【サッポロ市街戦】③
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【パンツァー】散弾砲の先台をスライドさせて排莢、即座に発砲、続いてもう一発。
“ヴォルガー”は目を伏せて、肩を入れる。機体側面で散弾を受けるために。
広範囲に飛散する散弾は回避こそ難しいが、個々の破壊力はマシンガンの足元にも及ばない。
距離を取った今の【パンツァー】は頭部のメインカメラにさえ当たらなければ良いと言わんばかり。散弾は“ヴォルガー”の装甲に弾かれた。
アサルトライフルをパージした事を頭の片隅で少しだけ後悔した。しかし背部左に装着した大型SVS、【ヴァリスセイバー】を引き抜く。
操縦桿越しにもズシリとした重量感を感じた。
背部ハードポイントに装着されたそれは、装備時にはアームが可動し、左腰部に配置される。
巨大な両刃の剣のようなビジュアルのそれを肩に担ぎ、スラスター全開で“ヴォルガー”に一気に襲いかかる。
“ヴォルガー”もSVSで応戦。俺の一撃を受け止める気らしい。しかし、
「力比べで“ワルキューレ・ブレイズ”が“ヴォルガー”に負けるかよっ!」
機体加速と体重、そして剣の重さを乗せた一撃を袈裟掛けに打ち込む。確かに重いその大剣は、振ると不思議と羽根のように軽かった。
耳障りな金属音と火花を散らす。それは一瞬。切先で“ヴォルガー”のソードを弾くと腹部に突きを放つっ!
エンジンを貫かれた“ヴォルガー”は膝から崩れ落ち、モノアイの輝きを失ってから沈黙した。
「これで三機っ」
俺は【ヴァリスセイバー】を納刀しつつ、アサルトライフルを回収。マップを確認して移動を開始する。
近くに敵はいるのは間違いないけど、ビルが盾となっているため接敵にはまだ時間がある。
「……ここまで二十二秒っ? す、すごいっ! すごいよ、有馬くんっ」
作戦行動時間を確認した佐倉が興奮した様子でそう言った。
戦闘中でも意思疎通がしやすいように、佐倉の表情はモニターの端にワイプで常に表示されている。
その表情も声色に伴って嬉しそうだ。
その顔があまりにもキラキラとした物だったので、俺は少しくすぐったくなって頬をかいた。
「そ、そうかぁ? 普通だろ?」
なんてスカしてみるけど内心はこうだ。
「うおー実戦こえぇ! 衝撃やべぇ! 音すげぇ! 全部守るとかいってゴメンなさい!!」
もちろんそんな事は言わない。
俺の内心などつゆ知らず、弾んだ声色で佐倉は続ける。
「あんな動き見たことないっ! 同じ機体に乗ってる私ですら動きが追えなかったよ。それにあれだけ弾幕を張られてたのに、一発もかすりもしないなんて……」
「アイツらの装備は性能がいい。狙ったところにちゃんと弾が飛ぶから、銃口を見てればそれなりに躱せるんだよ。慣れるまでに時間はかかるけどな」
「射角を目で見て予測していたのっ? あの一瞬で……?」
それこそゲーセンの開店時間から閉店までの十二時間ぶっ通しでやってれば身につけることが出来るはずだ。
それと操縦が苦手な佐倉の事だし、余計に俺のプレイ……じゃない、操縦が異常に見えたのかも知れないな。
もちろん人には得意不得意がある。自分の当たり前を他人に押し付けるつもりはない。
だから佐倉の言葉を俺は素直に受け取っておく事にした。
「でも、ありがとな。今度佐倉にも教えてやるよ」
「ほ、本当っ? あ、ありがとぅ」
ぱぁっと表情を明るくさせる佐倉。
うん、これだけ素直な反応をされると悪い気はしない。
「っと、また接近……距離と方向から、多分この先の大通りにいる」
佐倉のその声に俺もレーダーマップで確認する。
確かに位置と距離から、この先の大通りに“ヴォルガー”が居るっぽいな。近距離レーダーに二機だけど……もちろんそれだけじゃ無いはず。
「多分、狙撃手が居るな」
「あそっか、確かにそうかもしれないね」
俺たちはその大通りのちょうど端の交差点に向かっている。
マップで見ると大通りは全長約一.七km、幅百mの開けた場所。片側四車線の大きな道路の間に大きな公園跡などもあり、【パトリオット】同士で戦うとなると、こっちにとっても向こうにとっても好条件の場所。
けど、当然向こうもそれは分かっているだろうし、先に部隊を展開しているルゴールの奴らが有利だ。
大通りに面した路地に【パトリオット】を配置して、待機。遠距離から援護しつつ、近接戦に持ち込む。
数機を撃破出来たとしても、多勢に無勢。こちらの弾薬が切れるか、パイロットがくたびれるか、だ。
間違いなくルゴール軍は俺たちをこの大通りに誘い込む作戦だろう。
その旨を佐倉に伝えると困ったように口をへの字にした。
「……うーん、どうしよう。こっちは一機だし、まとめて向かって来られたら捌ききれないよね……?」
「いや、手はある。俺がいつもやるヤツなんだけど……やってもいいか?」
「有馬くんのやり方? どんなやり方か分からないけど、キミにお任せするよっ。私なんかよりずっと【パトリオット】を上手く使えるんだし」
全面的に任せる。佐倉はそう言った。
佐倉が同意してくれるなら、俺としてはありがたい。
今の戦闘で実機での操縦のコツは掴めた、全く違和感なく操縦出来る。
だからいつも通りで良さそうだな。
「よし、それじゃあそれで行こう」
「うんっ。有馬くんに任せるよ、私はサポートするっ」
「おう、よろしく頼んだぞ」
佐倉はにっこりと笑うと、力強く頷いた。
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続きは明日の朝更新。




