君の名前は2
「んー! こう兄、このエビドリアすっごく美味しい!」
はふはふと一口食べ、満面の笑みを浮かべる。三好さんからもらったエビピラフに、簡単ベシャメルソースをかけただけのなんちゃってドリアだけどね。
「ピ、このソースとピラフが絶妙なハーモニーを」
「キュイキュイッ」
かけ直した『シールド』テントの中、草の上に置いた皿から、ドリアをがっついている2匹とひとり。俺はそれを眺めながら、美波の持ってきたおにぎりを食べる。
心配していたのは、魔物が嫌う美波の匂いに、白テレポが反応、警戒するんじゃないかと思ったが、特に気にしていないようだった。
(今は花びらの匂いのほうが強いので、白テレポは気づいていない状態ですピ)
(じゃあ、花びらから離れたら…。白テレポに攻撃されたら、美波が泣くぞ?)
(ピ、考えがあるので大丈夫ですピ)
午後2時、遅い昼飯だ。
うん、肉味噌か。…肉と味噌ぞれぞれが、自分のみ主張してるな。
「どう? こう兄、美味しい?」
美波がスプーンを咥えたまま聞いてくる。
「そうだな、あとネギや酒、しょう油とみりん、砂糖を加えたらもっと美味しくなる」
「何それー、それじゃあ肉味噌にならないよ」
ケラケラ笑う美波を見て、なるほど、美波にとって肉味噌は味噌と肉のみか…と納得する。
「…まあいいか。それで美波のブーツをドロップした奴はどうだった?」
「うんとね、草と同じ緑で、見えにくかった。ピヨちゃんが魔物のいる方向を教えてくれて、なんとかキラキラ鞭で倒せたんだよ」
Lv14 田所美波(タドコロミナミ) 16才
種族:人間
職業:女子高生(高)
生命力:280/280
魔力:34/130
体力:60
筋力:38
防御力:59+20
素早さ:70+10
幸運64
魔法:光魔法2
スキル:鞭技1 恐怖耐性2 身体操作2 駿足2
気配探知2 眼調整2 魔力回復2
加算装備:守りのバングルブレスレット
スカイランナーのブーツ
目的の眼調整が取れ、駿足も向上している。そして魔力回復が2に上がったのと、鞭スキルが取れたのは嬉しい誤算だ。
…にしても、ブーツ良いな。俺がじっと、すっぽり履くタイプのショートブーツを見ていると、美波がむふっと笑った。
「こう兄、ブーツ欲しい? じゃあピヨちゃんとその子を私にー」
「欲しくない。俺にはこれがある」
汚れひとつない、真っ白なスニーカーを指差しながら即答する。
そう、汚れがついていない、真っ白なままのスニーカー。綱貝の胃袋でジャージは溶けたが、スニーカーは溶けなかった。
「踵も減らないし、汚れもしない。破けないし溶けない」
「ピ、航平が願ったままのスニーカーですピ」
願玉、お前は新品のスニーカーになっただけじゃない。俺の願いを叶えてくれてたんだな…。
ただ、黒か紺色が良かったです。…願玉さん。
「ドロップ品にブーツが出た。じゃあ他も出るかもしれないなぁ」
服とかパンツとか?
「革の鎧とか鱗の盾、こん棒とか薬草」
美波がなにか思い出しながら指を折って数える。
「…薬草! そうだよPちゃん」
「ピ?」
片方の羽で、白テレポに自分のドリアを食べられないよう、ディフェンスしているPちゃんを見る。
「白薔薇魔樹木の花びらが、万能薬とか魔力回復ポーションの材料になるって鑑定で出たんだ。でも魔力回復ポーションは光魔法と水魔法の練り込みだろ?」
「魔法回復も生命力回復ポーションも錬金術者、賢者は作れますピ。材料があれば」
「じゃあ2種類の回復ポーションがある?」
「効果もちょっと違いますピ。魔法で作ったポーションは100ポイント使ったら100ポイントの回復ピ。薬草類を使ったポーションは種類の組み合わせ、素材のランク、錬金者の腕で低級から高級まで変化しますピ」
「どっちでも同じじゃないの? ポーションはポーションでしょ?」
美波のスプーンを持った手が止まる。
「薬草類で作ったポーションは使用期限がありますピ。一方魔法で作ったポーションは劣化しませんピ」
「ああ、なるほどね」
俺が頷くと、美波が何が? と聞いてきた。
「要するに薬草とか生モノとかは消費期限があって、魔法でできたモノは消費期限がないってことだ」
「失われた世界ではダンジョン外にも魔力は溢れていたので、ポーションの材料を探索者たちが取ってきて、生活費を得ることもありましたピ。薬草由来のポーションのほうが手に入り易く、魔法由来品はいざという時に取っておく、高級品という感じですピ」
Pちゃんが片羽を上げる。俺たちの世界にも魔力が溢れたら、薬草が生えるんだろうか……。
「ピヨちゃんは、まるで失われた世界にいたみたいに言うね」
Pちゃんの説明に、美波がふーんと頷く。
「…ひとつの知識ですピ。私は『叡智』ですピ」
「エイチピー、生命力みたい。まあこう兄のHPでもあるね」
美波がくすっと笑った。
「ホームページでもある。いや検索先生か」
肉味噌おにぎりの最後の欠片を口に放り込む。ピクニック気分は大事だ、最後までぼちぼち美味しく食べられた。
「さてと、そろそろ行くか」
「ピ、まだエビドリアがー…ピィィ!?」
「…ケプ」
白テレポが仰向けになり、小さくゲップをした。Pちゃんエリアのドリアがすっかり綺麗になくなっている。
「ピ…ドリアが……警告! エネルギー充填!」
わなわな体を震わせていたPちゃんのお腹が光る。
「え? なに?」
「ちょ、ちょっと待ったああ!!」
シュパッとくちばしを摘み、発射を阻止する。空間庫からチョコケーキとブラウニーを取り出し、なんとかエネルギー砲を収めることに成功した。
「ピヨちゃんって、食いしん坊さんだね。今度は私がお菓子を作ってくるね」
そう言って、チョコケーキを貪り食べているPちゃんの頭を、軽く撫でる。
もしその菓子がしょっぱかったら、お前も危ないぞ?
美波が砂糖と塩を間違えるような、そんなコテコテの失敗をしませんように…。
兄の心配は尽きない。
「じゃあ、お前は宝箱に戻って…そうそう」
もはや当たり前のように右肩に乗っていた白テレポを、宝箱の中に戻した。
宝箱の縁に手をかけ、じっとこっちを見つめてくる。
…いや、そんな可愛い目をしても駄目だ。外は危ないぞ? という思いを込めて、俺も見つめ返す。
「こう兄、その子に名前をつけないの?」
美波が屈伸運動をしながら、蓋を閉めようとした俺に聞いてきた。
「情が移りそうでつけなかったけど…。そうだな、居場所が見つかるまでうちにいるし、この際(仮)ということで『テレキチ』にー」
ずっと考えていた名前を口にした途端、
「却下」
美波の冷ややかな声が聞こえた。
「なんでだよ? 可愛いだろ?」
「だってテリヤキとかファミチキみたいだし、何より男の子みたいだもん」
「え? 男だろ?」
「絶対女の子だよ! 淡いピンクのレースとか似合いそうだし。耳が出るような帽子とか」
頬に手を当て、うっとりして言う。美波お前、着せ替えやろうとしてるな?
「ピ、『白次郎』という手もありますピ」
渋いな、Pちゃん。しかも結構真剣に考えたろ?
「だから女の子だってばぁ」
「じゃあー『マシロ』」
「…ピ、マシュマロみたいで美味しそうですピ」
「…女の子だから可愛い」
一斉に白テレポを見る。
「キュイ」
白テレポがPちゃんのように片手を上げた。
『マシロ』誕生の瞬間だった。
読んでくれてありがとうm(_ _)m進みが遅くて飽きられそうだ(;一_一)でも可愛いは正義(゜∀゜)アヒャ




