【“ワルキューレ・ブレイズ”発進】
ご覧頂き、ありがとうございます♪
いよいよ“ワルキューレ・ブレイズ”が活躍致します。
“ワルキューレ・ブレイズ”のコクピット内。
「……サブエンジン始動、電子制御回路起動、確認。OSのスリープ状態を解除」
コンソールパネルを慣れた手つきで弾きながら、佐倉が起動準備を進めていた。
正面モニターが立ち上がり、“ワルキューレ・ブレイズ”のAIが無感情に言う。
『……パイロットの搭乗を確認。認識コードを』
「第一分隊所属、佐倉莉子少尉、認識コードはB-9477。同じく有馬優介」
『照合完了。ようこそ、少尉。ご命令を』
「ハッチ閉鎖」
『了解。ハッチ閉鎖』
排気音と共にハッチが閉まると、完全に俺と佐倉だけの空間になった。
外部からの明かりが遮断されるのと同時に八方のモニターに灯が入り、外部の映像が映し出された。
上下左右、前後ろ、コクピット内の四方八方に設置されたモニターのせいで、まるで死角がない。
……それにしても。
「……狭い」
“ワルキューレ”の時はそんな事は感じなかったんだけど、この“ワルキューレ・ブレイズ”のコクピットはとにかく狭かった。
前後複座式のコクピットは、佐倉が前、俺が後ろ。
俺はレーシングシートのようなバケットシートに深く腰を据えているんだけど、佐倉はバイクに跨った様な前傾姿勢のシート。
その体勢の二人の身体が今にも密着しそうだ。
フットペダルの位置的に脚を広げる形になるんだけど、俺の脚の間に前傾姿勢の佐倉がいる。
つまり佐倉の……お、お尻が俺の股間に今にも当たりそうになっている。
「仕方ないよ、【パトリオット】はもともと一人乗りだし。この子は“ワルキューレ”よりスリムだから余計に狭いよねぇ」
「……な、なるほどね?」
本来一人乗りの【パトリオット】を無理くり二人乗りにした訳だし、これは自然な事なんだよな。うん、仕方ない仕方ない。
俺は冷静を装い、落ちつけと頭の中で反芻して心を鎮めていく。
佐倉はそんな事など気にも止めず起動準備をテキパキと進めていく。
「【魔導力変換装置】起動準備」
『了解、【魔導力変換装置】起動準備……完了』
「接続」
『了解、装置、接続完了』
ふぅ、と小さく息を吐き、肩の力を抜く佐倉。
一瞬間が空いて、叫ぶ。
「……点火ッ!」
ぞわりとした感覚が全身を駆け巡り、モニター、計器類の灯りが刹那、瞬いた。
な、なんだ今の? 今のが魔力、か?
魔力云々の事は全く知識にないけど、今、佐倉の魔力が“ワルキューレ・ブレイズ”の全身に駆け巡ったのが分かった。
機体に張り巡らされた魔力を伝達させるためのケーブル、【魔導力伝達線】に魔力が通される。
『……【魔導力変換装置】の起動確認。出力安定。電子系、駆動系、火器管制、各種センサー類、全て正常に起動しました。起動データを作戦部に転送、出撃許可申請をしますか?』
「……よろしく」
AIの問いに、佐倉は少しだけ辛そうに返答した。
起動の時に立ちくらみみたいになるって言ってたよな。
『了解……送信完了』
『こちら管制室の金沢軍曹です。佐倉少尉、調子はどうですか?』
「私も、有馬くんも上々です」
「ね?」と俺を振り返って佐倉は笑った。
佐倉の流れるような手つきに見惚れていた俺はまたあやふやな返事をするしかなかった。
女性管制オペレーターの声にそう答えると、佐倉はコンソールパネルの操作をやめた。
どうやら準備が終わったらしい。
『それは結構です、少尉。射出用カタパルトの用意は出来ています。携帯武装を選んで下さい』
「了解。……有馬くん、固定武装の他に持っていきたい武器はある?」
右のサイドモニターに持っていけるであろう武器の一覧が表示された。
ショートマシンガン、アサルトライフル、ガトリングガン……なるほど、全部実弾の装備ばかりか。
【パトリオット・オンライン】の知識と照らし合わせて考える。
今日の戦場……ステージは遮蔽物が多い廃ビル街ステージか。
ゲームの知識がどれだけ実戦で通用するか分からないけど、今は直感に頼ることにする。
「アサルトカービンと散弾砲を頼む」
「分かった。軍曹、聞こえましたか?」
『はい、それに準じた補給コンテナを用意します』
予備弾倉を携帯するには限りがある。【パトリオット・オンライン】と同じく戦場にそのコンテナを投下するようだな。
『“ワルキューレ・ブレイズ”、カタパルトへどうぞ』
「……」
「……有馬くん?」
「え、あ、お、俺かっ」
なるほど、なんて思って腕を組んで頷いていたけど、どうやらようやく俺の出番らしい。
俺は操縦桿を握り、用意されたアサルトカービン銃とショットガンの砲身を短くしたような形の散弾砲を受け取ると、オペレーターに指定された通りのカタパルトデッキとやらに機体を向かわせた。
八mの巨体が俺の指示通りに動く感覚はなんとも例え難い感覚だったけど、操作に関して違和感は全くなかった。
カタパルトデッキに機体の両脚を固定させると、背中に何やら取り付けられた。
使い捨てのブースターらしい。カタパルトデッキから射出したらすぐに翼が展開し、ジェットで一気に加速出来るらしい。
俺は機体を陸上選手の様なクラウチングスタートの姿勢を取らせた。
赤色回転灯が周り、クルーに注意を促すアナウンスが流れた。さっきの金沢とかいう女の人の声。
そのよく通るキレイな声はまるでアナウンサーの様だと感じた。
『“ワルキューレ・ブレイズ”、発進します。周囲のクルーは至急退避して下さい。繰り返す。“ワルキューレ・ブレイズ”発進します……』
天井が二つに割れて開いていく。暗いカタパルトデッキに夏の日光が降り注ぐ。
天井が開くのに伴って、空に向かって甲板が伸びていく。
青空に白い入道雲が美しかった。
『緊急発進用ブースター、装着完了。……“ワルキューレ・ブレイズ”発進準備完了。以後はパイロットの判断で発進を許可します。では、ご武運を』
…………。
俺は今から本物の戦場に出撃しようとしてるのか。
前回とは違い、自分の意思で。
今からしようとしている事が正しいかどうか分からない。
だけど、もしそれで佐倉やその家族が少しでも幸せになるなら……。
そう願い、俺は操縦桿を握った。するとそれを待っていたかの様に、佐倉が俺に目配せをしてきた。俺は静かに頷く。
ふっと微笑み、佐倉は言った。
「佐倉莉子少尉」
「有馬優介」
「「――“ワルキューレ・ブレイズ”、発進っ!!」」
お読みいただき、ありがとうございました。
少しでも『面白い!』『続きが読みたい!』『頑張っているな』と思っていただけましたら、【ブクマ】【評価】を頂けると嬉しいです。
続きは明日の朝更新。
今後は一話ずつの更新になるかと思います。
変わらぬご愛顧、よろしくお願いします。




