【手と手】
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“ワルキューレ・ブレイズ”の開かれたコクピットハッチの前で俺は立ち尽くしていた。いや立ち尽くしていない、どちらかというとうなだれていた。
……やってしまった。完全にやっちまった。
格納庫の固定ハンガーの上で俺は見事な『orz』のポーズをとっていた。
あれだけ沸騰していた頭はスッカリと冷めている。
女の子に怒鳴り散らしてしまった事ももちろんだけど、怒りに任せてめちゃくちゃ恥ずかしい事を言ってしまった気がする。
しかも“ワルキューレ・ブレイズ”に一人で乗り込んでさっさと出撃するわけにもいかない。
操縦は出来るけど、起動するにはどうしたらいいのか全く分からない。さらに言えば、【パトリオット】は俺だけじゃ動かせない。機体の燃料となる佐倉の魔力が無ければ歩く事すら出来ないんだから。
「……や、やべぇ」
コクピット内を見た俺は頭を抱えた。
何故かって、アレだけ怒鳴り散らした女の子と今からこの狭く密閉された空間に居なければならないからだよ。
めちゃくちゃ泣いてたよな。そりゃそうだよ、男に怒鳴られたら泣くだろ。こんなブチギレ野郎に「守ってやる」だなんて言われてもドン引きだよな……。
やべぇ、死にたくなってきた……。
に、逃げていいって言ってたよなっ!?
逃げるなら今しかねぇ!!
アンナに頼んでもう一回転生を……!
「……お待たせ」
「ふぁっ!?」
『orz』の体勢から素早く身体を起こして、恐る恐る振り返る。
そこにはいつもと変わらない佐倉と、その後ろ少し離れた所にオヤジさんがいた。
どれだけ泣いたのか、佐倉の目は赤く腫れてしまっていた。
けど、その表情は曇っておらず、すごく晴れやかだった。
「……」
しかし俺は佐倉の視線から目を逸らした。
か、顔が見れない。
いきなり怒鳴ってしまった気まずさと、全部守るだなんて言ってしまった気まずさ、それでも同じコクピットに入らなければいけない気まずさ……。
それらがごちゃごちゃに入り混じって絶妙に恥ずかしい。
「……あの、さ」
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、佐倉はいつもと同じ調子で口を開いた。
「ありがとう、有馬くん」
「……ふぉ?」
まさかの謝辞に俺は困惑した。
いやいや、俺は年頃の女の子に怒鳴り散らしたクソ野郎だけど?
咎められるのはまぁわかるけど、まさかお礼なんて言われる事なんて一つもしてないんだけど?
「目が覚めたよ、私、思い上がってた。〝魔女〟の私がやらなきゃ、私しかいないんだって」
戸惑いながらも佐倉の方を見ると、目があった。
佐倉は真っ直ぐ俺を見て言葉を続けた。
「私は私しかいない。だからこそ戦う。家族の為に、自分の幸せの為に……生きる為に戦う」
「……」
「やっぱり私はみんなを守りたい。……一緒に戦ってくれる?」
そういうと、佐倉は少しだけ不安そうに俺の目を見つめてきた。
宝石のように美しい大きな瞳に俺の姿が映っている。
そんな不安そうにするなよ、答えは決まってる。
「俺に出来る事なら」
俺は操縦が出来るかも知れないけど魔力が無い。佐倉は魔力を持っているけど操縦が下手。
長所を活かして短所を補い合う。月並みだけど二人の力を合わせないと戦えない。
俺はこれから一緒に戦う仲間として、佐倉の手を取って握手をした。
驚くほど滑らかで細い指。その吸い付くような感覚が手のひらから身体を駆け巡った。女の子の手を握るなんて……記憶にないぞ。
まぁこれは儀式みたいなもんだし。
そう割り切ってしまえばなんて事は無かった。
「これから、よろしくな」
握手をしたまま佐倉を見る。
「……ぁ……」
「……?」
佐倉は耳まで顔を赤くして俯いていた。いつも目を見て話をする彼女らしくない事だった。
体調が優れないのかな、いや、出撃前で気持ちが高揚してるせいか?
オヤジさんを見て「どうかしたの?」という目線を送るが、やれやれと言った感じで肩を竦めるばかり。
「ど、どうした?」
「な、なんでもない……と思う……あ、あははっ」
俺の問いにも佐倉は顔を真っ赤にして首を傾げた。
照れているのかとも思ったけど、この握手は仲間としての握手だし、それは無いよな?
やっぱり分からないので俺も首を傾げた。
「……? なんだそりゃ?」
「あは、あはははっ」
そう笑った後、ブンブンと握られた手を振った後にパッと離した。
「……気合い入った。……じゃあ、行こうっ」
ハリのある声でそう言うと、佐倉は踵を返した。
ショートの黒髪はそれでもふわりと揺れ、輝いた。
元気になったみたいだな。
佐倉の感触が残る右手を握ってから、俺は佐倉の背中を追った。
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続きは今日の朝更新。
毎日複数話更新はここまでです(汗
明日からは1話ずつの更新(一応不定期とさせて下さいw)となりますので、ご了承ください。
これからも変わらぬご愛顧賜りますよう、よろしくお願いします。
ロボ好きの皆さん、お待たせしました。
次回より“ワルキューレ・ブレイズ”が活躍致します。




