【サッポロ市街戦】②
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「……な、なんだこれっ?」
照準が思い通りに行かず、俺はトリガーを引く事が出来なかった。
発砲するのを止めてビルの間に身を隠す。佐倉が心配そうに振り向いた。
「ど、どうしたの有馬くん?」
「照準が上手く行かないんだっ」
俺はコンソールパネルをいじって原因を調べる。
この新型、“ワルキューレ・ブレイズ”の試験やテスト運転などしていない。ぶっつけ本番だ。
だからこんなもんですよと言われたらそれまでなんだけど、照準器が思ったところに行かない。
火器管制システムに万が一不具合があるのかも知れない。メンテをしたのはオヤジさんなので、そんな事無いとは思うけど……。
「えっ、どういう事っ?」
それを聞いた佐倉もコンソールパネルを叩き、火器管制システムを調べる。
「照準するんだけど、トリガーを引く前に勝手に照準がズレるんだ」
俺は敵機の腹部に照準を合わせたつもりなんだけど、トリガーを半分ほど引くと〝勝手に〟照準が胸部辺りにズレる。
その感覚が何とも気持ちが悪い。
【パトリオット】のコクピットは胸部辺りにある。そのため発射した弾丸が装甲を貫通した場合、コクピットを直撃する恐れがある。
敵機は倒したいけど、人を殺すのはゴメンだ。
だからわざと腹部に照準を合わせているのに……。
首を捻っていると、佐倉がモニターを見るように言ってきた。
「パッと見たところ、火器管制システムに問題は無さそう。照準補助機能も〝セミオート〟になってるし……」
「それだっ! 佐倉、その照準なんちゃらをカットしてくれるか」
「えっ? マニュアルに切り替えるって事っ!? 無茶だよ、さすがの有馬くんでも……」
マニュアル操作は読んで字の如く、照準をパイロットが全て行うこと。
【パトリオット・オンライン】でもセミオートとマニュアルを選べるんだけど、そのシステムも一緒だったのか。
確かにマニュアル照準は難しい、それこそ【パトリオット】を自分の手足のように動かさなければならない。
しかし今のセミオート照準設定のままでは細かい照準が出来ない。コクピットを避けるように照準したとしても照準がずれて、コクピットブロックがある胸部に照準されてしまう。
逆にマニュアル照準だと、相手の銃や手首などピンポイントで照準が出来る。難しい分だけ、使いこなせればそちらの方が遥かに強い。
「いや、そこは何とかする。じゃないとパイロットを殺してしまうかも知れないんだ。頼む」
セミオートは確かに便利かも知れない。
けど、下手にコクピットを撃ち抜いてしまったら……俺は人殺しだ。パトリオットの装甲の強さなら三十六mm弾丸が数発程度当たったとしても大丈夫だとは思うけど。
戦場で綺麗事をと自分でも思うけど、だけど人を殺す覚悟なんて出来ない。
俺の意図を理解してくれたのか、佐倉は頷いてくれた。
「……うん、分かった。照準補助機能停止。これで銃火器の照準は完全にマニュアルになったよ」
「ありがとうっ」
円形の中近距離マップで敵機との位置を確認、ビルから飛び出してアサルトライフルを斉射。
さっきの“ヴォルガー”の足元に着弾、アスファルトを削った。
“ヴォルガー”も半身になって応射してくる。それをサイドステップで交わし、素早く腹部に照準。……よし、今度は上手くいった!
三連射で発砲、全弾が“ヴォルガー”の腹部に命中……しかし装甲に阻まれる。やはり三十六mm弾では【パトリオット】の装甲はそうそう撃ち抜けないか。佐倉に装備変更準備を告げる。
「……それならっ!」
アサルトライフルを三連射モードからフルオートモードに切り替えて、目一杯にトリガーを引き絞る。
三十六mmの弾丸を斉射し弾幕を張る。そしてスラスター全開っ! 一気に距離を詰める!
「【パンツァー】装備っ!」
「了解っ!」
アサルトライフルを一時的にパージし、予め用意していた散弾砲【パンツァー】を腰部ハードポイントから引き抜く。
急な接近に驚いた様子の“ヴォルガー”に構わず懐に入り込む。先台をスライドさせて弾丸を装填。
そして大口径の銃口を“ヴォルガー”の腹部に押し当てて、トリガーを引くと大口径散弾砲【パンツァー】が吠えた。
強烈な反動と同時にマズルフラッシュが瞬く。
五十七mmの散弾が“ヴォルガー”の腹部の装甲を一瞬で破壊し、内部で稼働しているであろうエンジン、【魔導力変換装置】をも撃ち抜く。
その散弾は“ヴォルガー”の機体を貫き、背部に飛散した。同じく粉々になった装甲や各部品、そして虹色の魔力の粒子が飛び散る。
「これで二機っ!」
「有馬くん、二時方向っ!」
「っ!」
その声に視線を上げる。やや遅れて接近警報がコクピットに鳴り響いた。
上から落下しながらSVSを振りかぶった“ヴォルガー”を捉えた。
素早く機体を側転させ、緊急回避すると今まで“ワルキューレ・ブレイズ”がいた空間を“ヴォルガー”のSVSが切り裂く。
「……っと、ありがとう佐倉」
「お礼はいいからっ」
佐倉のおかげでいち早く敵機の接近に気付けた。
思い通りに機体は動くとはいえ、ゲームと実戦は違うって事か。
機体の体勢を立て直し、敵機を見据える。
「でも、助かった」
「う、うん……」
佐倉の頬が少しだけ赤らむ。少しヒヤッとさせてしまったな、すまん佐倉。
俺は慢心しかけた頭をふり、剣を構えた“ヴォルガー”と対峙した。
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続きは明日の朝更新します。
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