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テレポさん勘弁して


「先輩、これ食べます?」


 夕飯を食べ終え食器を流しに運ぶと、まだ興奮醒めやらぬ先輩に、冷蔵庫にしまっていたケーキの箱を見せる。


『ケーキ』というワードはあえて使わない。癒やしの腹ペコピヨピヨちゃんが、必ず動き出すだろうから。


「いや結構。先にダンジョンへ案内してほしい」


 声にワクワク感が溢れている。まあ、そうだよね。


「分かりました。すぐ準備します」


 部屋に備え付けの、押し入れを改装したようなクローゼットから、ジーンズと紺色の『ニラ』長袖Tシャツを取り出し、台所で着替えた。そしてPチャンネルを開く。


(Pちゃん、お腹が空いてればここに夕飯をおいていくけど、どうする?)


(航平だけでは心配だから一緒に行きますピ)


(心配って…そうですね)


「お待たせしました。じゃあ行きましょう」


 どこかに電話を掛けていた先輩が、電話を切るとベージュのパンツのポケットに携帯をしまう。


 俺は先輩の靴を手渡すと、いつものコッペパン型バッグを斜めに掛け、ベッドに転がっているPちゃんを入れた。


「おや? そのぬいぐるみは?」


 千駄木先輩が首を傾げ、中を見ようとするのをさり気なく避けながら、


「まあ、お守りみたいなものです」


 と、ガラステーブルを端に寄せ、ベッドを手前に動かした。ベッドの下に現れた土の急階段を、先輩が目を丸くして覗き込む。


「足元気を付けてくださいね」


 屈んで降りながら、後ろの先輩に声をかける。


「うん…」


 声が不安そうだった。


(航平! ライトですピ)


(ん? あ、そうか)


「ライト」


 左人差し指の先に光魔法で明かりを灯す。


「おお、明るくなった」


 ほっとした声が後から届く。


(ありがとうPちゃん)


「すみません先輩。俺には明るく見えてるんで、気付くのが遅れました」


 やがて天井が高くなり、階段を降りきると隣に先輩が並んだ。


「一度その明かりを消してくれ」


 俺は言われた通り、ライトを消す。


「…うむ、真っ暗だな。光源がどこにもない。ありがとう、もういいよ」


 再びライトを唱えると、今度は先輩の真上に出るよう調整する。


「この暗闇の中で活動しているなら、魔物は目が退化しているんじゃないか?」


「いえ、魔物はちゃんとこっちを見て認識してましたね」


 歩きながら説明しているうちに、土から石畳の通路への境目を通り過ぎた。

 

 カツッ、カツン


 石畳の通路に響いていた先輩のヒールの音が止まる。


「うん? 航平君、すまないがもう一度消してくれ」


 俺がライトを消すと、先輩が驚いたように周りを見回した。


「…ほのかに明るい。自分の指先が見える。それに耳が少しおかしいな…気圧か?」


 俺にはどちらも分からないので、先輩がブツブツ考えている間に、空間把握と気配探知を放つ。


 魔物は散り散りになって俺たちから離れていく。


「航平君にどんな風に見えているんだい?」


「暖色系の蛍光灯が点いている感じですね。階層によって明るさは違いますよ」


「そうか」


 先輩がポケットから携帯を取り出す。画面に指を滑らせてから、電源を落とし、また入れる。


「…画面が反応しない。ずっとスクリーンセーバーがかかっている状態だ。電源を切って再起動させても駄目だ。どうやらダンジョン内で携帯は使えないみたいだな…」


 俺は元々スマホをあまり使わないし、時間はPちゃんが正確に教えてくれてたので、持って入ったのは最初だけだった。


「チッ、ライブができないじゃないか」


 そこか。


「さっき黙っておけば良いって、先輩言いませんでしたっけ?」


「ダンジョンのことはな。でも航平君の魔法は良いだろ? このライトを作り出すところとかさ? 超能力青年現る!って」


 なんだその安いゴシップみたいなタイトルは…。


(超能力青年現る! 観てみたいですピ)


「…俺は出ませんって」


 歩き出した俺を先輩が慌てて追いかけてくる。


「ちょっとだけ! お尻だけでも」


(お尻だけで良いですピ!)


 協力してもらうの止めようかな…。Pちゃんが感化されそうな気がする。


「意味が分かりません」


 通路を右に曲がり、更に進む。魔物は寄ってこない。


「今日は遅いし、魔物も寄ってこないから引き上げますか?……!?」


 すぐ後ろと、チャンネルを通してまだブーブー言っている二人を振り返り聞いた瞬間、先輩の後ろに鮮やかな黄色の何かが現れた。


 転移してきやがったっ!


 咄嗟に先輩の腕を掴み、自分の後ろに回す。


「何を…ひっ!」


 先輩が背中から声を上げる。


 それは原色の黄色い鱗で覆われた太い足と、同じように太く長い尾を持った、5メートルの通路の横幅をほぼ塞ぐくらいの大きさ、コモドオオトカゲのような風貌。黄色い目の中の瞳は縦に細く、先が割れた赤く長い舌を、舐めるように一瞬出した。


(あれは地下17階、密林ダンジョンに生息している雷竜ですピ!)

 

 地下17階…テレポが生息している階だ。きっとテレポを襲おうとして転移させられたんだろう。


 脳裏に、茶色くふわふわの体に三角耳のテレポたちが、逃げ回っている光景が浮かぶ。


 あんな可愛い子たちを襲おうとするなんて許さん!!


 肉食系:雷竜 Lv31

 攻撃パターン:噛み付き、引裂き、尾払い、雷魔法Lv4

 雷電を放ち周囲10メートル以内の全てを感電死、また気絶させる

 弱点:水魔法、心臓部ヘの物理攻撃



 …あれ? レベル高くない? 俺レベル16ですけど?


 ギギャッ


 雷竜が嫌な鳴き声を上げ口を開く。


 ヤバい!!


 咄嗟に背中を向け、腰を抜かし座り込んでいる先輩に覆い被さった。


 そのコンマ数秒後、俺の体に電流が走る。


「航平!」


 Pちゃんの叫び声が、遠く聞こえた。








読んでくれてありがとうm(_ _)mえ?感謝しつこい? いやいやまだまだあああ。  本当に誤字多くて申し訳ないです。改稿は文字が殆どのなので読み直して頂かなくても大丈夫です。

平に平にすいません

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