等価交換
誤字報告ありがとうございますm(_ _)m誤字脱字人間です。コソコソ直してます。土下座してます。
草の上で、日光浴をしているかのようなモグラと、その周囲に2本足で立つモグラ数匹。
小さな茶色い耳を立て、両手を白いお腹の前に下ろしている。その姿は立ち上がったハムスターのようだった。
10メートル離れた位置からそっと鑑定する。
肉食系(ダンジョンミミズのみ):テレポ Lv46
テレポ Lv40
テレポ Lv39
テレポ Lv31×3
攻撃パターン:怖くなると相手を転移させる
弱点:耳、強い光、物理攻撃
攻撃!? それ攻撃か!?
弱点なに!? 触っちゃ駄目なの!?
思えば今まで、溶かすだの丸呑みだの、吸血、毒、切断…好戦的で、気持ち悪いヤツばかりだった。
…俺にはできない。
こんな優しい魔物鑑定を見て、殺れるわけがない。
「転移モグラ…、テレポは土魔法と魔法耐性2を持っていますピ。魔法攻撃を受けたり、物理攻撃に混ざる、殺気、敵意を嗅ぎ分けて、土の中へ逃げますピ。ですからドロップ品は滅多に取れませんピ」
Pちゃんが小声で言う。
あれモグラか? 茶色い毛がふわふわしてるぞ?
「…そっか、じゃあしょうがないな」
俺はとうに転移系ドロップは諦めていた。
心にあるのは、せめてもう少し近くで見たい、愛でたいという欲求だけだった。
テレポたちに、ゆっくりと近づく。
逃げるか飛ばされるか…一応ダンジョン地下1階を思い浮かべておく。
すぐに、立っていたテレポたちが土の中に潜り込み、消えた。
ああー…、残すは寝ているテレポのみ…。
寝ているテレポまで5メートル、案外近くまで寄れる。
草の上に、仔猫のように丸まり、3本の小さな鉤爪がついた前足に顔を乗せ、目を閉じていた。
3メートル、茶色い毛が綿毛のようにふわふわし、口はキツネに似ている。
1メートル…、かわいい三角耳は少し垂れて、中側はお腹と同じ、白い毛が少し見えた。
…モグラって、こんなだっけ?
30センチ、…俺はそっとしゃがみ込んだ。茶色の小さな体が、呼吸に合わせ上下している。
テレポがゆっくり目を開けた。大きな黒目が潤んでいる。
くうううう! 可愛すぎるっ! 20階に飛ばされても悔いなし!
だが飛ばされることもなく、テレポがまた目を閉じた。
何か様子が変だ。
…鑑定
肉食系(ダンジョンミミズのみ):テレポ Lv46
攻撃パターン:怖くなると相手を転移させる 土魔法Lv5
弱点:耳、強い光、物理攻撃
状態:トリッキースネークの毒がついたミミズを食べたことによる瀕死状態
あいつか! あいつの毒か!
エセ可愛いを尻尾につけた蛇がキシシと笑う。
忌々しく思った途端、テレポのふわふわだった毛が凝縮し、固くなった。少し垂れていた耳が、パタンと頭側に閉じる。
…モグラっぽくなった。
瀕死の状態で、必死に起き上がろうとするテレポの顔に、慌てて空間庫から取り出した毒消し剤を掛ける。
驚いたテレポが地面に頭を突っ込んで、動きを止めた。
お尻だけ残した状態で止まっているテレポをすぽっと抜く。
ふむ、尻尾は無し。
「おい、大丈夫か?」
片手のひらにすっぽり収まったテレポが、俺を見上げた。
「…キュキュ」
キュキュって鳴いた! キュキュってなんだよ! キュートのキュか!?
テレポが俺の手の匂いをヒクヒクと嗅いでいる。
鑑定をかけ、状態を確認すると、毒も瀕死状態も消えていた。
「うん、良かった」
手の中で、固かった毛がゆっくりと、空気を取り込むように膨らみ、耳がピンと立っていく。
草の上に降ろしたが、そこからテレポは動かなかった。
「あれ? まだ動けないのか?…そうだ」
俺は空間庫から板チョコを取り出す。
「ピ!? 航平それ…」
Pちゃんがバッグから慌てて飛び出ると、肩に止まってきた。
「Pちゃんには、帰ったら美味しいチョコあげるから」
「ピィィ、それは楽しみですピ」
うずくまっているテレポにチョコの欠片を近づけてみる。
「そっか、ダンジョンミミズしか食べないみたいだからなー」
匂いを嗅いでいたテレポが、チョコを少しかじる。
「お、おお?」
そして突然チョコの欠片をカプッと咥えると、巣だと思われる穴の中へ持ち去った。
「テレポもチョコの美味しさが分かったようですピ」
なぜかPちゃんが自慢げに言う。
「まあ、元気になったみたいだし、俺たちも帰るか」
あのブラッドバットの5階へ…。
来た方向に足を向けた時
「キュキュ」
足元で鳴き声がした。
見ると、さっきのテレポが何かを手に乗せている。
その後ろには同じように、同じ物を持ったテレポが5匹。
「ん? くれるのか?」
屈んで手を差し出すと、テレポたちが俺の手の上に、ひとつずつ置いていった。
テレポたちがくれたのは、黒い丸薬のような物だった。
正○丸? ラッパのマー…
「キュキュキュッ」
テレポたちが自分たちの巣穴へ帰っていった。
「なんだこれ?」
くれた物を鑑定する。
テレポドロップ:テレポの魔力丸
テレポの腹の中で練られた魔力を丸めた物
飲むと一度だけ行きたいと願った階に転移できる
腹の中で練られた…?
「Pちゃん、これって…」
Pちゃんが手の中にある魔力丸を覗き込む。
「テレポのドロップですピ! ドロップ品は過剰な魔力から作られますから、自分で取り出すこともできますピ。航平、これで1階に帰れますピ」
いや、嬉しいが問題はそこじゃない。
「…Pちゃん、腹の中で練られた魔力って…どう出す?」
手が震える。
「それは排…」
「そんな転移はイヤだああ!」
走り出した俺の肩に掴まっているPちゃんの
「大丈夫ですピ! もしかしたら上からかもしれませんピ」
という言葉は、なんのフォローにもなっていなかった。
読んでくれてありがとうm(_ _)mテレポも好きなんです




