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秋葉原ヲタク白書75 爆弾魔アキボマー

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第75話です。


今回は、秋葉原に伝説の連続爆弾魔アキボマーが帰って来て風俗店を狙い撃ち!風俗ヲタクを中心に緊張が走ります。


アキボマーが、孤高の不動産(女)王と見抜いた主人公でしたが、さらにアキボマーが実は2人組と判明して…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 帰ってきた爆弾魔


超高層ビル"the top of NERIBEI"の屋上に映画でよく見るヘリポートがある。

そのヘリポートの角に立ち、ネオンの海を見下ろすとヤハリ地球は丸いと実感…


いやいや。ソンなコトより!

飛び降り自殺を止めなきゃw


「ハユン!ストロベリークリームチーズ2つ買って来た!一緒に食べるか?」

「何しに来たの、テリィたん!貴方まで一緒に飛び降りるつもり?」

「おいおい。この夜景を独り占めはナイだろ?ソレに都庁が赤くナイのは東京アラート解除だからで僕の責任じゃナイ。しっかし、綺麗だなー。特にスカイツリーw」

「近づいたら飛ぶわょ!」

「下に誰もいないと分かれば止めはしない…何せ君は"マットの地雷也"と呼ばれてルンだから」

「そんなリングネームより、私が国際環境テロリスト"アキボマー"だといつ知ったの?」

「え?そーだったの?初めて聞いたょ」

「ウソ!何度も来ては思い切り仄めかしてたじゃない!」

「アレは…実は君に自殺を促してたンだ」

「ええっ?!でも、社長(僕ですw)は良い人だわ。コスプレ×プロレスを紹介してくれたのも社長」

「そりゃ僕は(コスプレ×プロレスの)社長だからなw…ん?メールだ」

「え?こんな時に?」

「わ!コッチに来るな!ホントに落ちるw」

「それより…何?」

「モノホンのアキボマーを覚えてるか?ブエノスアイレスの街のアチコチに即席爆弾を仕掛けて、国連の第1回地球"寒冷化"防止枠組み条約締約国会議"CUP-A"を中止に追い込んだ爆弾魔だ…あ、ハユンはその偽物w」

「そりゃそーょ。だって私はDカップ」

「さすがは元"喜び組"だ!アキボマーは、ブエノスで世界を震撼させて以来、行方をくらましてた。それが、さっきコロナ解除で営業全面再開を準備中のスクールキャバを爆破して突如カムバックした…さ、逝くぞ」

「え?何処へ?私は逝かないわ」

「ハユンじゃない」


次の瞬間、ヘリポートの角に立ってたハユンの肢体が激しく痙攣、目が虚ろ、口から涎…

膝ガクで危うくモノホンの飛び降り自殺になりかけ慌ててヘリポート中央へ突き飛ばすw


「あっぶなーい!テリィたん、マジ飛び降り自殺になるトコじゃないの!アングル動画の撮影だって忘れないで!この女殺し!」

「遅いンだょ、ハウン」

「テリィたんが妹を角に立たせるからでしょ?」


テーザーガンを手に姉のハウンが現れる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


さっきまで、超高層ビルの屋上でアングルを撮影してたと思えば、今はもう"チョベリバ"の爆発現場で現場検証の真似ゴトしてる。


最近のアキバは人使い、じゃなかったヲタク使いが荒いょ全く。

あ、アングルとはプロレスを盛り上げる場外ストーリーのコト。


ハユンはコスプレ×プロレスラーなんだw


で、爆発現場のビルは…何と1Fが完全に潰れて5F建てのビルが4F建てになってる。

警察、消防、電気、ガス…あらゆる緊急車両がそれぞれのランプを明滅させ集結。


もちろん、現場は大混乱で、万世橋(アキバポリス)が警戒線を張り、何とか野次馬を押し返してる。

僕(と勝手についてきたハウン&ハユンw)は馴染みの"新橋鮫"刑事に夜の御挨拶。


「おはよーございます、鮫の旦那」

「こら、テリィ。その芸能人みたいな挨拶、ヤメろ。死人は出てないが事故現場だ。あ、良いンだ。コイツらは通してやれ」

「都のSTEP3移行直後で良かったですね。ジュリも無事で良かった…真っ黒ケだけど」


店長のジュリは、セーラーは爆炎で真っ黒、あとセーラーから出てる手足も素顔も真っ黒に煤け、長かった黒髪はチリチリパーマに…


あ、彼女はセーラー着てるがアラサーですw


「19日に休業要請が全面解除になったら、即営業再開と思って準備をしに店に来たの。鍵を開けて入ろうとしたら、いきなり…」

「ステーキ?」

「バカ。店から稲光(フラッシュ)が飛び出して、大きな音がした。私は蝶のようにヒラヒラと吹き飛ばされ、気がついたら真っ黒ケで路上に転がってた…」


夜の蝶がヒラヒラ…シュールだw


スクールキャバ"チョベリバ"は改札から昭和通りを渡り少し逝った先のビルにある。

僕はワケあって、ココの委員長(じょうれん)だが、実際には1〜2回しか逝ってナイ(ホントですw)。


実は、半島から来た爆弾テロリストでもあるハウン&ハユン姉妹が勝手に"現場検証"w


「何コレ?爆弾は手作りじゃないの?材料は漂白剤と塩化カリウムかしら」

「プロのレシピじゃナイわね。あぁ臭い。まだ匂ってる」

ウチ(まんせいけいさつ)の鑑識が曰く、威力は手榴弾の2倍程度。無線機での起爆。つまりアキボマーは近くにいたコトになる」

「爆弾マニアって、現場の近くで爆発やその後の混乱を見物したがるモノなのょね。放火魔と同じ心理」


"新橋鮫"が頷き、鑑識に声をかける。


「おい!野次馬の顔写真も、ひと通り撮っておけ」

「もう撮ってます」

「しかし"アキボマー"が復活とは」

「"爆弾魔、故郷に帰る"だ。お?区長御一行だ。すぐ戻る」


新橋鮫は、区長のゴマすりにイソイソ消えるが、僕は奥にいた野次馬とフト目が合う。

ソレはダブルXLサイズの特大白パーカーを着た太め女子で黒サングラスをかけている。


夜なのにサングラス?

突然彼女が走り出すw


下も白ジャージなので、彼女が走り出すと遠目には雪ダルマが転がり出したような…

すると、何故だか僕のカラダが勝手に反応して彼女を追って走り出す…何でだ?


大質量の転移に伴う万有引力の作用?


「何?何処に逝くの?テリィたん!」

「気のせいだと良いケド…」

「待って!」


最初は直ぐに追い付くと思ってたが、角を曲がり昭和通りに出ても何故か追いつけないw

ドシドシと音のしそうな走り方をスル太め女子にナゼ追いつけないのだ?そんなバカな…


「危ない!」


さらに、僕は昭和通りを渡り切ったトコロで須田町方向から疾駆して来た前後に子供用シート装備の大型電動ママチャリと正面衝突w


僕は文字通り宙高く吹っ飛ばされて地面に叩きつけられ、転がる視野の隅に地下鉄日比谷線口にドシドシと駆け込む太め女子の後姿…


「きゃー!」


悲鳴を上げ自分の自転車の凹みを調べるオバさんを横目に、転がり込むように地下鉄の階段を駆け下りるが彼女の後姿は既に改札へw


「見て!電波系よっ!」

「らめぇぇ!」

「アンタ、正気か?」


頭から血を流した僕は、駅員に取り押さえられタチマチ野次馬に取り囲まれる。

ソコへ"決して怪しい者ではありません!"と実に怪しい美人姉妹が到着スル。


ハウン&ハユンは、元"喜び組"ナンだ。

ムダに美人だが、こーゆー時は場が和むw


「どーしたの?イキナリ走り出して…」

「不審者がいたから追いかけたんだ」

「ヒドいアザ。殴られたの?」

「ママチャリに轢かれた」←

「追っかけた太め女子が爆弾魔だと逝うの?確証は?」

「逃げた時点でアウトでしょ。あ、彼に切符を買わせるな!ダメだ!彼を止めろ!」


野次馬の後ろで券売機で切符を買おうとスル酔っ払いを見つけて僕は叫ぶ。


「え?分かったわ。ハユン、あの方を止めて…でも、何で止めるの?」

「太め女子は切符を買った。あの券売機には彼女の指紋が残ってる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


約30分後。現場直近の御屋敷(ミユリさんのバー)


ココは、僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷(メイドバー)

間近に迫ったコロナ休業要請の全面解除に向け目下、絶賛プレ営業中←


「あら、珍しい。似顔絵ですか?」

「自分の記憶で絵を描く訓練だょ。残念ながらフードと帽子とサングラスで人相は不明ナンだけど」

「(ソレで似顔絵が描けるの?)でも、"新橋鮫"さんが、データベースで指紋を照合してくれてるのでしょ?」

「うん。でも、登録されてナイかもしれナイし」


カウンターの中のミユリさんと取り留めのない話をスル。

こんな夜に限って、僕の苦手なアリスタイプのメイド服w


「ところで、君達姉妹は"喜び組"を振り出しにエステ、コスプレ×プロレスとコマを進めて、次は何?と問うべき時期だな」

「確かにそうね。まだ声優も地下アイドルもやってないし」

「風俗も」←

「アキバのフルコースの何処かにハマるのか疑問だ、とか逝ってみるテスト」


ソコへ現場の片付けから一服しに来てる、真っ黒ケのマンマのジュリから御声がかかる。


「データベースと指紋が一致したそうょ。太め女子の名前はモビィ。顔写真も来たわ。でも、私が彼の情婦だからコッソリ調べてくれただけ。テリィたんが怪しいと思うだけでは万世橋(アキバポリス)は動けない」

「上等だ。後は僕がヤル。あれ?ハウン、どーした?」


ジュリのスマホを覗き込んで"太め女子"モビィの画像を見たハウンは顔面蒼白となる。


「彼女は…私の(ホエール)だわ」


第2章 ハウンのホエール


鯨とは、カジノ業界で使われる隠語でハイローラーを指し日本語にすると太客って感じ?

で、太客とは破格の額を使う太っ腹なお客サンのコトだけど、ハウンの場合、太客って…


「私のフィギュアを買ってくれるの!」


そんなモノがあるのか?!


余り大したコトはなさそうだが、貴重な手がかりなので、ココは慎重に手繰り寄せよう。

コスプレ×プロレスのマッチメイクは通常AIが行うけど、社長権限で強力な介入を行うw


「ぎゃあああっ!」


早速、パーツ通りの駐車場に(あつら)えたリングで和製ヒロインが断末魔の叫びを上げてる。

ハウンの今宵の相手は"セーラー巫女くノ一ファイブ"でコーナーに追い込まれ爆死!


おぉ…文字通りコーナーに仕掛けた爆薬が一斉に爆発炎上する中での悶絶ギブアップだ。

姉妹のゲームは半島から流れて来る軍用爆薬で巧みにショーアップされてて人気が高い。


コスプレ×プロレスは、既に収益の大半を全世界への動画の配信で稼いでいる。

しかし、伝統的にライブに来た客にも物販などでファンサービスを欠かさない。


今宵も、後片付けに追われるスタッフを尻目に両選手の前にはファンの列が出来る。

ハウンも"セーラー巫女くノ一ファイブ"に負けてナイ…お?列に見覚えある人影…


モビィだ!しかし…太いな笑

僕は、歩み寄り声をかける。


「君!昨日、僕から逃げたょね?」

「さあ。日比谷線にはよく乗るのょ」

「オトボケが堂に入ってるな。昨夜、爆発が起きた午後8時15分頃は何処にいた?」

「家でアニメを見てたわ。夜中まで」

「嘘だ!アリバイにならない」

「無実だからアリバイは要らないの」

「君は…爆弾魔アキボマーだ!2年前、ブエノスアイレスにいたろう?」

「2年前?そんな昔のコトは忘れたわ」

「ハンフリー・ボガードかょw」

「だって、直ぐには思い出せないでしょ?貴方は今朝、何を食べたか逝えるの?」

「あさばぎゅう」

「な、何ょソレ?」

「朝の焼き鯖定食に牛小鉢をつけ全部載せて食べルンだ。美味いぞ」

「やめて!聞いただけで胸焼けして来たじゃないの。貴方がボギーじゃないコトはよくわかったわ」

「そーゆー君もイングリッド・バーグマンじゃナイな?」

「私は、アキバの不動産(女)王ょ。毎日自社ビルや建設用地を見て回ってるの。どの現場も決して予定通りには進まナイ。だから、仮に当時の予定表が出て来ても、その通りに私が動いたかは誰にもわからないわ」

「それなら、君の居所が分かってる去年の9月20日のコトを教えてくれ。バーからの帰りに末広町駅前で酔っ払いと喧嘩した日のコトだ」

「私は酔ってなかった。ただ、酔っ払いに絡まれ交番に助けを求めたら、警察署までパトカーで連れて逝かれ指紋まで取られた。アレって逮捕だったのかしら」

「交番警官のお手柄になってる。ま、ノルマがキツくなる期末には良くアル話だ。でも、そのお陰で今回、指紋から君の身元が割り出せた」

「ヒドいわー。善良な市民である私の指紋が警察のデータベースに残ってるなんて!」

「ソンなコトより、君がブエノスアイレスへ逝ってる間、アキバでの爆弾事件はゼロ。ソレが君の帰国の翌月からアキボマーが活動を再開してる。奇遇だとは思わないか?」

「思わない。私は何もしてナイし、何も爆破してない。モチロン、誰からも逃げてナイ。だから、お願い。やっと私の順番が来たのに!」


気がつくと彼女が列の先頭で、折り畳み机越しにハウンがバッドバットウーマンのコスプレに満面の笑みを浮かべて両手を広げてる。


ああっ!ココからは推しとファンとの神聖な時間で、何者もソレを犯すコトは出来ない。


「ハロー!ハウン、今宵のバッドバットウーマン、最高だったわ!私も貴女みたいに強くなって"巫女くノ一"やワケわからないアキバのヲタクをやっつけたい!今宵もココにあるDVD、全部買うねっ!記念撮影(チェキ)も100枚お願いしますっ!」


すげぇ!確かに太客だw


もちろん、ハウンも涎を垂らさんばかりの笑顔で固い握手を交わす。

うーん。どうやら、ココはコレ以上、付け入る隙がなさそうだ。


傍らでミユリさんがクスクス笑っている。


「本当に昨夜の女子ナンですか?」

「僕の目を疑うの?」

「だって…ほら、ママチャリに轢かれたのでしょ?」

「あの時に頭でも打ったかなぁ?あれ?ミユリさん、何処か逝くの?」

「人と会って来ます。モビィって、多分、スモササイズをやってルンじゃナイかな。もしかしたら、何かわかるカモです」

「え?相撲サイズ?」

「スモササイズ、です。とりあえず、彼女の部屋に逝ってみます」

「え?彼女のヘア?」

「バカ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ぽっちゃりメイドカフェは昔からあったが、ぽっちゃりビクス教室と逝うのは初めてだ。


あ、相撲エクササイズ(スモササイズ)って逝うのかw


翌日、区立カルチャーセンターのヨガスタジオと逝うディープな会場に太め女子が集結w

相撲部屋に模したエクササイズとのコトで力士級女子ばかりが"超密"で有酸素運動中←


さ、酸素が薄い…


太め女子ばかりズラリと並びドスコイ!その横では丼飯とか食べてて壮観w

うーん。どう考えても、みなさん、このエクササイズで太ってると思うが←


「止まらないで!足を動かして!」

「ごっつぁんです!」

「唾を入れるバケツを持って来て!」

「ごっつぁんです!」

「土俵を掃いて!唾を捨てて!次は便所掃除よ!」

「ごっつぁんです!」


スタジオ中央に砂場がアリ、土俵的なモノの周りで力士…じゃなかった太め女子が蠢くサマが、何となくアザラシの群れを思わせる。


ココへ、僕を無理矢理連れて来たミユリさんが唾?のバケツを空けに来た弟子に声かけ。


あ、弟子じゃなくて女子か。

確かに太目だから可愛い系?


「ドレミさん。私を覚えてる?」

「忘れませんょ。お久しぶりです、ミユリ姐さん」

「今はね、ちょっち万世橋(アキバポリス)のお手伝いみたいなコトをやってるの。テリィ御主人様と一緒に」

「ええっ?コチラが噂のテリィ様ですか?へえぇぇー」


ドレミさんは、まるで初めてパンダを見る幼稚園児みたいな顔で僕を見る。

そーゆードレミさんは、アイドルやめたら太っちゃった的な元?美人顔だ。


唾のバケツ、コッチに向けるなw


「貴方の姉弟子、モビィさんのコトで来たの。(相撲)部屋のちゃんこ鍋で一緒だったでしょ?」

「覚えてます」

「親しかったの?」

「何で?」

「昨夜の爆弾事件の重要参考人だから」

「え?彼女がニュースで見た爆弾魔アキボマーだってワケ?」

「よく知る仲なの?」

「…いいえ」

「アキボマーのコト、何か話してなかった?」

「私には何も」

「そう。弟子入りして、もう数週間よね。調子はどう?」

「相撲部屋に住み込み、生活のために唾を捨ててます。でも痩せてきたのっ!ミユリ姐さん、ありがと!」

「そう?なら良かったわ。何か思い出したら連絡を頂戴。今日は会えて良かった」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


私よ。電話するなって逝われてたケド、ちょっち恩のアル人が来て…アキボマーのコトを聞かれたの。今、話せる?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


僕は僕で、ヤレるコトをやってる。

モビィのマンションのゴミ捨て場。


「あら?何を漁ってるの?」

「やあ、モビィさん。今回の爆弾魔は、手製爆弾に漂白剤を使うんだ。まさか、貴女のゴミ箱から、こんな漂白剤の大型容器を見つけるコトになろうとは」

「昨夜キッチンを掃除したの。コロナ自粛でズッと断捨離やってたから色々片付いちゃって」

「昨日のゴミにはなかった」

「使い切ってから捨ててはイケナイの?」

「ゴミ箱は証拠品の宝庫ナンだ。昔、ゴミ箱から密猟されたツキノワグマの睾丸を見つけたコトもある」

「ソレは男の人の霊薬ね。ウチのゴミ箱に貴方の睾丸は入ってナイわ」

「あった!」

「ええっ!」

「冗談だ。ところで、僕は未だ君がアキボマーだと思ってる」

「家宅捜索でもスル?令状ナシでも貴方1人なら身体検査だってOKょ。うふふ」

「PCR検査もスルぞ」

「ソレに、どうせ今頃は、もう貴方の可愛いスク水大好きなサイバー屋さんが、私の電話やらメールやらを調べてルンでしょ?元カレの写真も見る?」

「夕べは、貴女の逝う不動産業の方を調べてみた。大半の取引は公正だが、保険金の請求がヤタラ多くて気になる。アキボマー騒ぎが始まる少し前に、君が所有する建設中のマンションが全焼してるね?」

「10ヶ月分の建設工事がパァになったわ」

「でも、保険金がタンマリ出た」

「アレは事故ょ」

「随分と都合の良い事故だったね」

「私が放火したと逝うの?あら?アキボマーって爆弾魔ょね?放火魔だったかしら?」

「放火が爆破の快感を目覚めさせたのでは?放火魔と爆弾魔って同じ心理だし」

「放火なんかしてないし、爆弾の作り方も知らないわ」

「ネットで調べれば?どちらも恐ろしく簡単らしい」

「私を疑うなら好きにして」

「せっかくのおススメなので、今、君の元カレにも話を聞いてる。最近別れたそうだね。彼は、君がアキボマーじゃナイと逝い切ってくれるカナ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「モビィはアキボマーなんかじゃナイ!」


見事に逝い切られるw

翌日@ポエムの4F店。


モビィの元カレのカナタは、普段着系のイケメンで、聞けばモビィとは幼馴染と逝う。

揃って僕には鬼門でしかナイ旧金澤町の"聖アンモナイト幼稚園"の御出身とのコトw


「だから、モビィとは物心ついてからの付き合いだった。でも、告って2年で別れた」

「いつです?」

「コロナが始まる前の1月。彼女がブエノスアイレスから戻って数ヶ月後だ。ブエノスに逝く前は面白くて優しい女だったけど、帰国したら人が変わってた」

「どのように?」

「とにかく、以前の彼女ではなくなってた。何度も話をしてカップルでカウンセリングも受けたけどダメだった」

「アキボマーはご存知?」

「え?あぁ。何で?」

万世橋(アキバポリス)で、捜査に進展がありモビィが第1容疑者なんだ」

「冗談だろ?」

「さっき"人が変わった"と」

「そうだけど…まさか爆破だなんて」

「昨夜8時15分、彼女は何処にいた?」

「知るハズ無いだろ!別れたンだゼ?」

「気持ちはわかるが、疑われるだけの理由がアル」

「最近の彼女について分かってるのは、大型の不動産取引を控えて忙しいってコトだけだ」

「大型の不動産取引?」

「何でも、神田佐久間河岸一帯の再開発プロジェクトが始動し、地下に巨大なゲーセンを作るらしい。彼女は、そのゲーセンを自分の土地の地下に誘導し、土地を破格の値段で売り飛ばそうと必死だった」

「そりゃまぁ爆弾魔だって、昼間は別の仕事がアルからな」

「今じゃ彼女は、この取引のコトしか頭にない。電話に出ないしメールも返さない。まぁ俺達は別れたンだから、当然と逝えば当然だがな」


カナタは、フランス人みたいに肩をスボめて手のひらを上に向けてみせる。


「彼女がアキボマーだなんて…爆弾を仕掛けたくても暇がないサ。人違いだろ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜。プレ営業中の御屋敷(ミユリさんのバー)


「ミユリ姐様は?ネームカードをもらった者ナンですけど?」

「あ、ドレミちゃんだっけ?ミユリさんは、コロナ全面解除を控えたメイド組合の寄合で外してる。直ぐ戻るけど、何か飲む?」

「あ、噂のテリィたん…だっけ?助かったわ。お金が無いからお水で我慢しようと思ってたの」


相撲エクササイズ(スモササイズ)のドレミちゃんの御帰宅だ。ヘルプのつぼみんに何かカクテルを注文。

まぁ、モビィほどでは無いが、彼女もヤハリ太めは太めで…今回はヤタラ太めばかりだw


「テリィたん。ミユリ姐様から私のコト、何か聞いてる?」

「元売人だって。商売敵に撃たれて5発、摘出したとか」

「げ。詳しいのね。もしかして、常用者?」

「え?乗用車?車は乗らない。しかし、ドレミってアニメみたいな名前で愉快だね!わっはっは」

「テリィもどーなのょ?フフフ。あ、乾杯」


ドレミちゃんとカチンとグラスをぶつける。

本能的に、この子は良い子だ、と直感スル。


まぁ僕は何時もコレで騙されるンだけど笑。


「あら?ドレミちゃん?」

「あ、ミユリ姐様。モビィさんの件で話に来ました。昨日姐様が帰った後で、ストリートの連中に連絡したの。そしたら…」

「そしたら?」

「ソレが可笑しなコトを逝う奴がいたの。"アキバ戦隊ヲタレンジャーのミチルと話せ"って」

「何なの?その"アキバ戦隊ヲタレンジャー"って?聞いたコトがアルよーなナイよーな…」


ミユリさんが、御屋敷に集う常連を眺め回すが、戦隊や怪獣など変身モノのヲタクは一通り揃ってるのに全員下を向きモジモジするw


や?タカシさんが挙手!

彼は"風俗ヲタク"だ←


「ソレは"戦隊"じゃなくて"洗体"です!"アキバ洗体ヲタレンジャー"は蔵前橋通りにある店だ。ミチルさんはソコの"嬢"で得意技は"添い寝"です!」

「"添い寝"って技なの?でも、よくぞ御存知でした。ソレでこそウチの常連だわ。ありがとう、タカシさん」

「礼にはおよびません。ソレに"ヲタレン"ならテリィたんも常連です!」


どーして、そーゆー余計なコトを逝うかな!


次の瞬間、ミユリさんの両目からデス光線が発射され、僕のカラダは茹で卵切り器でカットされた茹で卵の如く薄くスライスされる。


「ま、待ってくれ!確か"ヲタレン"って、いつだったか2号営業(風営法)の件でモメた現場だょね。えっと確か、ハデな爆発事故も何回かやってたっけ」

「そー逝えば、私も確か、その件でミチルさんと須田町の地下鉄ストアで格闘をしたような…」

「そうだよっ!でも、僕とミユリさんコンビの活躍により、あの騒動は無事に解決出来た…ンだっけ?細部はよく覚えてナイけど」


うーん。確かに細部は…頭に靄がかかったみたいに思い出せないンだけど何で?老化か?


「とにかく!コトが風俗に関わる以上、ココより先は"風俗フェイサーズ"の出番です!」

「え?何なの?その"何ちゃらフェイサーズ"って?」

「新風俗の探検を行うタスクフォースです。最近では政権の"新しい生活様式"に沿った"新しい風俗様式"を模索中で、テリィたんもメンバーです!」


どーして、そーゆー余計なコトを逝うかな!


次の瞬間、ミユリさんの(以下省略)


気がつけば、傍らで元売人のドレミちゃんがケラケラと愉快そうに笑っているw


「ミユリ姐様の周りは相変わらズね。今は、忙しいだろうけど、そのうち暇が出来たら、また姐様の御知恵を借りたいナ」

「もちろん、構わないわ。でも、どんなコト?」

「どうやって自分を変えたの?池袋の元カレからテリィたんに至るまでには、色々と苦労もあったンでしょ?」

「うーん。まぁそうね」

「でも、今の姐様を見てると、スゴく幸せそうだわ。私も変わりたい」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「風俗フェイサーズ!」


先頭に立つタカシさんは、何処で拾ってきたのか大きなラジカセを肩に乗せノリノリだ。

ラジカセから流れるゴーストバスターズの最後のリフレーンだけ変えて大声で歌ってる。


さらに、彼の後ろに"フェイサーズ"が付き従い、タコ踊りをして夜の通りを練り歩く。

しかも、逝く先がライトとは逝え風俗だから僕的に世間様へ全く顔向け出来ない状況だw


コレは…かなり恥ずかしい。


「テリィ様、ようこそ!御予約、ありがとうございました!当店は、鉄(道)ヲタ(ク)の御客様向けに大幅リニューアルオープン!今宵は、御注文の夢の超特急リニア新幹線コースに特別に店長スペシャルをお付けしてお待ちしておりました!存分にお楽しみください!」


店の前まで挨拶に来たウェス店長は、強面に満面の笑顔と逝う感情読み取り不能な表情、かつ意味不明な駅長のコスプレをしている。


ところで、どうも僕は過去に、彼が恩に感じる何かスゴいコトをしてあげたらしいが、実は一体何をしたのやら、全く思い出せないw


「御指名のミチルさん、スタンバイしております。彼女も"その気"ですので…」


"駅長"自ら個室へ案内しつつ悪魔の囁き…


まぁ洗体なので"個室"と逝っても、大広間をカーテンで仕切っただけだ。

大広間のアチコチには鉄道模型のジオラマがあり電車が走り回って壮観だ。


そして、彼がカーテンを上げると…


「おかえりなさいませ、テリィたん!私は、日本食堂、食堂車主任ウェイトレスの神田川ミチル。指差喚呼(しさかんこ)、出発進行!発車オーライ!」


メイド好きが泣いて喜ぶカチューシャ姿で、食堂車のウェイトレスが三つ指ついている。

彼女が顔を上げ、意味深な右目ウィンクで微笑んだ次の瞬間、世界が焔に包まれ大爆発!


第3章 グランド・ゼロ


爆風でカラダが吹き飛ぶ初体験w


僕は壁に叩きつけられ床にズリ落ちたトコロで爆炎の洗礼を浴びる!

熱風が僕の顔面を焼いて、焔が髪をチリチリにして逝くのがわかるw


薄く目を開けたら…ココは地獄だ!


大広間には爆煙が立ち込め、全てのカーテンは焼け落ち炎上、其処彼処から苦悶の声が…

何かが爆発したのか?茫然としてたら急に襟首を掴まれ力強くズルズルとひきづられる。


振り向くと…駅長?いや、ウェスか?


安い化繊のコスプレは溶け落ち、全身灼け爛れつつも、僕とミチルを店の外に連れ出す。

路上に出たトコロで、彼はガックリ膝を折って崩れ落ち、僕に一言言い残して気を失う。


「ご延長になさいますか?」


路上も大混乱で悲鳴と絶叫が交錯する中"嬢"達が続々と運び出され呪詛の声で満ちる。

満ちると逝えばミチルw見回すと、僕の横で横たわっている。焼け焦げてるが…無事か?


「ミチル、この匂いは…」

「何だと思う?」

「業務用の漂白剤だ」

「サスガね。私の大好きな匂い」

「…鉄道模型のレイアウトは、爆弾魔が使う材料で出来ている。包装紙やヒューズやトリガースイッチ。あのレイアウトは、爆弾作りの材料をカムフラージュするためのモノだったんだね?」

「あらあら。やっぱりタダ者ではないのね、テリィたん」

「また漂白剤の爆弾で風俗が狙われた。明らかにアキボマーだ。"地球寒冷化"の次の彼女の標的は"風俗"だ。アキボマーは、思想犯に違いナイ」

「なかなか良い読み。でも、モビィは万世橋(アキバポリス)が監視中ナンでしょ?」

「そうだ。一方、爆弾の仕込みはココ数時間だ。その間、モビィは監視下で"ヲタレンジャー"には近づいてない。爆弾魔が誰にしろ実行犯は彼女じゃない」

「となると…"ヲタレンジャー"の監視カメラって入口しか写してなくて、歩道や店内の映像はナイの。爆弾を仕掛けた人の特定は不可能?」

「人じゃない。人々だ」

「というと?」

「爆弾魔は2人いる。アキボマーの名の下でタッグを組む2人組だ。モビィに相棒がいなきゃ監視中に爆弾を仕込めない」

「モビィと爆破はホントに繋がってるの?」

「その証拠はナイけど直感を信じる。ソレがヲタクってモンだ」

「うふふ。テリィたんは、絶対に生き延びて、必ず爆弾魔を捕まえてね」

「モビィはアキボマーだ。もう1人も…見当はついてる」


救急車のサイレンがドップラー効果で接近しつつ唐突に止まる。

救急隊員が飛び降りガチャガチャとストレッチャーを引き出す。


直ちに、僕とミチルが搬送される。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


サイレンを鳴らし疾走する"救急車内"。


「君達は…救急隊員じゃナイな?何者だ?」

「私の名はシフォ。いつも母がお世話になってます」

「シフォ?あの、前に1度、ミユリさんの御屋敷に御帰宅した…ターミネーターヲタクだっけ?」


しかし、母?


見たトコロ、ミチルと救急隊員は同い年なのだが?

何かが歪み始めてる?またまたパラレルワールド?


「何が何だか分からなくなってきたから、早目に切り札を切るょ。ミチル、君はモビィと同じ刑務所に入ってたょね?」

「あら。よく調べたわね。あの新橋鮫とか逝う刑事さんが気づいたのかしら?」

「君は、根っからの爆弾テロリスト。そして、モビィは地面師だ」

「そうよ。それが?」

「君らはムショ仲間だ」

「確かに仲間だったわ」

「今もだろ?出所後、君は彼女に雇ってもらった」

「仮にそうだとして、彼女が一体何をしたと逝うの?」

「彼女は、公共の場に爆弾を仕込んで人心を煽る思想犯だ。つまり…彼女はアキボマーだ」

「待って。ホントにモビィがアキボマーだと思うの?」

「ムショ仲間ってのは、互いに自分が犯した悪事を語り合うモノなんだろ。自分をタフに見せるためにさ」

「まぁそうね。退屈しのぎもアルけど」

「モビィは、どうだった?」

「さあ。何も逝うコトはないわ」

「"何も知らない"ではなくて?」

「良い?もし収監中にモビィが人を吹っ飛ばすのが趣味だと聞いてたら、私は司法取引するために彼女を売ったわ。私は、そーゆー女ょ」

「出所後の仕事が約束されてたのでは?」

「モビィは、確かに良い人だから出所後も仕事をくれた。でもね、テリィたん。簡単にムショに戻せるからって前科者同士にハメ合いをさせるのはヤメて」

「ムショ仲間は、獄中で食事や禁制品をシェアし合う。恐らく、君達は爆弾作りの秘訣もシェアし、どちらかが、もう1人を誘った。つまり問題はミチルとモビィ、どっちが誘ったかだ。君は、師匠か弟子か?」

「モチロン、師匠よ。でも弟子については、テリィたんは勘違いしてる」

「相棒はいたンだろ」

「そうだけど…私の同志は、モビィとかアキボマーとか、そんなチンケなレベルじゃないの」

「何だと?」

「モリィも、最初は地球温暖化阻止を真摯に願う人類解放の戦士だと思った。だから、爆弾を作って協力もした。でも、彼女は所詮は利益誘導の人だった。ブエノスから帰国して、風俗爆破をリクエストされて本性に気づいたの」

「ミチル。君は…」

「私には、人類解放の使命がある。今日ココで、私は死亡したコトにして地下へ潜るの。人類解放の日まで、もう2度とテリィたんと会うコトは無い。そして、再び会う時、貴方はFZAの大統領となっているハズょ」

「大統領?FZA?君達は何者だ?」

「人類解放軍。ソレは、私の意思を末長く継いでくれる者達の集まり。私に負けズ献身的で同じ情熱を共有する者達」

「結局、君にとって風俗は隠れ蓑だったと逝うコトか?」

「私は、心底風俗を憎んでた。だからモビィと20個の爆弾を風俗店に隠したわ。恐らく、警察には見つけられない。動作感知型で動かせば爆発する。ヲタクが触りたがるカラフルなのもあるわ。だから、コレで終わりだとは思わないで。風俗に安全はないの。決して」


そして、ミチルは隣のストレッチャーから手を伸ばすと、僕の手を力強く握って微笑む。


「だから、貴方は生きて。この街のために。ウィンクまでして爆破のタイミングを教えてあげたのは、そのためょ」


さっきのシフォとか逝う、救急隊員に化けた白衣の男が、不思議なネコ耳型のカチューシャを僕につけて、マスクで麻酔を吸わせる。


僕は、たちまち気を失う。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その頃、アキバの街は大騒ぎになっている。


爆弾魔アキボマーが、20軒の風俗店に対し爆破予告を行ったのだ。

万世橋の緊急対応部隊が出動し、爆弾探知犬による捜索が始まる。


その最中に、妻恋坂の交差点辺りの歩道で、気を失って転がっていたトコロを発見された僕は、とりあえず?万世橋に担ぎ込まれる。


気がつくと"新橋鮫"が僕を覗き込んでるw


「鮫の旦那、爆弾は見つかった?」

「20コ全てというワケには。そもそも全部で20なのかどうかも定かじゃない」

「これまでのアキボマーの行動には、一貫した筋書きがあった。爆破予告なし。爆弾の仕込みは当日。現場近くから起爆操作。しかし、今回の爆破予告は、筋書きを無視してる。早くから爆弾を仕込み、起爆は制御せズ、脅迫兼ねて予告までしてる。手口をガラリと変えたのでなきゃ…」


僕が語ると"新橋鮫"も頷く。


「嘘か」

「嘘だ」

「世間を騒がせるコトが狙いか?アキボマー自身と思われるバラバラの焼死体が"ヲタレンジャー"で見つかった。奴は、棺桶の中から、アキバを恐怖に陥れようとしてるのか?」

「いいや。鮫の旦那、モビィを呼んでくれ。アキボマーは未だ生きてるょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋の取調室。


"新橋鮫"は、僕とミユリさんのために"警察顧問"の肩書きを用意してくれる。

狭い会議室に、僕とミユリさん、さらに、鮫の旦那と全く反省の色のないモビィ。


「なぁモビィ。ミチルの鉄道模型を見つけたょ。鑑識が材料を調べたら、スクキャバ"チョベリバ"を爆破した爆弾の破片サンプルと完璧に一致した。ミチル自身は不慮の事故で爆死したが、今際(いまわ)(きわ)に全てを白状した。モビィ、また刑務所送りだ。今回は出て来られナイ」

「あのね。いつも2人1組だったというワケじゃないのょ?私達は」

「確かにブエノス前のアキボマーは、現場の証拠から考えるに、単独犯だった可能性もある。社会への逆恨みか、或いはもっと暗い欲望に駆られての犯行だったカモしれない」

「もっと深い欲望?」

「何と逝うのかな。飽くなき"破局を望む情熱"だ。そして、その情熱は教え、学ぶコトが出来る」

「アキボマーによる風俗襲撃は、私腹を肥やすためだったと逝うの?」

「19世紀の吸血鬼パニックでは、人々は墓地近くの道を通るのをやめた。墓から蘇った死者に襲われると思って」

「え?え?ホント?」

「そして、黄熱病が流行すれば、恐怖の余り鉄道や橋を破壊し、感染者が入って来れないようにしたンだ」

「テリィたんって…海外ドラマの見過ぎ?」

「そして、今回のコロナ。白昼無人のパーツ通りを宅配ドローンがブンブン飛び交った。要するに、恐怖は物流を変える。人々がどう移動し、何処を訪ねるかで、街は表情まで変えてしまうと逝うコトだ」

「アキボマーは、ソコまで考えて爆弾を仕掛けたと逝いたいの?」

「アキボマーは、君の下で働いてた。刑務所で、ミチルは自分が爆弾魔だと明かした。理由はわからないが。大事なコトは、君がミチルは爆弾魔だと知ったってコトだ」


ミユリさんが口を開く。


「前後して貴女は、自分が所有する神田佐久間河岸の土地が巨大地下ゲーセンの建設地の最終候補に残ったコトを知るの」

「しかも、競争は未だ続いてると知った君は、ライバル地の周辺でアキボマーの活動を再開させるコトを思いつく。マスコミに騒がせて、人々に恐怖を植え付けるためだ。悪夢の宣伝になる。"ゲーセンに来てリアルな爆死を"」

「結局、地下ゲーセン建設を計画してた会社は、貴女の土地を選んで貴女はボロ儲けだ。ミチルの取り分も少しはあったハズで、彼女はソレを彼女の"人類解放資金"の足しにするつもりだった。汚れた仕事に見合う額とは、トテモ思えないけどね」

「ソレは違うわ。ソレにミチルが爆死したのは、ミチル自身がイカれた女だからでしょ?」

「モビィ。君は、地上げで金が入ると思っているようだがムダだ。さっきダークマター社の面々と話をして来た」

「ダークマター社は、貴女の土地に地下ゲーセンを作ろうとしてた会社ょ」

「彼等に、最近の不穏な爆弾騒ぎの話をしたら、契約は撤回となって、建設計画は無期限凍結となった」

「嘘よ!」

「彼等は、実は国家権力にも非常に近い会社なので、契約無効の書面を作ってコピーまでくれたよ。自由に見てくれ」

「御社にお金は入らない。終わったの。でも損したワケじゃないから、死人(ミチル)を売るようなマネはおよしなさい。ミチルさんは亡くなったの。またムショで仲良くやれるワケじゃないわ」


ココまで来て、ようやくモビィは、ガックリと(こうべ)を垂れて、深く溜息をつく。


「…わかったわ。でも、アキバで生まれ、育った女子として、テリィたんに1つ条件がある」

「聞こう」

「私が出所したら、もしも万一、私が再び出所したら、コスプレ×プロレスに参戦させて。但し、ギミックとブックは、テリィたん、貴方が考えてね。AIではなくて」


第4章 消えた記憶と未来への絆


さて、今回も最後のピースが出揃って、ジグソーパズルの全体像が見えてくる。

…と逝きたいトコロだが、やはり失われたピースがあるのか実は釈然としないw


その最たるモノは、救急車の中で救急隊員がミチルと親子だ、と口走った件だ。

前に御帰宅した時にターミネーターヲタクと名乗った彼は何かと混同したのか?


例えば、ホントにミチルが母親で、彼は母を守るため未来からやって来たとかw

アキバは存在自体が妄想で成立してる街だから全ての妄想は許されるンだけど。


ま、いくら考えてもわからナイ。

だから、考えるコトをヤメよう←


あ、ソレから最後になって突如浮上した巨大地下ゲーセン構想だがアレも妄想←

いや、巷では確かにそーゆー話で地上げは進んだのだが、実際は全く違う話だ。


知る人ぞ知るだけど、佐久間河岸の地下一帯には既に巨大な地下構造物がある。

日本のエリア51とも呼ばれるソコには、旧軍から引き継いだ超科学兵器が眠る…


との(まこと)しやかな"妄想"があるw

あ、コレ"例えば"の話だから!


何が眠ってるか、とか、そもそもホントに眠ってるか、とか、関係ナイ話だょ。

ましてや"時間トンネル"が拡張中で用地を買収中とかホント余計なお世話だw


アレは巨大粒子加速器みたいなモノなんだ。

地下に作る巨大ドーナツの用地買収は至難w


その仕事に携わる全ての人々の労苦を偲んで、僕達は口を閉ざすべきだ。

そして、街でAMCの紀章をつけて奔走する人を見たら黙って道を譲ろうw


AMCは"アキバミリタリークラスター"の略だ!


あ、ただモビィが地下ゲーセン構想を進めるために風俗を攻撃したコトは完全に錯誤だ。

彼女は、不動産業者なのに風営法がわかってないw同法上ゲーセンも完全に風俗なのだ。


実際、モビィは初めて姿を見せた現場にシック?なジャージのアンサンブルで登場。

数日後の事情聴取の時も同じアンサンブルで現れ何か子供騙しな感じがしたモノだ。


"ヲタレンジャー"の鉄道模型が子供には作れない複雑なモノに見えたのとは対照的だ。

やはりヲタクをナメちゃダメだょな。大人じゃナイけど子供でも無いンだょ面倒臭いねw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


で、翌日の御屋敷(ミユリさんのバー)


苛烈な爆発現場を生き残った"風俗ヲタク"達が、片目眼帯に包帯で腕を吊り、松葉杖をつきながら、ムダに凱歌とか上げているょw


"風俗フェイサーズ"って全滅してナイの?


「今回、俺達"風俗フェイサーズ"が立ち向かったのは、爆弾魔だけじゃないンだ!」

「おぉ!タカシさん。僕達は、一体何と戦ったのだろう?」

「爆弾魔よりずっと恐ろしいモノ、ソレは…己の性欲です!」


何だかなー。勝手にやってくれ…


「ソレに気づいた以上、俺達は俺達自身の性欲と真摯に向き合うん定めにある!今こそ"風俗フェイサーズ"は"性欲フェイサーズ"へと進化すべき時だ!」

「え?待ってょタカシさん。何なの?その"何ちゃらフェイサーズ"って?」

「ミユリさん!俺達は、己の性欲にのみ衝き動かされる"性欲バスターズ"に生まれ変わりました!あ、テリィたんもメンバーです!」


どーして、そーゆー余計なコトを逝うかな!


次の瞬間、ミユリさんの(以下省略)



おしまい

今回は海外ドラマでよくモチーフになる"連続爆弾魔"をネタに、怪しい不動産(女)王、実は未来人?の洗体嬢、その息子のターミネーターヲタク、万世警察の敏腕刑事"新橋鮫"、風俗ヲタク、強面の風俗店長などが登場しました。


海外ドラマで見かけるNYの都市風景を、コロナ全面解除前後の秋葉原に当てはめ未来人設定も加味して展開しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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