ベガスダンジョン
星A/1/11005 タドコロコウヘイ Lv122
星D/2/11005 タドコロナギコ Lv58
星E/256/11005 イーサン ヘイズ Lv20
星F/788/11005 アレン ホフマン Lv19
星F/2357/11005 バリー エイデン Lv13
星F/2598/11005 トム グリント Lv12
『"ランクA"はあるとは思ってたけど、実際そのレベルを見ると破壊力がすごいなぁ。臨時パーティーでも一緒に潜れて光栄だよ』
ベガスダンジョンの地下1階、辺り一面背の低い草が生い茂り、広々とした草原が広がっていた。隣を歩くトムがソバカス顔をクシャッとし嬉しそうに笑う。
『そのとおりです。こんな機会は滅多にないから俺や母さん、美波をよく見て、盗める動きは盗みなさい。今"スキル鑑定1"を持っているなら、常に鑑定しなさい。それと弓使いにかぎりませんが、魔物を良く見て、次の動きを見極めいけば、更に眼は良くなり、新たなスキルが取得可能になります』
Pちゃんの言葉を繰り返すと、トムが急に真剣な眼差しで俺に頷いた。
『分かったよ。なんで俺が鑑定スキル持ちなのを知ってるかなんて、野暮なことは聞かないよ。戦闘中でもそうじゃなくても、常に意識を持つことが大事なんだね』
周りにいたイーサン、アレン、バリーまで同じように俺を見て頷いてくる。
……どうもむず痒いんだよな、眼差しが。
「こう兄、300メートル先に3匹!」
美波が指さした先に、ダチョウくらいの黒い鳥が見えた。
「あれがお肉が美味しい『ホットバード』かしら?」
母さんの言葉を聞いて、4人が驚いたように美波が示す方向を見つめる。
『ホットバードだって? おいイーサン、見えるか?』
『いや、見えない。アレンは?』
バリーに聞かれ、イーサンが首を振りながらアレンに向け顎を動かす。
『ゴマ粒みたいなのが見えるが……種類や何匹までは分からない』
『300メートル先に3羽います。集中して見てください。辺りの気配にも。走りますからついてきて』
『ちょっと待て! ホットバードなら攻撃が──』
(航平、母さんたちと走って魔物に近寄ってください、イーサンたちはあとからついてきますピ)
「分かった。母さん美波! 走るよっ」
俺の言葉に即座に反応した二人が駿足を使う。そしてホットバードの10メートル手前で止まった。漆黒の体に長い鉤爪を持った2本の足、黄色く尖ったくちばしの両横から、赤いコブが垂れ下がっている。
「お母さん! 私からね!」
美波が腰の留金をカチリと外し、白薔薇の鞭を手に持つ。ホットバードは突然近づいてきた俺たちを警戒して動かない。
「この鳥、火魔法使うみたい」
美波が魔物を鑑定する。
「蹴りもありそうね。気をつけて」
母さんがミスリルの細剣を抜きながら応えた。
『ハアハア……ちょっと待て、そいつはガスバーナーみたいに火を──』
ようやくイーサンたちが追いついた直後、白い鞭がヒュッと、空気と漆黒の体を切り裂いた。鳴き声もあげる間もなく淡く光って消滅していく最中に、隣のもう一匹を打つ。最後の一匹が赤いコブを風船のように膨らませ、口を開けた。
「キラキラシールド」
左手の甲を目の前に出し、円形のキラキラと輝く光の盾を出現させる。直後にホットバードの口から太い火が噴射され、光の盾にぶち当たった。盾で火を受けたまま、美波が鞭を振る。
ボボッ……
ホットバードが火を飲み込みながら光って消滅した。
「やるなぁ、美波」
「美波、火傷はない?」
「大丈夫!」
俺たちが近寄ると、白い鞭をくるくると巻きながら、美波がにこっと笑った。
『……ヒューッ! ホットバードを一撃かよ』
イーサンが近寄りながら口笛を鳴らした。
『美波は小さいのに強いなあ』
バリーが美波を抱き上げる。高い高いだな、これは。
「ちょ、ちょっとバリーさん! 私もう高校生よ!?」
『バリー、美波は子供じゃない』
アレンが苦笑して、美波を掲げるバリーの太い腕をポンポンッと叩いた。
『なんだと!? うちの娘と同じくらいじゃねえのか?』
バリーが謝りながらそっと美波を下ろした。あれ? バリーって確か26歳。
『バリー、さすがに8歳はないよ。どう見ても12歳くらいだ。日本人は若く見えるからね!』
トムがあははと笑いながら、美波にright?と頷いて見せた。
「"ライ?"じゃないよ! シックステイーンです!」
「美波、英語分かるようになったわねえ」
母さんが小さく拍手をすると、
「今のだけは絶対わかるっ」
と、真っ赤になって叫んだ。
『おーい! 肉ドロップしてるぞ!』
イーサンが落ちていた肉の塊を持ち上げると、草を払ってアレンが背負っていたバックパックに入れようとした。
「あ、待って」
母さんが自分のリュックからラップを取り出すと、イーサンから受け取った肉にラップを巻き、はいっとアレンに手渡した。
ここにもラップを持ってきたのか。さすがだ母さん。
『イーサン、魔石はどうしてる?』
俺が聞くと、イーサンが両肩をすくめ、
『前は見向きもしなかったのに、数週間前から必ず魔石を拾えと通達があったんだ。だから回収してるよ。でもこれは美波が倒したものだから、受け取れない』
『分かった。じゃあもらっていくよ』
美波のリュックにしまうふりをして空間庫に収納する。魔石を持っていても飛行機に乗れるかもしれないが、リスクはないほうがいい。
(航平、そろそろ出発しますピ。今日は到達していない5階までは行きたいものですピ)
(うん? ああそうだな。それにしてもPちゃん、ずいぶんやる気だね)
『ではどんどん狩って、今日は5階まで行きます。時間もないしさっきのように走りますから、ついてきてください。離れてもついてくれば、"駿足"スキルが取得できるかもしれません』
『おお! "駿足"か! ぜひとも欲しい』
4人が興奮したように頷いた。
読んでくれてありがとうm(_ _)m 感謝マンパワー!




