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第2話 決意を新たに

 目の前が暗い。俺はあのあとどうなったんだろう。確か、変質者に襲われている女性を前にして俺は変質者から女性をまもったんだったな。

 そして、おそらく俺は死んだ。そうはっきりわかるくらいに俺は死を実感したのだから。


「ここは」


 だがそのあとどうなったかはわからない。死後のことなんてだれもわかるはずはない。

 俺はゆっくり目を開けた。どうも、白い空間に俺はいるらしい。少し先にはテーブルがあり、その上にはなにやら大量の紙が重ねられていた。そして、椅子に座っていたのは一人の美しい女性。金髪のロングヘアーの、魔法使いが着るような黒いローブを羽織っており、首元には二つの白いネックレスがあった。

 その女性は椅子から立ち、俺に近づいてきて声をかける。


「あら、意識が戻りましたのね」


「え?」


「気分はどう?あなたは残念ながら死んだ。だけど最後に見知らぬ女性を救ったのは本当に素晴らしいことだったわ。なかなかほかの人ができないことをあなたはやり遂げた」


 とっさの判断というか足が勝手に動いた、というのが俺の気持ちだったがここは黙っておく。

 しかし、なぜ周りに誰もいない中で俺にしか知りえないことを目の前のこの人はしっているんだ。俺は気になったので問いただす。


「あの時どこかでみていたのか」


「ええ。直接見たわけではないけど間接的にならね」


 間接的......?意味が分からない。


「どういうことだ」


「それはそうよ。私は二つの世界を任されている神だもの」


 今、なんていった。「神」っていったのか。目の前の女性は確かにそういった。聞き間違えるはずがない。

 しばらくしてなにかの夢なのでは、と疑っていた龍輝だったが、それにしては意識と感覚がはっきりとしている。


「何がどうなって......」


 目の前の女性もとい女神は説明を続けてくれた。


「ここは天界。創造神が治める世界よ。そして、私は二つの世界を管理する神」


 そう言って目の前の神はある場所を指さした。

 そこには二つの水晶玉があり、その水晶玉をのぞき込むと俺が生前最後に見たあの光景が映し出されていた。おそらく、というかほぼ間違いなくこの水晶玉は地球を映し出している。


「あれ。ここ、最後に俺が死んだところにそっくりだ。もしかして、地球なのか?」


「そうよ。これはね、私が管理しやすいように水晶に二つの世界が見えやすいように創ったもの。なにかあればすぐにわかるように」


 2つの水晶玉にはそれぞれの世界が水晶玉を通じ直接見えるようになっているらしい。

 俺は地球が映っている水晶玉とは別の水晶玉をみてみた。その水晶玉は暗く濁っているように見えた。不吉を象徴するように。


「なんだこれ......何が起きているんだ?」


「見えた?この世界はね、今これまでにない危機に瀕しているの。この世界は大きく二つの勢力に分かれている。一方はあなたたちと同じ人類。そしてもう一方は魔王が統治する魔族。今この世界では魔族の勢力が急激に拡大しているの。水晶が暗くなっているのは魔王による闇の魔力によるもの。このまま放置していれば世界が維持できなくなって崩壊する」


 そう言って女神は顔をしかめた。


「神様ならなんとかなるんじゃ」


「そう思うでしょ。でもね、世界にわたしたちが直接干渉するのは創造神の決まりにより禁止されてる。私たちの仕事は世界の管理及び維持。龍輝は今からその世界に行って魔族の侵略を止め、世界を救ってほしいの」


 俺がここに呼び出された理由がなんとなく分かった気がした。俺は神様が管理しているもう一つの世界へと行き、世界を救わなければならないらしい。


 頭では理解した。しかし、納得がいかない。


「なんで、なんで俺が」


 笑わせるなよ。俺なんかそんな大役を果たせるわけがない。逃げ続けてきた人生。そんな俺を選ぶなんてこの神はどうかしてる。俺には俺に見合った場所があっただろうに。


「俺、なんか」


「忘れたのかしら。あのことを」


「......」


 なんであの事なんか。今でも思うが、とっさにあの判断ができたのは今でもよくわかっていない。あの時だって俺は逃げていたはずだ。


「でもあなたは逃げなかった。いいえ、あなただからあの人を救えたの」


「......」


「無理にとは言わないわ。決めるのはあなた自身。またあの時と同じように逃げるか、覚悟をきめて世界を救うか。誰にも決められない。いいえ、あなたにしか決められないの」


 俺は、俺は。俺なんかで世界を救うことができるのか。こんな、何もできない俺に。


「もちろん、世界を救うなんて大役を果たすためにそのまま何も持たずにいかせるなんてことはさせないわ」


「な、なんだ?」


「世界の危機に立ち向かうにはいろんな苦難が待ち構えていると思う。そこで、どうしても危なくなった時、これを使えばいいわ」


 そういうと女神は目の前にウィンドウを表示する。近未来にありそうな超薄型ウィンドウ。それを俺に見せてくれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【絶対回避】

効果:敵の攻撃を一度だけ完全に回避する。

取得条件:1Gpt


【全回復】

効果:自分のHPを完全に回復する。

取得条件:1Gpt


【絶対攻撃】

効果:自分の攻撃が一度だけ絶対に当たる。

取得条件:1Gpt


【貫通攻撃】

効果:相手の防御力無視。敵に100ダメージを固定で与える。

取得条件:1Gpt


【透明化】

効果:10秒間、自身の姿を他者から視認できなくする。

取得条件:1Gpt


【オーラ開放】

効果:3分間、自身のHPが4割減る代わりに攻撃力を3倍にする。

取得条件:1Gpt


【ステータス反転】

効果:自身のステータスと相手のステータスを完全に反転させる。この効果は相手のHPを0にするか自身のHPが0になれば解除される。

取得条件:1Gpt


【使用制限解除】

回数付きの魔法、回数付きのスキルいずれかを1つだけ、使用無制限にする。このスキル自身を選ぶことはできない。

取得条件:1Gpt


【スキル、魔法、能力効果2倍】

すべてのスキル、魔法、能力効果を一度だけ2倍にする。

取得条件:1Gpt

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ウィンドウにはこう、表示されていた。俺は驚きを隠せない。


「なんなんだよこれは!?」


「このスキルはいうならば【切り札】、【奥の手】。あなたがあらゆる困難を前にしたとき、どうしても必要になればこの中から一つ選んで使うことが可能よ」


「この中から、一つ」


 そういうと女神は「ウィンドウと言ってみて」といい、俺は言われたとおりにする。すると、先ほど見た画面が俺の前に現れる。しかし、1つ異なっていたのは画面の最初に「所持Gpt:1」があったこと。


「それは私からのプレゼント。これは【GodPoints】の略でこのスキルを一つ得るために必要なポイントのこと。あなたはこの中のスキルからGptを使ってどれでも一つ、習得することができる。ただし、Gptとスキルはそれぞれ1回しか使えないから使いどころを間違えちゃだめよ」


 この中から1つか。どのスキルも使いどころを見極めなければならないスキルだ。


「ここで無理に決める必要はないわ。向こうの世界で決めることもできる。だけど、向こうに行ってしまえば私は干渉できなくなるから私からの助言を求めるなら今のうちね」


「本当に一度しか使うことができないんだな」


「一度しか使えないから奥の手なのよ。このスキルを使うことがないように向こうでは頑張りなさい」


 今までの流れ的に俺が逃げるなんてことはもう、できなくなりつつあった。でも、やるしかない。このスキルもある。ここで逃げるわけには。


「わかった。俺にできることがあるなら」


「あなたは今これまでにない挑戦を成し遂げようとしている。どんな困難にも最後まで諦めず、頑張ってね。私はここから干渉できなくなるけどあなたならなんとかできるはずよ。自分を信じて」


 俺は黙ってうなずく。スキルはまだ決めていないが、どうしようもなくなった時に向こうで使うつもりだ。元の世界が恋しくもある。だが、また戻っても俺に居場所はない。未練もない。ならこれから行く異世界へ行くほうがよっぽど楽しみだし、俺を知る人もいない。ここからやり直すんだ俺は。


「それじゃあ、転生させるわよ。なるべく体に影響はないようにするから心配しないでね」


「ああ」


 俺は頷き、気を引き締めた。まもなく視界がぼやけ始め、意識もほぼ同時にシャットアウトする。


(やり直す。俺の人生を)


 かくして黒田龍輝は異世界へと転生することになった。

次回更新予定は2019年10月1日23時です。

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