【サッポロ市街戦】⑤
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廃墟同然のビル群の中にある開けた空間。
この街がこうも荒れ果てる前は憩いの場になっていたであろう長さ一.七km、幅百mの広大な公園。
その入り口とも出口とも言える場所に陣取った。
いやー、敵がよく見える。
「あ、有馬くん……!?」
正面モニターのアイコンタクト用ワイプに佐倉の顔が映し出されていた。
佐倉のその整った顔立ちは青ざめ、引き攣っている。
“ヴォルガー”といえどれっきとした【パトリオット】が二十機、一個小隊に単機で突っ込んで行くのだから、まぁ怖いだろうな。でも。
「大丈夫。これで敵が全員出てきてくれる筈だ」
俺はそう言うとワイプ越しではあるけど、佐倉と目を合わせる。
この街に降下して何機かと戦ってみて何となく相手の力量や練度が分かってきた。そしてこのリアルな【パトリオット】の扱い方も。
「もうっ、絶対に無事に帰してよねっ!」
俺の顔を見て何かを感じ取ってくれたのか、佐倉が諦めた様に言う。その口端は少しだけ緩んでいた。
「もちろんだっ、こんな所で死ねるかっ!」
モニターを見ると、比較的近距離に配置していた“ヴォルガー”数機がSVSやマシンガンを携えて距離を詰めてくる。
すぐさまヴァリスセイバーを引き抜いて近接戦を仕掛けたいけど……。
バレてんだよな、丁度大通りの逆側に狙撃手がいるのが。
別に姿を発見した訳じゃない。
こんな見晴らしの良い場所だし、狙撃しやすそうなポイントを見つけて光学センサーをズームしてやると、長い砲身の狙撃銃の用意をしている【パトリオット】が……ほらいた。
対角の背の高いビルの屋上にももう一機。
今頃になって準備してても遅いんだよな。
「手前の敵より、遠くにいるやつを先に叩くっ! ロングバレルキャノン、用意っ!」
「え、りょ、了解っ」
狙撃手の機体に気づいていなかった佐倉が少し驚いた様子をした後に、素早くコンソールパネルを叩いた。
“ワルキューレ・ブレイズ”の背面右側に取り付けられた二つの銃口を持つ異形の長砲身大砲【ロングバレルキャノン】が可動し、右脇に挟み、抱える様に装備された。
右手はグリップを握り込み、引き金に指をかける。
左手はその長い砲身を支える様に前床に添える。
伸縮式の砲身が伸びていき、しっかり機体に密着させる。
それは身の丈程にもなり、二本からなるその銃身は大砲そのものだった。
ボルトハンドルを引くと薬室が開き、弾倉から七十六mmのライフル弾が装填される。
射撃モードに移行。正面モニターに拡大された“ヴォルガー”と照準が表示される。
前床に左手を添えて照準。
「……っ!」
心の中で当たれと念じて引き金を絞ると、上下にあるふたつの銃口のうち、下方の銃口が火を吹いた。
強烈な反動がコクピットを揺らす。
放たれた弾丸が一.七kmを一瞬で飛来し、向かって左のビルに登っていた“ヴォルガー”の腰部に命中した。
七十六mm弾は全長八mの【パトリオット】からしてみても大口径の部類に入る。
それが直撃したのだから、腰部はもちろん、腹部にあるエンジン【魔導力変換装置】ごとえぐり取っていった。
「よし」
「えっ、め、命中っ!? 照準したの、今っ!?」
「こんな距離、適当に撃って当たるかっ!」
「違う違う! 当てずっぽうで撃ったのか疑ってるわけじゃなくてっ! 照準早すぎない!?」
俺の照準が早かったのに驚いているって事か?
「だって早くしないと敵が……って、もう一機!」
コクピットブロックに被害がないのを確認して即座に右側の“ヴォルガー”に同じように照準、同じく腰部に〝マニュアル〟で照準を合わせる。
早くもう片方のやつを撃ち落とさないと。
数体の“ヴォルガー”が距離を詰めてきているんだから。
「喰らえっ!」
一.七kmの狙撃なんて【パトリオット】からしてみれば大した距離じゃない。
しかし十分に照準し、引き金を引いた。
再びロングバレルキャノンが吠えた。
マズルフラッシュが弾け、猛烈な振動がコクピットを揺らす。
そして先程の“ヴォルガー”同様、腰部に命中させる事に成功。大腿部から腹部が吹き飛び、様々なパーツだった物が飛散した。
「な、なんて早い照準なのっ? しかもしっかりとコクピットは避けてるっ。この距離なのに……」
「これも今度教えてやるよっ!」
そう返事をするや否や、大腿部に格納されているホルスターから拳銃を引き抜き、向かってくる“ヴォルガー”に発砲。
遊底が後退し、薬室から空の薬莢が飛ぶ。
すぐさま再度発砲。二発とも一番近い“ヴォルガー”のメインカメラに命中。
同じ要領でもう一機の“ヴォルガー”のメインカメラも破壊、のちにエンジンにも次々と弾丸を撃ち込んで機能を停止させる。
あっという間に近距離にいた“ヴォルガー”を三機を仕留め、SVSを携えた二機の“ヴォルガー”に対峙する。
「ヴァリスセイバーはっ!?」
「あー、今はいいやっ」
大上段からの兜割り、それを紙一重で躱し拳銃を持っていない左手で手首を掴む。
相手の力を利用し、手首を捻るのと同時に相手の脚を払う。すると八mの巨体が軽々と腕を支点に一回転して地面に叩き付けられた。
ある程度機体がショックを相殺してくれている筈だけど、パイロットは激しく揺さぶられて気絶したか、“ヴォルガー”は立ち上がる事はなかった。
今のうちにと思ったのか、もう一体の“ヴォルガー”が背面スラスターを焚いて接近。SVSで渾身の突きを放つ。
それを俺は機体を翻して一閃を凌ぎ、すれ違い様に肘関節に拳銃を発砲。右腕を破壊する。
機体のバランスを取り、こちらを振り向いた瞬間を狙って頭部に上段回し蹴りを放つっ!
「うおりゃあぁぁあッ!!」
蹴りが入った頭部は千切れ、サッカーボールのように遥か向こうのビルの影に吸い込まれていった。
そして両肩に拳銃の弾丸を放つ。
そこにあるであろう関節駆動用モーターを破壊すると動くのは両脚のみだ。
乱暴に蹴り飛ばして転がしてやる。両手、さらには頭部が無いので、起き上がる事は出来ない……いや、念のため膝のモーターも破壊しておく。
コイツには悪いけど、このまま寝ていてもらおう。
敵の動きに違和感は無い。連携は取れている、装備もよく知っているし、使い方も上手だ。
だけど、まだまだだな。
もちろん油断はしない。前みたいにいきなりファ◯ネル的なヤツで攻撃されたら堪らない。
俺は空になったマガジンを捨てて新しい弾倉を装着、遊底をスライドさせてからホルスターに仕舞った。
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続きは明日の朝更新。




