俺のパンツと靴下は?
初めての投稿です。右も左もわかりません。ゲームも携帯機能も分かりません。
なので勝手に謎スイッチ作ってしまったらすみません。限りなく深い愛情で読んで頂けたら幸いです。
カタカタッ…
「んあ…。地震か」
ベッドの中で少し様子をみたが、それ以上の揺れはこなかった。
俺はまたまどろみ、夢の中へ…。
「うあうっ!」
顔にのっぺりと何かが乗った。俺はとっさにそれを引き剥がす。
「な、な、んだ!? ナメクジ??」
慌てて部屋の電気をつける。
ベッド横に置かれた小さなテーブルの上に、いつも置いてある眼鏡の代わりに、それはいた。
どんぶり大のゼリー、目を細めると、半透明の金色の中心に真珠のような虹色玉、他にも眼鏡のフレームらしきものがぼんやりと見えた。体はふるふる波打っている。
昔ゲームでやったような、工作で作ったようなその形状…。
「まさかの、す、スライム?」
台所から包丁を持ってきてそろそろとつついてみる。
するとスライムの体の一部がムニュッと伸び、包丁をくるみ取ろうとする。
「おわっ」
引き抜こうにも引き抜けず、今度は虹色の玉に向かって包丁を押し込んでみた。刃先は玉に当り、案外簡単に虹色玉を分断。するとドロリとゼリーが溶けた。
テーブルの上に金色の水溜まりと眼鏡のレンズ2枚が残った。
「…なんだよ、いったい」
呆然としていると、なんだか顔がピリピリするので、洗面台の鏡で確認する。日焼けしたように少し赤い。
顔を急いで洗うと、何やら今度は肌がつるつるしている。
「…ピーリング? さっきのスライムみたいなのが顔に乗ったからか?」
度の合わない古い黒ぶち眼鏡をかける。
溶けた眼鏡といい、あいつは酸性の何かでできていたのかもしれない。眼鏡レンズは取っておく。
テーブルに残った金色の水を、ティッシュで集めコップに入れたら100mlぐらい溜まった。
濡れたティッシュを観察していても、溶けることはなかった。ガラスのテーブルも溶けていない。
「…あいつはどっから入ってきた?」
カーテンを開けると外は白々と明るくなり始めていた。窓には鍵がかかっている。古いアパートの一階だから、常に鍵はかけているのだ。
「玄関も台所の窓も開いてない…。ん?」
ベッドの下に仕舞っていた、段ボールや小さなプラスチックタンスがない。
俺のパンツと靴下…。
更にフローリングの床もない。ぽっかりと。ベッドの足のギリギリ内側に、穴が空いていたのだ。
「やべっ! 地盤沈下!? てか…。えー、ここだけ?」
危なかった、もう少し穴が大きかったら、ベッドごと下に落ちていた。フローリングは刃物で切ったようなきれいな断面だ。
体を伏せ、ベッド下の穴を覗き込む。が、暗くて浅いのか深いのかさえ分からない。懐中電灯なんてない。ライターはあるがガスかなにかが漏れていたら大変だ。ガスの臭いはしないが雨上がりの土の匂いがした。
ベッドを慎重に手前へ動かし、再度覗き込む。
部屋の蛍光灯に照らされた穴は雑な土の急階段があり、隣の部屋の下へと続いていた。
ここだ。間違いなくここからあいつが入ってきたんだ。
どうするか?
今日は土曜日、今日明日と仕事は休みだ。
この穴を塞ぐものはない。またあんな奴が出てきたらと思うと気持ち悪くてたまらない。
大家さんに言って早々に埋めてもらうのが一番だろう。
「でも…あれはスライムだったよな…これダンジョンだったりして? なんてなあ、まさかなあ。…そうだ、スマホ」
スマホのライトをつける。これで足元くらいは照らせるだろう。
「ちょっとだけ、様子をみてみるか…」
玄関から靴を持ってくると、左手にスマートフォン、右手に包丁を持った。
「ん、そういえばあいつ、レンズやテーブルは溶かさなかったよな。時間がかかるのか、それとも溶かせないのか…」
金色の液体を入れたコップも特に変化なし。
俺は少し考えてから、ガラスのテーブルの脚を両肩にかける。そんなに重くはない。小さめだからね。それでも腹下まで隠れる。安定感を得るため、ガムテープでガラス面が隠れないよう体に固定していく。
「…取り敢えず、ガラスの鎧完成」
誰に見られるわけじゃないが、ちょっと恥ずかしい。
23才独身、彼女いたためしなしの俺だから、乗り越えられる試練だろう。
もう少し投稿します。