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やや妖精

ご指摘を受け、考え、賢者の家の形態をボックス状から、外からは楕円の出入り口だけが見え、中が正六面体の部屋に変えさせてもらいました。部屋は下の面が芝生、残り5面が空になっています。中に置かれているものは同じです。もうイメージ化している中、急な変更すみません。もしも、引き続き楽しんでもらえたら、こんな嬉しいこと無いですm(_ _)m


「…ほんとに、妖精がいるのか?」 


 地下8階、階段を降りて目の前に広がった景色に、思わず息を飲む。


 妖精が居る場所は、草木や花々に囲まれた所、そんなイメージだったけど…。


 妖精が居るという8階は、4階までの明かりが暖色系だとすると、もっと白い、白色灯の明るさだった。


 床は継ぎ目のない大理石でできており、草木の代わりに少し濁った水晶の大きな塊が、そこかしこに生えていた。


「いますピ」


「ふうん、こんな所にか。水晶とか鉱石好き妖精かな?」


 まあ、有り得なくもない。妖精は総じて綺麗なものが好きなイメージだ。


「とにかく一度休憩して、回復待つわ。腹も減ったしね」

 

 5階でブラッドバットの衝撃波を受けてから、ずっと走りっぱなしだった。


 神秘的な地下神殿のような雰囲気の中、賢者の家を出現させる。


 楕円の半透明な膜を通り抜け、芝生に置かれたソファーに座った。


「問題はこの中で使えるか…」


 思い描いた通り、膝の上に会社で食べ損ねた弁当が現れた。


 良かった。ここでも空間庫は問題なく使えるらしい。


 空間庫からペットボトルの水と、Pちゃん用にホットチョコレートも取り出す。


「妖精は、ここの石エネルギーも好きなんですピ。人間でいうなら生命力ですピ。妖精の攻撃は、魔法が主なので、航平なら大丈夫ですピ」


 シリコンカップに移したホットチョコレートを、うっとり半開きの目で飲みながら、Pちゃんが言う。


 「だから俺は妖精とは戦わないって。多くの人間にとって妖精は、たまにいたずらもするけど、愛すべき存在だぞ?」 



 弁当を食べ終え、早々に賢者の家を解除すると、ゆっくり歩き出した。


 ライフは満タンだ。


「Pちゃん、他にも身体操作の取得法はあるんだろ?」


 スニーカーに付いていた泥が乾いて、大理石の床に落ちていく。


「ピ?」


「妖精は争いとは無縁。愛らしい容姿に、綺麗な羽根が2対、平和で穏やかに暮らしてー…!」


 魔物の気配を感じて、バッグのPちゃんから正面へ視線を移す。


 小さな生き物が目の前を飛んでいた。


 2対4枚の白い羽根…


「妖精…?」


 体長はPちゃんと同じ10センチくらい。手足があり、頭もある。


 ただ、顔がなかった。髪の毛もなく、尖った両耳だけが付いている。


 のっぺらぼうの全身白タイツ…。


 ちょっとイメージとは違ったが、初めての妖精との邂逅に心が躍った。


「あの…こんにちは。どうも」


 こんな時に人見知りが発動するとは…。


 違うっ、妖精さん相手だから緊張したんだ…。


 口のない場所に赤い横線が入る。その線は、にぃっと笑うように開くと、尖った耳まで裂けた。


「うおっ!? 妖精さんちょっと気持ち悪いですっ」

 

 キィィィーッ


 妖精が耳障りな声を発した。


 まるで黒板に爪を立て引っ掻くような不快な音。


 気持ち悪いなんて言って気を悪くした…?


 音と同時に、目に()()がかかったように一瞬曇り、すぐに治る。


「…なんだ?」


「航平、魔物鑑定ですピ」


 やけに落ち着いた声で、Pちゃんが言う。


「ああ、そうか」



 吸血系(生命力のみ):アンシリ Lv20

 攻撃パターン:生命力吸引、光魔法Lv3

 光玉、強い光を発し、相手を動けなくさせてから抱き付き生命力吸引、

 光魔法の効果を高めるため、叫び声で眼調整レベルを下げる

 弱点:水魔法、体への物理攻撃



「Pちゃん…俺の知ってる妖精じゃないんだけど?」


「この世界の概念に当てはめれば、やや、妖精ですピ」


「やや、妖精…」


 全部妖精が良かった…。


 やや妖精、アンシリがまた叫び声を上げる。


 目にまた()()がかかり、すぐ治る。


 痛みもない。


「ライフ」


 Lv14 生命力 980/980 魔力 490/490


 何も攻撃を食らってはいない。


 でも、なんか変だ。


「Pちゃん、何か辺りが少し明るくなったんだけど」


 白色光が少し強くなったような…。


「アンシリは眼調整レベルを下げるスキルを持っていますピ」


「あ、ああ、そういえば鑑定に…」


「魔法ではないので、航平の魔法耐性では防げませんピ」


「え?」


 キィィィーッ


 アンシリが叫ぶ。また目に()()がかかり、治る。


「…Pちゃん、あのやや妖精、動きが速くなってきてないか?」


「アンシリは変わっていませんピ。航平の眼調整が落ちたからですピ」


 なんだってええ!?


 キィィィーッ


 また叫び声だ。目が一瞬曇り、また戻る。


 アンシリの動きが、また少し速くなった。


「Pちゃん俺、どうしたらいい?」


 バッグの中のPちゃんに、助けを求める。


「今航平は叫び声を4回受けて、眼調整は6になっていますピ」


 ステータスを素早く確認すると、確かに眼調整10が眼調整6に落ちていた。


「ホントだ…、でどうすれば?」


「このまま後6回、叫び声を受けてくださいピ」


 Pちゃんが面白いことを言う。


 アンシリが片手を前に突き出す。その手の先がカメラのフラッシュのように光った。


 目を瞬くも、なんともなかった。


「冗談だろ? 今ならまだ動きも余裕で追えるから、倒せるぞ?」


「だからですピ。余裕で追えているうちは、身体操作を取得できませんピ」


 アンシリが俺に抱き着こうとしてくる。それを俺がかわすと、小さな両手を広げた。


 諦めたか…? なわけないよねー!


 アンシリの両手から生まれた光の玉が、避けた右頬の横を通り過ぎ、後ろの水晶に当たった。


 背後で水晶が砕け散る。


 キィィィーッ


 ヒステリーを起こしたように、アンシリが叫んだ。


 目が曇り、そして治る。


 アンシリの飛ぶスピードは、最初の時と比べ2倍は速くなっていた。


「後5回ですピ! 航平頑張れ!ピ!」


 Pちゃんが、腹筋後5回! みたいなノリで応援してくる。


「Pちゃん! 俺がど近眼なの知ってるだろ!? せめて1は残させてくれええ」


 キィィィーッ


 俺の願いの叫びと一緒にアンシリも叫ぶ。


「そうですね、いいですピ」


 鬼教官Pからお許しが出た。


「くそお! やってやるさっ」


 アンシリがジグザグに飛び、俺の首に取り付こうと手を伸ばす。横に動き、かわす。


 キィィィーッ


 アンシリが叫ぶ。


「航平! 後4回ピ!」


 また光の玉をアンシリが放ってくる。横に飛びながらかわした。


 キィィィーッ


「後3回!」


 俺も残りを数え、アンシリをかわす。


 アンシリがフラッシュを出した。


 眩しいっ


 目を軽く閉じるとアンシリが飛び付いてきた。それを横に転がってかわす。


 キィィィーッ


 アンシリが叫ぶ。


「後2回!!」


 アンシリの動きが、今はホバリングするハチドリのように速く感じる。


 でももう後1回で、眼調整1になる。そうしたらすぐに反撃だ。


 キィィィーッ


 アンシリが最後の叫び声を上げた。


「よしっ、残り1回になった! Pちゃん! 反撃するぞっ」 


 目に()()がかかる。そしてなお…


 治らないいい!?


 目を擦っても霞が取れない。


 視界はボヤけ、アンシリの位置さえ分からない。


 これじゃあまるで、眼鏡をかけていた時の…


「あ、航平、数が違いましたピ。今のが10回目ですピ」


 ……最大の強敵、策士が俺のバッグにいた。








読んでくれてありがとうm(_ _)mランキングは気にしません。吐いちゃうから。楽しんで書いていくので、一緒にこの世界を楽しんでもらえたら、めっちゃ嬉しいです。

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