成り行きお宅訪問
「ピヨちゃん! 今何時!?」
顔を洗い、俺の数少ない服から、紺色の半袖Tシャツを選んだ美波が叫ぶ。
「13時23分45秒ですピ!」
「うわっギリギリ! …Tシャツも」
ボサボサの髪をとかしながら、左胸に大きく描かれた絵を引っ張る。リアルな鯛の石像に『ラタイ』と表記された、俺のお気に入りの1枚だ。安い服を売っている店の中でも、一番安かった。
「小さくないだろ? むしろブカブカだ」
俺の言葉に美波が慌てたように頷き、髪を直す。
Lv8 田所美波(タドコロミナミ) 16才
種族:人間
職業:女子高生(高)
生命力:160/160
魔力:9/65
体力:30
筋力:20
防御力:27+20
素早さ:30
幸運:62
魔法:光魔法2
スキル:恐怖耐性1 身体操作1 駿足1
気配探知1 魔力回復1
加算装備:守りのバングルブレスレット
守りの指輪は目立つからと断られたが、ブレスレットだけは常に付けるように説得した。
恐怖耐性スキルを取得していた美波を、今度は少しでも守れるように。
「じゃあこう兄、ピヨちゃん行くね。明日はずっとバイトで、学校の課題もあるから来れないけど、またすぐ来るから…。うう、ピヨちゃん!」
美波がここぞとばかりに、Pちゃんのぽってり腹にすりすり頬を押し付ける。
「ピィ。くすぐったいですピ」
Pちゃんが満更でもないように体をよじる。
なぜだ!? 俺の時は高速で突いてくるのに!
美波が帰ると、エネルギーが足りないであろうPちゃんに、もう一度フレンチトーストを作った。
「ピ! 航平の作る料理は最高ですピー」
うっとりと食べるPちゃんを見ながら、俺も一緒に食べる。チョコケーキのことは、等価交換だったこともあり、あっさり許してくれた。懐の深いPちゃん。
今日夕食までに、同じ物を3つ用意しなきゃいけないけどね…。
「なあPちゃん、テレポが土魔法オーブをくれたけどさ。テレポは大丈夫なのかな?」
「大丈夫ですピ。雷竜の時もオーブが2個ドロップしましたピ? そのテレポも土魔法オーブを飲み込んで、でも既にもっと高位の土魔法を持っていたため、航平にくれたと思われますピ」
もぐもぐとフレンチトーストを食べながら言う。
優しい子だ。もしかしたらもっと、テレポみたいな魔物がダンジョンにいるんじゃないか?
うさぎ寄りとかリス寄りとか、猫に犬…。駄目だ、絶対化け猫と人食いオオカミだろ? その辺は。そんなことをぼんやり考えていると、
「航平、テレポから貰った土魔法を取得したほうが良いですピ」
「ん? ああ、そうだな」
空間庫から土魔法オーブを取り出し、口に入れる。
土魔法3を取得しました。
Lv24 田所航平(タドコロコウヘイ) 23才
種族:人間
職業:サラリーマン(低)
生命力:1640/1640
魔力:904/970
体力:220
筋力:215
防御力:210
素早さ:245
幸運:200
魔法(全適性):光魔法4 風魔法4 雷魔法4
水魔法5 土魔法3
スキル:瞬間移動3 剣技4 見切り4 呼吸法4
駿足4 身体操作5 絶対防御4 気配探知6
空間把握6 隠密5 罠解除6 捜索3 地獄耳2
鑑定10 異常耐性10 魔法耐性10 眼調整10
空間庫10 生命力回復10 魔力回復10
ユニークスキル:賢者の家5(15m×15m×15m)
魂の絆:***に創られし叡智 P
称号「始まりを知る者」「立ち向かいし者」
「幸運の尻尾を掴む者」
美波を探しているうちに、随分とスキルが向上している。
「ダンジョン内と外で、強くなっていく速度は違うのか?」
「もちろんですピ。魔力の濃さがまるで違いますピ。例えば魔力回復も、航平がダンジョン内でなら10秒で1ポイント、外なら100分で1ポイントと考えれば良いですピ」
フレンチトースト2枚目をモシャモシャ食べながら、Pちゃんが言う。
100分か…5時間寝ても3ポイント、魔弾1回分かよ。1日24時間で14ポイントぐらいだ。魔力回復10の俺がこれなんだから…。
「魔力回復1の美波なら、41日と15時間で1ポイント回復ですピ。キラキラボールを撃つには167日かかりますピ」
「ヤバいな、外で魔法を使ったら…。あっという間に魔力酔いになる」
美波に『ダンジョン外で魔法を使うな! 魔力回復しない。魔力酔いがずっと続くことになる』と連絡した。
すぐに「了解!」と返ってきて、ひとまず安心する。
今まで気にせずPちゃんに光のオーラを掛けていたが、ダンジョンに潜らなかったら元の魔力量にしばらく戻らないってことか。
…なんだろう。何か忘れているような、変な胸騒ぎが…。
「ピ、光魔法5以上になれば、魔力回復ポーションが作れますピ。もちろん自分の魔力を込めて作るので、魔力50使って、50ポイント回復するポーションを作る感じですピ」
「へえ、じゃあ作れるようになったら、ダンジョンにいる間に作り置きしておいたほうが良いな」
「それが良いですピ。まだ魔力酔いを起こさないよう、必ず魔力が1ポイント残る補助魔法も航平は使っていないし、アイテムも出てませんピ」
「なんだそれ?」
Pちゃんがまた気になることを言う。
「補助魔法はもう覚えているはずですがー」
「ほお?」
Pちゃんの話に頷き、そして俺は、胸騒ぎを忘れた。
洗濯をしてから、Pちゃんと遅い昼寝をする。それから買い物へ行き、夕飯の材料と、Pちゃんのチョコケーキ3つを買ってきた。
財布がもう勘弁してくれと、悲鳴を上げている。
「先輩のお兄さん、早く魔石買い取ってくれないかな…」
まだ少し湿っている洗濯物を取り込みながら、ため息をつく。
水操作で洗濯物の湿り気を取りたいが、我慢して部屋の中に干した。1ポイントの節約だ。
先輩は確か今日の夜、お兄さんに話すと言っていた。
今頃、専属シェフの作る豪華な食事をとりながら、話をしているかもしれない。
「魔石を信じなかったら、守りのネックレスと雷魔法で信じさせるみたいなこと言ってたけど、上手くいくか…ああ!!」
「ピ!?」
ベッドの上でゴロゴロしていたPちゃんが飛び上がる。
「ヤバい…先輩は魔力酔いも、魔力が回復しないことも知らない」
ピンポーン
その時玄関チャイムが鳴った。
ドンドンッ
「田所航平様は、ご在宅でしょうか?」
澤井さんの声だ。
いつもの落ち着いた低い声が、今は焦っているように聞こえる。
「はい、今開けます」
(Pちゃんは念のためそのままベッドに)
(ピ!)
玄関ドアを開けると同時に、澤井さんが玄関に入り込んできた。
やっぱり見事な身体操作だった。
「夜分に申し訳ございません。航平様、少しお時間を頂きたいのですが…」
澤井さんが迷っているように言葉を止める。
(Pちゃん、多分出かけることになる。Pちゃんどうする?)
(ピ、私も行きますピ)
「実は薫様が…」
「千駄木先輩が気持ち悪がって、動けなくなっている、とか?」
「なぜそれを?」
澤井さんが驚いたように俺を見る。
「その通りです。病院に行くことを拒否し、ホームドクターを呼ぶことも嫌がり…。ただ、航平君を呼んでくれとだけ」
「分かりました、行きますよ」
俺はPちゃんが既に入ってスタンバイしているバッグを持ち、澤井さんがドアを開けて待っている車に乗り込んだ。
「ありがとうございます。徹様も心配されて…」
澤井さんが運転席に乗り込みながら、後部座席に座った俺たちに声をかける。
「とおる様?」
「失礼しました。薫様のお兄様です」
ああ…そうだ。お兄さんがいるんだった。
「旦那様も…今にも薫様を抱えて病院に走りそうな勢いでして」
そりゃあ親御さんもいるよな…。そりゃあ。
(Pちゃん…どうしよう)
(ピ?)
(俺、玄関で吐いちゃうかも?)
(ピ、バッグには吐かないでくださいピ)
Pちゃんの冷たい言葉が心に突き刺さったまま、車は一路、先輩宅に向けて走り出した。
読んでくれてありがとうm(_ _)mなんか忙しくなってきたぞ…。
更新遅くなる→忘れられる→完全スルー…ひいー(TдT)更新頑張る→グダグダになる→いつもの事か→完全スルー…ひいー(TдT)




