↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/222

徹さんのおもちゃ箱


「レベルタグといえば……そうだ、兄さんが今していることを見てもらっていいかい? P様とマシロはまだ食べ足りないようだから、ここで待っててもらおう。澤井」


 澤井さんがすっとドアを開け入ってくる。


「P様たちを頼む」

「はい」


 ついて来てくれと、開いたドアから廊下に出た。美波が肩を狭め、そろそろとその後に続く。きっと何も触れないよう細心の注意を払っているのだろう。いい心がけだ。先輩の書斎とは違う扉の前で立ち止まり、軽くノックをする。


「兄さん、入るよ」


「ああ、いいよ」


 中から徹さんの声と、微かな機械音が聞こえた。先輩が扉を開けると、そこにはスチール製の広い机の上に小型のロボットアームが2台置かれ、一段下にもう1台、そのまた下に木箱が置かれていた。3本のアームが忙しなく動いている。部屋の隅には、蓋がカマボコ型の木の宝箱が9個、整然と並べられていた。


「やあ田所くん。それに君は……妹の美波さんだね? 初めまして、薫の兄の徹です。君のお兄さんに、兄妹共々命を救ってもらったことがあるんだよ」


 そう言って、紺色のパンツに白いサマーセーターを着た徹さんがニコッと笑った。


「はひ! いつもこう兄がありがとうございます!」


 しまった! 美波は恐怖耐性しか持っていない。魅了5の徹さんの微笑みに耐えられるはずがない。


「田所くん、大丈夫。スキルコントロールはしているよ。田所くんには効果がないからやっていなかっただけで」

 

 見透かしたように徹さんが微笑むと、美波が赤い顔のまま、首を傾げた。なんだ、ただイケメンに見惚れただけか。


「徹さん、この機械はなんですか? レベルタグの箱を開けて、閉め……もしかして?」


「ああ、レベルタグのストックを作っているんだよ。今現在タグ箱はひとつだからね。今後ダンジョンが高確率で出現する6ヶ所にも、タグは置いておかないといけないから」


「クククッ。蓋を開く、タグを取り出す、蓋を閉める、タグを宝箱に詰める。その作業ロボットは兄さん手製だ。変人だろ? クククッフゴッ」


 変人兄妹。


「別に既存のアームをレベルタグ用に改造しただけだよ。変人とは心外だね」


 徹さんが軽く肩をすくめる。


「一体どれくらい作ったんですか?」


「1秒で1枚、1時間で3600枚だね。日本の18歳以上の人数、地域等を計算すると、それぞれ1万枚は確保しておきたい。ただ想定数以上にダンジョンが出現する可能性もあるし、10万枚は作っておこうと思っているよ。28時間弱で生成出来るしね。ちなみに宝箱ひとつ1万枚のタグが入っている」


「ずっと作っていたんですか?」


 驚きを隠せないでいると、ははっと徹さんが首を振った。


「まさか。これでも他にやることがあるよ」


 そりゃそうだ。公務員だもんな。ずっとタグに掛かりきりにはなれないだろう。仕事あるし。


「レベルタグの箱に入れる魔石だけど、大きさや色の濃さで、タグを作れる枚数が変わるんだよ。この親指の爪くらいのキラーアントの魔石では、タグは10枚。トリッキースネークが30枚、棘蛙50枚、アンシリの魔石で100枚だ。ギルドに置く1万枚のタグを作るのに、アンシリ級の魔物を100匹倒さないといけない。ただ田所くんが支払った中にあった雷竜の魔石、あれは1000枚。魔鉄喰いが5000枚だった」


 机に置かれたパソコン画面を開きながら、どの魔物がどれくらい生成出来るか説明してくる。


「魔石のエネルギー量をタグ生成量で算定しているところだよ。それからこれも見てくれ」


 白い機器を、机の空いた空間に置く。中型のシュレッダーのようだが、吸入口は俺の拳がすっぽり入るほど、広く取られていた。


「これは?」


「色差計と、大きさを判別するAI学習機能を搭載した試作品だよ。例えばー」


 電源を入れ、緑の小さな光が点灯するのを確認してから、持ち運び用の窪みと思っていたところに、左の人差し指を入れる。ピッと、Pちゃんが鳴いた時のような音がし、徹さんがブラッドバッド、ビッグスラグ、蚊などの魔石を上部が開いている吸入口から、カランッと中に入れた。白い機器が微かに振動する。10秒ほどで緑の点灯が青い点灯に変わった。


「判別が終わった。もし魔石以外の物、例えば黒曜石や黒いガラス等を入れると、このライトが赤く点滅して警告音が出るようになっているんだ。青く点灯したらこのボタンを押してー」


 ボタン横の隙間から、レシートのような白い紙が出て来た。そこに書かれていたのはQRコードのようなマークが中央にひとつ。


「これをこのボックスに入れる」


 部屋の隅に置かれた、コンビニに置いてあるようなATMの液晶画面に、また左手の人差し指をつけると、そのレシートをカードを入れる所に差し入れた。紙が吸い込まれる。


「これで私の登録口座に、魔石の買取金額が振り込まれた。このまま引き出しも出来る」


「えーと……これは?」


「まずこの白い機器『魔石鑑定器』とでも言うかな。指紋認証後……本当はタグの星印で認証したいところだけど、その技術はまだないからね。これが魔石の濃淡を判定して、大きさを判別する。登録した魔石を基準として査定価格が出る。情報が入ったQRコードが排出され、それを指紋認証ATMに入れれば、支払いが受け取れるという仕組みだよ。もし他人のQRコードの紙を入れても、認証で弾かれるようになっているんだ」


「はあ……凄いですね」


「まだまだ改善の余地はあるけどね。これから冬馬も来るから、冬馬の『解読』スキルで星印の謎が少しでも分かれば、認証に使えるかもしれない」


「……あの、なんでタグの入れ物が宝箱なんです?」


 不思議に思っていた。徹さんにしては工夫がないような……。


「宝箱の方がワクワクしないかい? 探索者登録をする時に、そこからタグが出てきたら」


 徹さんが楽しそうに笑った。ただ呆然と部屋の機器を見ていた美波がくすっと笑う。


「徹さん、おもちゃを見つけた子供みたいですね」


「実際そうだよ、美波。兄さんは本業の仕事をさっさと片付けて、長期休暇を取ったんだ。おもちゃで遊びたくて。クククッフゴッ!」


「薫、それは言うなよ」


 徹さんがバツが悪そうに頭を掻いた。


 コンコンッ


「おーい、徹。入るぞー」


 まだ返事もしないうちからカチャリと扉を開けて、あくびをしながら冬馬が入って来た。茶色くサラサラだった髪が、寝癖でボサボサだ。


「全く。澤井さんはVIPをおもてなし中って、ダイニングから出て来ないし。徹が出迎えろよ、呼んだのそっちなんだからさ。あー眠ぅ。ふぁぁ……ああ!?」


 あくびを飲み込み、固まったように美波を見る。


「あれ? 確かこう兄の友だちの……」


「そ、そうです! こうへーの友人であり、徹の弟のようなものであり、薫の兄かもしれませんっ」


 寝癖の髪を両手で整えてから、ビシッと背筋を伸ばした。


「え? そうなの?」


 困惑顔で振り向いた美波に、皆一斉に首を振った。




 



読んでくれてありがとうm(_ _)m感謝のみ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 美波ちゃんの前だとポンコツ具合が増す冬馬くん良いねw
[一言] *流し読み推奨。後から読み返して支離滅裂さに気づいたなで。 このくらいの時間に感想かけばいい? 俺いっつも大体同じ時間に書いてたつもりなんだけど(´'ω'`)←何かお爺ちゃんに見える。…
[良い点] Pちゃんとマシロが凄く可愛い。 癒されるわ〜 始まったばかりの頃はダンジョンが現れるのはまだまだ先だと思っていたけど ゼロアワーが近いですね。 これからが楽しみです。 [気になる点] 出…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。