現れた。
それが魔法で練り上げられた契約書だという事に気がつくまでには少し時間がかかった。
『契約を結びましょう。この決闘に負けた者は、勝者の所有物になるのです』
なんだそんな事か。
「ああ、いいぞ」
「えっ!? あ、有馬くんっ!?」
あまりにアッサリとした返事に驚いたのか、目を丸くした佐倉が俺を振り返った。
まだ決闘は始まっていないとは言え戦闘中だぞ、前見てろ前。
『え、あ、そ、そんなアッサリ……?』
シュヴァリエとやらもこんなにもアッサリ俺が頷くとは思わなかったのか、やや虚をつかれた様な声がスピーカーから漏れてきた。
「ただし対象者はお前と俺だけだ。佐倉……この子は対象外だ」
「あ、有馬くん……」
だってそもそも戦場に来ている以上は、それなりの覚悟をしてきているわけだし。
もちろん死ぬつもりもなければ殺すつもりもない。
俺が勝ったらそんな約束はサッサと破棄してしまえばいいし、万が一負けたとしても所有物になると言う事は問答無用で殺されたりはしないはず。
つまり保険にもなるだろ?……楽観しすぎか?
「有馬くん!? そんなに簡単に契約しちゃっていいのっ!? あの契約は魔法だよ。魔力による強制力があるからもし破ったりなんかしたら……」
心配そうに佐倉はそう言ったが、当の俺は気楽なものだ。
「絶対に大丈夫だから安心しろって」
しかし「コホン」と咳払い一つで心のスイッチを切り替え、調子を取り戻した様に言う。
『女の方は要りませんわ。契約成立ですわね』
パチンと指を鳴らす音が聞こえた後に、“ワルキューレ・ブレイズ”の目の前に現れていた契約書なるものが魔力の粒子になって弾けた。
それを確認すると“ジャンヌ・ダルク”はビルから飛び降り大剣を構えた。
『さぁ、死力を尽くして戦いましょうっ!!』
恍惚としたシュヴァリエの声がスピーカーから漏れる。
そして“ジャンヌ・ダルク”の構え。
今までの“ヴォルガー”の比じゃない程強い。
俺はアサルトライフルを腰部ハードポイントに戻し、佐倉にヴァリスセイバーの装備を告げた。
左背面のアームが可動し、大型SVSヴァリスセイバーが左脇に移動してきた。
柄を握ると鞘部分がゆっくりと後退していき、抜刀を補助する。
鞘から引き抜かれたそれは、夏の日差しを反射し鋭く輝いた。
機体の三分の二程もある両刃の剣を両手で持つと垂直に剣を立てて、右肩口で構えて油断無く“ジャンヌ・ダルク”を睨みつける。
「要らないだなんて……別に貰って欲しいわけじゃないけどムカついちゃった」
「ははっ、佐倉でもムカつくだなんて言うんだな」
「それはそうだよ、人間だもの」
「そのネタこの世界でも通用するのな」
「……?」
首を傾げる佐倉を見る限り偉大な先人の言葉を借りた訳ではない様だった。
『イチャイチャしてる暇なんてありませんわよっ!!』
おっとしまった、オープン回線を開きっぱなしだった事を忘れてた。
シュヴァリエが駆る“ジャンヌ・ダルク”が大型のSVSを振りかぶり、突撃してくる。
背面から青色のスラスターが噴射し、“ヴォルガー”の
それとは比べ物にならないスピードで“ワルキューレ・ブレイズ”に迫る。
「イチャイチャなんて……」
「してねぇんだよッ!!」
猛烈な加速からの袈裟掛けの一撃を敢えて正面から受け止める。
超振動する刃同士がぶつかり合い激しい金属音が響く。
“ジャンヌ・ダルク”の斬撃は完璧に防いだが、ヴァリスセイバーを押し込む力は凄まじい。
やっぱり機体のポテンシャルが違う。それに魔力が。
パトリオットの機体性能はエンジンである【魔導力変換装置】の性能と比例するんだけど、操縦者の魔力量も大変重要になってくる。
強い魔力を持つ物が乗れば機体のポテンシャルは上がり、いくら性能の良い機体に乗っても魔力量が少なければ宝の持ち腐れになる。
そして目の前の“ジャンヌ・ダルク”。
それは魔力量、機体性能。どちらも持ち合わせている様に思える。
勢いは殺したはずなのに、ジリジリとそのパワーに押されて“ワルキューレ・ブレイズ”は少しずつ後退してしまう。なかなかのパワーだ。
量産型の“ワルキューレ”をカスタマイズしたのが“ワルキューレ・ブレイズ”。しかし基本的な仕様は“ワルキューレ”と大差ない。
一方シュヴァリエの駆る“ジャンヌ・ダルク”は完全なワンオフ機。【パトリオット・オンライン】内でも高い人気を誇る近接用パトリオットだ。
中遠距離武装を捨て、その分格闘用に各関節部のトルクモーターの性能を向上させている。
単純な力比べで“ワルキューレ・ブレイズ”に勝ち目はない事はわかっている。
『ふふふっ、やはり口だけなのですかっ!?』
スピーカーからは先程までの凛とした声色ではなく、やや艶を帯びたサディスティックにも思えるシュヴァリエの声が聞こえた。
騎士団の隊長って言ってたし、戦いが好きなタイプなのかもな。
俺は両脚の踵部分に格納されているパイルバンカーを右脚だけ作動させて片足を地面に固定する。
本来、ロングバレルキャノンの百二十mm砲を発射する時の固定用なんだけど。スパイク代わりだ、とりあえずこれで踏ん張りが効く。
“ワルキューレ・ブレイズ”を押し込めなくなった“ジャンヌ・ダルク”が更に押し込もうとスラスターを更に開く。
猛烈な負荷が“ワルキューレ・ブレイズ”の関節を軋ませた。
刹那。
パイルバンカーで固定された右脚を軸にし、身体を開き“ジャンヌ・ダルク”を受け流す。
『っ!?』
不意をつかれた“ジャンヌ・ダルク”はバランスを崩し、よろめく――。
その瞬間を見逃さない。
俺はヴァリスセイバーを素早く振りかぶり、“ジャンヌ・ダルク”の機体に叩きつける。
――取った。
「おおおおぉぉぉおッ!!!」
超高速で振動する特殊合金製の刃が“ジャンヌ・ダルク”の青い装甲に触れる瞬間、突如現れた虹色の膜のように薄い壁にヴァリスセイバーの刃が阻まれ、火花を伴って弾かれた。
「……くっ!? な、なにっ!?」
虹色の膜に弾かれた拍子に“ワルキューレ・ブレイズ”の両腕が空を向く。
懐がガラ開きに……っ!
それを見逃す“ジャンヌ・ダルク”、シュヴァリエではなかった。
大剣を横薙ぎに一閃。それをギリギリで躱して一旦距離を取る。
「い、今のはっ!?」
ヴァリスセイバーを構え直して“ジャンヌ・ダルク”を見据える。
バランスを崩していた“ジャンヌ・ダルク”も今は既に体勢を立て直し、間合いを見極めながら大剣を構えている。
俺のその疑問に佐倉は“ジャンヌ・ダルク”から目線を外す事なく言った。
「……魔導光子障壁」
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続きは明日の朝更新。




