母さんの準備は念入りに
「母さん、俺には鑑定能力があるんだ。ちょっと母さんの今のレベルを見るよ?」
「いいわよ」
母さんが目を細める。この寂しげな表情はワクワクしている感じだな。
Lv1 田所凪子(タドコロナギコ) 46才
種族:人間
職業:ライン製造員(低)手芸(中)販売員(高)
生命力:50/50
魔力:ー
体力:5
筋力:5
防御力:5
素早さ:5
幸運:46
スキル:鑑定1 心眼1
「……母さん、今の仕事は? もしかして、トリプルワークしてる?」
「あら、よく分かるわね。人が足りないって頼まれて、最近食品工場に行ってるの」
Pちゃんたちに大福をちぎって分けていた美波が、驚いたように母さんを見る。
「そうなの? だから最近夜中に出るの? てっきり彼氏でも出来たかと思ったよ」
「ふふ。そんな人いないわよ」
母さんが恥ずかしそうに笑うのを見て、ちゃんとすれば綺麗なのにねーと、大福をもちゃもちゃ食べているふたりに話しかけた。
「美波は相変わらずだな……。でも生活費が足りないなら、俺もっと仕送り増やすから、それは辞めてよ。体壊すぞ」
俺の言葉に母さんが慌てて首を振った。
「違うの、大丈夫。航、いつもありがとう。担当してた人が倒れて、本当に困ってるみたいだったから。美波には内職代わりにしてもらって申し訳ないんだけど」
母さんがふうっとため息をつく。
「でもお母さん要領が悪いから、迷惑ばかりかけちゃって」
なるほどね、だからライン製造員(低)か。長くやってる内職が(中)。でもスーパー勤務の販売員は(高)だ。しかもスキルがある。
心眼:真贋(しんがん)を見分ける。鑑定は物、心眼は心。
母さんには嘘がつけなかったのを思い出す。なぜかすぐバレるのは、親だからと思っていたが、このスキルがあったからかな? ならどうしてダメ親父は見抜けなかったのか? うーん、分からん!
でも何となく分かって来た。職業の高低は意識と、持っているスキルにハマっているほど高い感じだ。じゃあ俺のサラリーマン(低)は、スキルを色々得たにもかかわらず変化なしとなると、意識がべらぼうに低いのかも…?
ひとり軽くショックを受けている俺の腕を美波が引っ張る。
「こう兄行こう。明日は母さんの貴重な休みだからゆっくりさせたいでしょ?」
「ああ、そうだな」
美波の頭をクシャッと撫でると、母さんに光のオーラをかけた。手のひらが光るのを見て、母さんの細い目が輝く。
「光魔法のオーラだよ。防御力アップと、服が汚れなくなる」
「そうなの? ふふ、嬉しい魔法ね」
美波からもらった淡い桜色のブラウスをそっとなでる。
「後これもはめて、母さん」
空間庫から水晶鼠のドロップ品、守りの指輪を取り出すと、母さんの目が見開いた。
「凄いわねえ。手品みたい」
「空間庫っていう見えない場所に物をしまっておける俺のスキル……んー、得意技」
「見えない収納箱ね? 松明とか薬草とか色々入れてるの? でも指輪はちょっと大きいみたいだから、落としそうね」
「大丈夫だよ、お母さん。私もつけられたから」
美波の言葉にそお? と指輪を受け取ると、心配そうに人差し指にはめる。輪の部分が母さんの細い指に合わせるように縮んでいった。
「ピッタリになったわ」
「よし。空間庫には松明はないなあ。松明は魔法のライト、薬草はポーションかな」
「ファイナ○ファンタジーに近いかしら?」
……母さん結構やってんな?
続けて美波にも光のオーラをかける。
「あれ、私も? 同時にかけられるの?」
「ああ、レベルが上がって3つまで同時にかけられるようになったんだ。美波も制服を汚したくないだろ?」
「うん! ありがとう、こう兄!」
嬉しそうにくるりと回った。緑と紺のチェック柄、膝上のプリーツスカートがふわりと広がる。白い半袖のYシャツに首元にはワインレッドのリボン、美波お気に入りの制服だ。
「お前、それで走れるか?」
パンツ見えっぞ?
「スパッツ履いてるから大丈夫」
サムズアップしてドヤ顔をして見せる。
「ならいいか。あ、そうだ母さんもうひとつ」
「なあに、これ」
母さんの手のひらに光魔法オーブ4を乗せる。
「光ってるわね、光る飴?」
「そんな感じかな。もしピリッとしたら、吐き出していいから」
母さんが分かったわと頷いて、そっと口に含んだ。
「……味はないのね。……あら航、溶けちゃったわよ? いいの?」
「良かった。適性があって。これでひとまず安心だ」
「お母さん、魔法使いになったよ。たった今」
「ええ? そうなの?」
自分の体をペタペタ触って何かを確認している母さんを横目に、あんこで汚れたマシロと、嫌がるPちゃんの口と手を濡れ布巾で拭く。
「よし、準備完了。Pちゃん、マシロ、バッグに入って」
「……了解ピ」
「キュイ!」
腰に装着したバッグにふたりが入り込むのを確認した時、母さんが呟いた。
「魔法使い……。ルーラ! あら、出来ない」
母さん、どこに飛ぼうとしたんだ……。
読んでくれてありがとうm(_ _)m 感謝かん…(。-ω-)zzz. . . (。゜ω゜) ハッ!




