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【召喚士アンナ】③


「有馬優介よ……【パトリオット】を駆り、この世界を救ってやって欲しい」


 アンナから放たれたその頼みに、俺は呆けてしまい声も出ない。

 いや、そもそも何で俺が選ばれたんだ? たまたまこのタイミングで都合よく死んだ世界チャンピオンの俺を……まるで、見計らっていたかのように。


「い、いやいや、ちょっと待てよ! なんで俺が世界を救うことになるんだよ! 俺は、ただの高校生なんだぞ!?」

「いや……【帝国軍】の連中の祈りに応え、ワシは〝勇者〟を召喚したのじゃ。この世界を救ってくれるであろう、一人の〝勇者〟を」

「そ、そんなこと言われても!」


 俺は突然〝勇者〟なんて呼ばれ、動揺が走る。

 〝勇者〟!? この俺が!? そんなバカな!


 大体俺は、毎日ゲーセンに入り浸って、開店から二十二時ギリギリまで、ただひたすら【パトリオット・オンライン】をやっていただけの、ただの引きこもりの(・・・・・・)高校生なんだぞ!?


「お主が戸惑うのも当然じゃ。じゃがの、ワシの魔法は〝勇者〟を呼ぶためのもの。つまりこれは、お主が〝勇者〟であるということの証明なのじゃ」


「で、でも……!」

「それに……お主は〝勇者〟としての片鱗を確かに見せたのじゃ。【ヴォルガー】を撃破したことによって」


 アンナにそう言われ、俺は言葉を詰まらせる。

 た、確かにアンナの言う通り、俺は【ヴォルガー】を倒しはしたけど、それはただ、ゲームと同じ仕様(・・)だからできただけで……。


「頼む、有馬優介! お主の類まれなるその力、この世界を救うために貸してくれ!」

「っ!」


 アンナの必死の叫びに、俺の心が激しく揺さぶられる。

 元の世界では、たとえ世界一(・・・)になったとしても認められなかったこの腕を、必要とされている……?


 〝家〟からは役立たずと罵られ、ただ自己満足としてしかやり場のなかった、この能力が……。


 でも、ここはゲームでは……【パトリオット・オンライン】ではなく、現実の世界で……。


「……まあ、これはおいそれと決断できるようなものではない。それなりに時間も必要じゃて」


 そう言うと、アンナは翡翠の瞳に慈愛を(たた)えて優しく微笑む。

 これは、俺の胸中を(おもんばか)ってのことだろう。


「そうじゃな……明後日、あの【ジャンヌダルク】がやって来る。それまでに考えておいておくれ……佐倉少尉っ」

「はっ」

「おおっ!?」


 どこに控えていたのか、いつの間にか俺の背後に控えていた佐倉の返事に、俺は飛び上がりそうな程驚いてしまった。


「有馬優介の世話を頼む」

「はっ……………………………………は?」


 直立して短く返事をした佐倉だったが、後からその言葉の真意を理解したのか、最後には間抜けな返事をした。


「は?」


 そしてそれは俺も同じだった。こののじゃロリ、今なんて?


「有馬優介は宿無しじゃ。それに、いきなりこの世界に呼び出してしまった責任もある。ここは、これからバディとなる佐倉少尉が有馬雄介を世話するのが適任じゃろうて。上にもそう伝えておくからの」


 確かに俺には宿が無い。

 もちろん金も持ってない……その上で俺の世話って言うことは?

 も、もしかして佐倉の部屋に居候するって事なのかっ!?


「し、しかしアンナ様っ……!?」


 その事を理解した佐倉があたふたと慌てていた。

 そりゃそうだよな、俺だって慌てている。


「まさかお主、有馬優介を馬小屋で寝かせるつもりか? この男はこの世界の救世主じゃぞ」


 異論を唱えようとした佐倉を、アンナは自らの言葉で遮った。それはもう有無を言わさぬ、と言った様に。

 しかし、その表情は悪戯っぽく口の端を吊り上げていた。

  まるで「分かってるだろうな?」と言わんばかりに。


「い、いえ、決してその様な……」

「ならばよしなに。有馬優介よ、今日はゆるりと休まれよ」


「あ、ああ……」


 ではなと手を挙げてアンナは踵を返して去っていった。

 残された俺と佐倉は、ただその小さな背中を無言で見送るしかなかった。


 お読みいただき、ありがとうございました。


 少しでも『面白い!』『続きが読みたい!』『頑張っているな』と思っていただけましたら、【ブクマ】【評価】をよろしくお願いします。


 続きはこの後更新。


 少しだけストックが有りますので、しばらくは毎日複数話更新の予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 厄介者扱いされてた人が、誰も褒めてくれなかった特技を必要とされるって嬉しいですけど戸惑うし、 ゲームじゃなく実戦じゃあ不安にもなりますよね。
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