プロローグ
「ドンドンドーン! 異世界転生の時間だー!」
真っ白く霞がかった世界に、パフパフといった手持ちホーンの音色と、おちゃらけたような声が響き渡る。
声の主は、二メートルはあろうかという長身の男性。
その身は真っ白なローブに包まれ、唯一はっきりとした色を持ったその黒髪は、足下まで届くかというほどの長さ。
一方。
男性と対面するかたちで、もう一人別の青年が立っていた。
「イエー!」
青年は両手を叩き、楽しそうに声をあげた。
その様子をみた背の高い男性は満足げに頷き、一つ咳払いをしてから再び口を開く。
「仕事にも人生にも疲れ果てた君のために!
わたしが!とっておきの異世界を!用意した!
これまでのしがらみの何もかもをリセットし、新たな生を授けよう!」
「そんなこと言って、リセット(石器時代)とかいうオチなんてことは?」
「ふはは、そのようなことは無いと誓おう!
文明があり、きちんと確立された生活基盤の下で人々が暮らした世界である。
さらに特典としてはささやかであるが……、君は前世の知識を保持したまま異世界へ転生することができる。
そして転生した先は、ちゃんとその知識が有用になる世界なのだ!
君は! 間違いなく! 異世界での一生を有利な状態で歩み続けることができるのだ!」
「そ、そんなことが!?
神様、ありがとう……!」
「はっはっは! なあに礼には及ばんとも。
次の生こそ、君が絶えぬ幸福に包まれんことを願っておるよ。
さて、そろそろ送り出すことにしよう」
長身の男性が両手を広げる。
「いざ! ハック&スラッシュの世界へ!!
──あ、こら! 逃げるな! 逃げても無駄だぞ!!」
「はあああああああ!?
うるっせえ! 何が有利な世界だ!!
ハ ッ ク & ス ラ ッ シ ュで一生を過ごせとかふざけんな!!
いやだ!本当にいやだー!!」
断末魔と楽し気な笑い声が響く中、世界には輝きが満ち、泣き叫ぶ青年はあっけなく意識を失った。
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