レベルアップ怖い
こちらは良い天気です。今日は昼寝すると最初から決めてました。
「なあPちゃん、俺ド近眼だったんだよ。今は2.0はあると思うし、ダンジョンの中も普通に見える。これもスキルか?」
階段を降りきり、土の道から石畳へ入る。さっきと同じで、ダンジョンは暖色に明るく、先の通路は右側に曲がっていた。
レベル上げのためには、自分の持っているスキルをよく知らないとな。ゲームはド○クエ派だし、3作目までしか知らないけど…本もミステリーばっか読んでたから、あんまり知らないんだよなぁ。
「航平は眼調整10持ちですピ。暗くても眩しくても、鉄をも溶かす熱風でも、全てを凍らせる氷風が吹いても大丈夫ですピ」
Pちゃんがバッグの口からキラキラした瞳で、俺を見上げる。
「いや、ありがたいがそんな所は行きたくもない」
「あと罠や、隠し扉も見えますピ」
「透ける…のか?」
胸が高鳴る。
「透けません、分かるだけですピ」
「で、ですよね」
突き当たった通路を右に曲がる。
10メートルくらい先に、2匹のでっかいアリが並んでいるのが見えた。通路は2匹並んでもまだ余裕がある程度に広い。
Pちゃんの入ったバッグを背中にかけ直す。
1匹は背を向け、もう1匹はこちらを向いている。でもなぜか俺に気付いていないようで、動くこともなく、2本の触角をゆっくり動かしているだけだった。
チャンスか?
俺は包丁を握り直し、壁に沿って静かに近づいていく。触角まで後2メートルくらいの所で、正面を向いていたアリがようやく俺に気付き牙を拡げた。
「いまさらっ!」
と同時に眉間に包丁を突き刺す。
淡い光に包まれ1匹目が消えたところで、背中を向けていたもう1匹が反転しようとする。
遅い!
短く硬い毛がびっしり生えた丸みのある背中を、踏みつけると同時に、首と思われる所に包丁を滑り込ませ、頭を落とした。
「くうー、気持ちわるっ」
2匹目の体と頭が、淡く光って消滅する。後には小さな魔石2個と鎌の刃だけのような牙が1本残った。
「はあ、なんとかなった」
「良い動きですピ。レベル2とは思えませんピ」
バッグを前にすると、Pちゃんが体を半分乗り出し、パタパタ短い羽を動かす。
「いや、なんかアイツら、結構近づくまで気づかなかったぞ?」
「はい、隠密5の効果と思われますピ」
「ああ、なるほど。足音もしないわけだ」
俺、忍者になれるんじゃ? いやなれるだろう。ちょっと憧れてたんだよね。
忍術じゃなくて魔法使ってさ。和洋折衷。カッコよくない?
「さあ、ドロップ品と魔石を回収してくださいピ」
そんなことをうへへと想像していたら、Pちゃんに胸を突つかれた。
「ああ、そうだった。収納」
手のひらを向けドロップ品を収納する。
キラーアントの魔石×2
キラーアントの牙 1
「あいつはキラーアントっていうのか」
「航平の鑑定でも見えますピ。鑑定10なら弱点や攻撃パターン等詳細もわかりますピ」
そういえばゴールドスライム(はぐれ)の溶けたやつも鑑定していたんだった。
「そっか…」
無言で鑑定してみる。
世界の理(Pちゃん)
***により創造されし叡智
現ダンジョンナビゲーター及び航平ナビゲーター
癒やしの手触りピヨピヨちゃん水色バージョンを器としている
好物:ハムエッグ、トースト(バター&イチゴジャム)、オレンジジュース
弱点:首の下をくすぐられる
…これ、食べれば食べるほど好物が増えていくんじゃないか?
「なあ、鑑定10ってMAXなんだろ? Pちゃんを作った人、分からないぞ?」
「人間のスキルMAXでは、わからないのは当然ですピ」
Pちゃんが、不思議そうに体を傾ける。
「ああ、なるほど」
妙に納得した。
ほどなくして通路が左右に分かれた。
「…右から行ってみるか」
宝箱、道におちてないかな? 幸運200MAXなら、そんなことがあってもいいだろ?
「って、あったー!」
しばらく魔物にも遭わず、道なりに歩いていくと、通路の端に宝箱が置いてあった。カマボコみたいな形状の、上に押し上げるようなフタがついた、いかにもな木の宝箱。
思わず駆け寄ろうとした時、違和感を覚えた。なんとなく開ける前に、離れて小石でもなんでも一度当てたほうがいいような気が…。それも正面からじゃなく横から。
空間庫から魔石を取り出し、的当ての要領でぶつける。するとフタがパカっと開き、2メートルぐらいありそうなヌメヌメした赤い舌がヒュッと出てきた。
あぶねー、正面にいたら確実に当たってた。
舌はそこに何もないことに気付いたのか、少しの間、だらりと宝箱からたれ下がり、ゆっくり中に戻っていく。パタンとまたフタが閉じ、何事もなかったように宝箱がそこにあった。
肉食系:ミミック Lv18
攻撃パターン:舌によるアタック、絡みつき
舌には痺れ毒のある細かな棘があり、麻痺している間に箱の中に取り込み消化する
体は魔樹木、耐久性があり物理攻撃効果は弱
弱点:火魔法、鍵穴へのピンポイント攻撃
鑑定のコツは掴めた。もう声なんて出さないさ。結構恥ずかしいんだよ。
「初めて見たものは、なんでも鑑定したほうが良いか」
「はい、今気づいたのは気配察知1と罠解除6の恩恵ですピ」
はあ、スキル無かったら絶対やばかったな。
「にしても、えげつないなあ、痺れ毒だって」
ド○クエのミミックはビジュアル的にももっと可愛かったぞ。
「Pちゃん、俺の異常耐性って、痺れ毒にも有効?」
「もちろんですピ。本来異常耐性は、毒耐性、痺れ耐性、恐怖や魅了耐性等個別スキルですが、航平のは全ての異常に耐性があるレアスキルですピ」
「よし、やってやるか」
魔法が使えない俺が狙うは一点。
俺は静かに宝箱に近づくと、正面の本体と蓋の繋ぎ目、錆びつき赤銅色をした鍵穴に、包丁を思いっ切り突き刺した。金属でできていないのか、抵抗も無くズブリとめり込む。
「ギギュギュッ、ガガガッ」
包丁を引き抜くと同時に、斜め後ろに跳び退く。
鍵穴から赤い血が、蛇口を全開にしたように噴き出した。フタが開き舌が鞭のようにしなる。
血の噴き出す勢いは止まらない。
しばらくして舌の動きが緩慢になり、噴き出す血の量も減った時、ミミックが淡い光に包まれ消えた。
「…はあ、ナイトメアだな。夢見そ」
レベルが上がりました
頭の中にいつも声が流れる。
「お、レベルアップか…え?」
レベルが上がりました
レベルが上がりました
レベルが上がりました
「ちょ、ちょっと…」
レベルが上がりました
レベルが上がりました
生命力420ポイント 魔力180ポイント 体力20ポイント
筋力18ポイント 防御力19ポイント 素早さ29ポイント向上
剣技2に向上 弱点突きを覚えました
絶対防御2に向上
空間把握1を取得しました
賢者の家1に向上 1㎥が解放されました
アナウンスが終わった直後、ありとあらゆる筋肉がつった。
そんな所に筋肉あったの?!
「あだだだっ、勘弁してええ」
泣きそうな痛みと共に、俺はレベル8になりました。
読んでくれてありがとうm(_ _)m 皆さんの幸運値が爆上がりしました。良かった。