【遺書】①
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少しだけシリアス回。
「………………い、遺書?」
佐倉がオヤジさんのポケットにねじ込んだ封筒。
そこには毛筆で遺書と書かれていた。
少しシワになった封筒を優しく伸ばしながらオヤジさんは頷いた。
「……ああ、そうだ。莉子はパイロットだからな。出撃前には遺書を書く事もあるのさ。任意だがな。優介は書かなかったのか?」
「いや、俺は要らないだろ」
肉親どころか親戚すら、この世に俺の血が混じっている人間なんていない。遺言をしたためて誰に何を託すというのか。
そもそもあの親がこの世にいたとしても書かねえけど……。
「そうか、お前は勇者様だもんな。ははっ、腕には自信があるってわけか。そいつぁ安心だぜ」
「いや、そういう訳じゃないけどさ……」
俺の答えにオヤジさんは、ふっと口端を少し上げてから真面目な声色で言った。
「優介、アイツを頼むぜ」
帽子を深く被ったままのオヤジさんの表情は窺えない。
けれど、声は震えていた。
「アイツはこーんなにチビだった頃から正義感が強い子供だった。友達がいじめられてたら上級生の男が相手だろうが立ち向かって行ってよ。ははっ、鼻血垂らして帰って来た事も一回や二回じゃねぇんだぜ」
小さい頃の佐倉の話をするオヤジさん。
けど当時を懐かしむ様子は無い。
当時を、その頃の佐倉の様子を思い出し、一つ一つ確かめるように話す。
「一六の頃に受けた魔力適正検査で、アイツに魔力特性がある事がわかった。つまりは〝魔女〟だってわかったって事だな。その時のアイツの喜びようったら無かったぜ『これでみんなを守れる』って大はしゃぎだった」
魔力は女性にしか宿らないらしい。
しかも【帝国】側の人間に魔力適正がある者、つまりは〝魔女〟が居る確率は非常に低いという事だった。
トウヤ基地に【パトリオット】の操縦者が佐倉しかいないのはそのためなんだと、昨日佐倉から聞いた。
【帝国軍】全体で言うと、【パトリオット】本体はそれなりの数はあるらしいんだけど、操縦者が見つからない。
【帝国軍】は慢性的なパイロット不足なんだとか。
「だけどアイツの魔力は【帝国】の中でも低い方だ。ましてや元々魔力が高いルゴール人の奴らの比じゃないほどにな。それでも貴重な【パトリオット乗り】だ。でもクソほど操縦が下手だ」
「……」
搭乗者の魔力量は【パトリオット】の出力に比例する。
強い魔力を持つ〝魔女〟が駆れば【パトリオット】のエンジンとも言える【魔導力変換装置】の出力は上がる。弱い魔力の者が操れば、もちろんその逆。
魔力は生まれつきのものらしいから、個人の魔力量が上がる事はないらしい。
けど、操縦技術は違う。
確かに俺が目にした佐倉は操縦は上手くはなかった。
でも彼女は操縦が苦手だからといって諦める性格だろうか。きっと努力を惜しまない性格の筈だ。
「当然アイツはパイロットになった。……それからずっとだ。こうして娘から遺書を預かる様になったのは。これで何枚目だろうな。……まぁ数えたくもねぇが、コレばっかりはよ、いつまで経っても慣れねぇ」
自分の娘から遺書を渡される気持ちは、一体どんなものなのだろうか。
俺に子供なんていないけど、それでも耐えることの出来ない辛さなんだろうという事は容易に想像出来た。
けどそんな想像を軽く超える程にオヤジさんは辛いだろうという事もまた、簡単に想像出来た。
「……あの隊長機は格が違う。パイロットの腕も魔力もな。そいつが今度こそ最後だと言ってきてやがる……心配しねぇはずがねぇ」
オヤジさんの、遺書を持つ手に力がこもる。
俺も、知らないうちに拳を握っていた。
「莉乃もよぅ……姉ちゃんが大好きでな、莉子に何かあったら、俺ぁ、アイツになんて言ったら……」
とうとうオヤジさんの頬を涙が流れ落ちた。
堪えていたのだろう、それを乱暴に手の甲で拭った。
俺を出迎えてくれた莉乃ちゃんの笑顔を思い出した。「よろしくっ!」って、無邪気な笑顔を俺に向けてくれた。
もし佐倉がいなくなったって聞いたら。
どんな顔をするのだろうか、どんな顔をすればいいのか。
……そんな事、考えたくもない。
「……っ!? あ、お、おいっ!?」
俺はオヤジさんの手から封筒を奪い取るとそのままハンガーを走り出した。
後ろでオヤジさんの声が聞こえたが、それを無視して。
佐倉のところへ走り出した。
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たまに更新時間間違えてしまっていますが、こっそり直しています…




