必勝法
掃除をしていたら、つい漫画を再読破してしまう事、ありますよね?
「はあ…、これってスキル向上したり、レベルアップの度になるの?」
「…大丈夫、そんなことは、無いですピ」
Pちゃんが顔を背けながら言う。
へたくそかっ! 信用できない! 初めて信用できないっ。
「だけど一気にレベルが上がったなあ」
「ミミックは戦闘者レベル10以上が2人か、高位の火魔法を使える者がいないと、倒すのが難しいCランク程度の魔物ですピ。更に航平は経験吸収2倍ですから、これくらいは上がりますピ」
Pちゃんがなぜか自慢げだ。
「…取り敢えず、魔石の回収っと」
痛みが治まり、俺は血溜まりの中の魔石を…。
「血が、無い」
いつの間にか石畳一面に広がっていたミミックの血が、跡形もなく消えていた。
「血はダンジョンに吸収されますピ。ダンジョンの栄養のひとつですピ」
Pちゃんが恐ろしいことをまたさらりと言う。
「…ダンジョン、ヤバいな」
血の消えた石畳には、500円玉くらいの魔石が落ちている。
そしてもうひとつ、ダークブラウンの宝箱が、ちょこんと置いてあった。
ミミックドロップ(レア):ミミックの宝石箱
(魔樹木製:衝撃に強く、耐久に優れている)
魔物でも罠でもないらしい。
良かった、また小さいミミックだったらどうしようかと思った。
それを倒すと更に小さいミミックが…ミミックマトリョーシカ。
ただミミックと違うのは蝶番が金でできており、あの赤銅色の鍵穴がない代わりに、大きさがビー玉くらいの、透明なガラスがはめ込まれている。
「良い品ですピ。戦闘者の斧でも壊れず、魔樹木には魔法耐性もあるので、かなり高位の火魔法でなければ燃えませんピ。大切な物を仕舞うにはうってつけですピ」
「鍵が無いのに?」
「鍵はあの宝玉ですピ。魔力を流すと認識され、その人だけにしか開けられないし、運べませんピ。レアドロップ品で、やはり航平の幸運が招いた結果でしょうピ」
「へえー、じゃあ印鑑入れにしようかな」
「もう少し使いようが…ピ」
ミミックの魔石 1
ミミックの宝石箱 1
俺は魔石と宝石箱を収納し、ステータスを確認する。
Lv8 田所航平(タドコロコウヘイ) 23才
種族:人間
職業:サラリーマン(低)
生命力: 540/660
魔力: 150/300
体力: 44
筋力: 38
防御力: 41
素早さ: 51
幸運: 200
魔法(全適性):まだ覚えていません
スキル:気配探知1 空間把握1 絶対防御2 隠密5 罠解除6
鑑定10 異常耐性10 魔法耐性10 眼調整10 空間庫10
生命力回復10 魔力回復10
ユニークスキル:賢者の家1(1m×1m×1m)
魂の絆:***に創られし叡智 P
称号:「始まりを知る者」「立ち向かいし者」「幸運の尻尾を掴む者」
なんでまだサラリーマン(低)なんだ? もう忍者になっていると思ったのに…。
「…Pさん、俺把握しきれないです。説明お願いしても良いですか?」
Pちゃんがやれやれという感じで、短い羽を広げる。
「今の航平には、このダンジョンのどこに階段があるか、どう行けば良いのか分かるはずですピ。それが空間把握1で、絶対防御2は革の鎧が鉄の鎧になった感じですピ」
「へえ、ちょっとやってみる」
下に降りる階段は何処だ? 意識を集中してみる。
すると自分を中心に、波紋が広がっていくような感覚になり、広がった波紋が逆再生のように自分に戻ってきた。
「おお…分かった。この通路の2つ目を左に入って突き当たって右、100メートル進んで左の行止りに階段がある…てか、ダンジョン広くない?」
「このダンジョンは地下20階段までしかないですピ」
焦っている俺を見上げ、Pちゃんが事もなげに言う。
「しかって…」
80日後はこんな穴がボコボコ世界に空くのか…。皆、頑張れ。
「ちなみにスキル生命力回復MAXは1秒で1ポイント、魔力回復MAXは10秒に1ポイント自然回復しますピ。ただし動いたり魔力を使っていない状態で、ですピ」
ステータスを確認した時点で、ミミックを倒してから5分ぐらい経っているから、生命力なら300、魔力なら30回復していることになる。計算は合う。今も動いてないから回復し続けているはずだ。
もっと簡単に、回復具合が確認できればな。称号まで見えちゃうと、戦っている時邪魔そうだ。そのことをPちゃんに言うと
「ライフを唱えればいいんですピ」
Pちゃんの、何をいまさら感が半端ない。…教えてもらってませんけどー!?
「…ライフ」
Lv8 生命力660/660 魔力180/300
出た。ステータスオープン時より小さいスクリーンに出た。
生命力が全回復し、魔力も回復中のようだ。
「おお、これなら危なくなったらすぐ逃げられるな」
「危なくなった時に逃げられるかは別問題ですピ」
…最近うちのPちゃんが辛辣なんです。どうしたらいいんでしょう?
「あ!」
「ピ!?」
そうだよ、俺には最高のスキルがあるじゃないか!
「動かなければ生命力1秒1ポイント、魔力10秒1ポイント…。フフフ、必勝法があったよ、Pちゃん」
Pちゃんがきょとんと見上げている。
賢者の家スキル発動だ!
読んでくれてありがとうm(_ _)m 嬉しい限りです。