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魔法乙女ルルカちゃん


「なんだろう…ちょっと筋肉痛だけど、体が軽い」


 耳を塞ぐのを止め、美波が両腕をブンブンと振り回す。


「美波、ステータスオープンって言ってみな。念じるだけでも良いぞ?」


「…あ! もしかしてあれなの? …ステータスオープン!」


 目を輝かせながら大声を上げる。


 若いって良いねえ。俺ちょっと恥ずかしかったもんな、言うの。


「こう兄! レベル3だって! …魔力が15もある! …キラキラボール!」


 もちろん何も出ない。


 しかし美波よ、キラキラボールってなんだ? そこはファイアボールだろ?


 むふーっと鼻息荒く突き出した手を、そのまま頭に置く。


「あれー? 出ないよこう兄…キラキラボール」


「やっぱり航平の妹ですピ。やることが同じですピ」


 バッグの穴から片目を覗かせて、Pちゃんが呟く。


(なんだその家政婦は見ちゃった、みたいなマネは)


(航平のミステリー本は面白いですピ)


 俺が仕事行ってる間、ミステリー本を読んでたのか…。



「美波、まずは魔法を取得しないと使えないんだ。これ、食べてみな」


 空間庫から光魔法オーブを取り出す。先輩は適性無しだったが、どうかな?


「噛んでいいの?」


「噛まないほうが良いぞ。適性が無かったらビリビリするらしいし」


 ふーんと、光っているオーブを摘み口の放り込んだ。


 いや、だからなぜ二人ともためらわない? ちゃんと先輩が口から出した後洗って拭いたけどさ、ビリビリ嫌じゃないの!?



「あ、こう兄、柔らかくなった…あれ、消えちゃったよ」


 どうやら美波には適性があったようだ。良かった。1つでも攻撃手段が増えるのは安心に繋がる。もちろん俺の。


「頭の中に光魔法2を取得したってアナウンスあったろ? そしてなんとなく使えそうな魔法が分かるはずだ」


 美波がこくんと頷く。


「…丁度良い。今近くに俺たちを狙ってる魔物がいる」


 美波に光のオーラを掛ける。


「え? どこ?」


 辺りを見回しても、美波には分からないようだ。


「美波が倒すんだぞ。これからこんなヤツらが俺たちに襲い掛かってくる。戦って、自分の命を守るんだ。レベルを上げて」


「…分かった。私頑張るよ、こう兄」


 言い終わった途端、デビルヒルが3匹同時に跳んできた。


「ひゃ、気持ち悪い!」


 美波がさっとデビルヒルを避ける。良い反射神経だ。


 俺が雷光や魔法使えば、すぐ片付いてしまう。美波が強くなるためには、俺に頼るのではなく、自分で切り開いていかなきゃ駄目だ。


 頑張れ美波…。


「きゃあっ!」


 俺は美波に跳び掛かろうとしたデビルヒルの、ヌメった黒い背中を手刀で打った。


「うおっ、気持ち悪っ!」


 手がヌメヌメだ…。地面に打つ付けられたデビルヒルはまだ動かない。


 …まあ弱らせてから美波が倒しても良いだろう。


「ピ、航平、美波のためには――」


 Pちゃんの説教が始まる前に、デビルヒルのジャンピングをかわしている美波に大声で叫ぶ。


「美波! 魔法攻撃! 光の玉は魔力消費3、刃は消費10のはずだ!」


 美波が大きく頷く。


「光よ! 私に力をちょうだい! キラキラボール!」

 

 動かないデビルヒルに向けた両手から、やけにキラキラした光弾が放たれた。光弾が当たり、デビルヒルの体が浮いて後ろに飛ぶが、まだ消滅はしない。


 デビルヒルの弱点は火と雷魔法だったな…。違う魔法攻撃は効きにくいってことか。



「光よ! 私に力を! キラキラカッター!」


 美波が跳び掛かろうとするデビルヒルに向け、片腕を袈裟斬りのように振り降ろした。


 1メートルほどのキラキラと輝く光の刃が、デビルヒルに当たるが消滅しない。


 光刃でも、まだ一撃とはいかないか。


 美波の動きがピタリと止まった。


「…こう兄、魔力がなくなっちゃった…気持ち悪いよお」


 両腕をだらりと下げて、こっちを向いてそう告げると、そのまましゃがみ込んだ。


「美波!」


「ピ! 魔力切れ酔いですピ! 魔力を使い切るとしばらく動けませんピ!」


 跳び掛かってきたデビルヒルを雷光で切り捨て、地面でモゾモゾしている残り2匹のとどめを刺し、美波に駆け寄る。


「美波! おい! 大丈夫か!?」


「ピ! しっかりするピ!」

 

 風も水魔法も弾は魔力消費3、刃は10だったが違ったのか!?



「…あれ? 気持ち悪くない」


 しゃがみ込んでいた美波がすくっと立ち上がった。


「ピー、美波、今レベルアップしましたピ?」


「うん、1回したよ?」


「レベルアップすると、生命力も魔力も少し回復しますピ」


 美波がステータスを確認する。


「…あ、ホントだ。魔力ゼロが2になってる」


「レベルアップすると回復するのか。知らなかった」


「航平はレベルアップが早いし、回復10ですから、気付かないのも仕方ないですピ」


「そっか。でもまあ、良かった。このまま美波が動けないで、俺が背負わないといけないかと思ったよ」


「いいよ? おんぶして」


 美波が茶目っ気たっぷりに、笑いながら小さくジャンプした。


「するもんか、重い。でもごめんな。俺の魔力消費の計算が間違ってたみたいだ」



 美波が使ったのは、光弾、光刃各1発、13ポイントで、2ポイント残ると思っていた。


「キラキラボールは4ポイントだったよ? 使ってすぐステータス見たから」


「ピ、それは何か基礎魔法に追加したと思われますピ」


 Pちゃんがまた穴から片目で美波を見ている。


 美波が困惑したように目をぱちぱちした。



「…そういえばやけにキラキラしていたな、美波の魔法。お前、何をイメージした?」


「何をって…。魔法といえば『魔法乙女ルルカちゃん』でしょ? ルルカちゃんの魔法は全部キラキラ光ってー」


「それだ」

「それですピ」


「それって?」


 美波がきょとんとした顔で首を傾げる。


「Pちゃん、魔法のエフェクト効果は、威力に関係あるのか?」


「ありませんピ。ただ綺麗なだけですピ」


「ん? 何こう兄…ピヨちゃんまで」


 俺たちの視線に美波が後退る。


「美波、あのキラキラは基本魔力消費+1ポイント、魔力を余分に使うってことだ。しかも魔法が強まることもない。キラキラは止めなさい」


「え? 嫌だよ。魔法ならキラキラしてるもん」


 ブンブンと首を降る。


「また魔力酔いするほうが嫌だろ? 少ない魔力を効率的に使わないと、もったいないー」


「…ヤダ」


 美波が俯いて呟いた。


「ヤダってお前、またワガママ…」


 俯いてた美波が顔を上げ、ニコッと笑った。


「こう兄、ルルカちゃんは私の憧れなの。ずっとなりたかった。キラキラ魔法を使いたかった。現実じゃ無理なことは子供の時知ってたの。でも今、使えた」


 Pちゃんがバッグから出てきて、俺の肩に止まる。


「ルルカちゃんは困ってる色んな人を助けるの。でも私は皆なんて言わない。私には無理だし。でももし、いつか魔法が使えたら、お母さんやこう兄を助けたいって、ずっと、子供の時から思ってた」


 美波が肩に止まっているPちゃんを見る。


「守りたい人…ヒヨコが一羽増えたけどね」


(やっぱり航平の妹ですピ。同じことを言ってますピ)


 黙っていた俺の頬を、Pちゃんが突く。


「…はあ、分かったよ。そのほうがイメージしやすいならしょうがない。でもその分魔力上げるんだぞ?」


 クシャクシャっと美波の頭を撫でる。


 もう何回、こうやって撫でてきただろう。頭を撫でた後は、大体恥ずかしそうに、はにかんで美波は笑うんだ。


「魔力酔い一歩手前まで使うと、体が危機回避のために基礎部の魔力がやや多めに増えていきますピ。ただレベルアップする時だけなので使い方に注意ですピ」


「はい、こう兄師匠、ピヨちゃん先生!」


 俺たちの言葉に、美波が心底嬉しそうに敬礼をした。







 

いつも読んでくれてありがとうm(_ _)mそうだ感謝状を書こう_φ(・_・ 誤字報告もありがとう! 助かります!(・ิω・ิ)

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[一言] 妹ちゃん頭弱すぎる…
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