第1話 人生の最後の日
初めまして。作者のRukiです。ほぼほぼ初めて小説を書きます。楽しんで見てくれるように頑張りますのでよろしくお願いします。
俺は黒田龍輝。俗にいう引きこもりだ。なぜこうなったかを説明するのは難しいが、一番しっくりくるのは気づいたらこうなっていた、としか説明ができない。
何も俺は望んでこうなったわけではない。もともとしゃべるほうではなかったのは否定しようがないが、誰とも極力かかわってこなかった結果、クラスに俺の居場所は
なくなった。俺はなぜ学校に行っているのかわからなくなり、学校へ一日休んだ日があった。その日を境に学校へ行く回数は減り、今はもうほとんどいっていない。
「俺何してんだろ......」
気づけば親にすら見捨てられていた。
学校を休んでいる間、何をしているかと聞かれると「何もしていない」と答えるしかなく、そんな生活を両親も見ており、彼の両親はそうそうに彼を見限り、出来のいい妹へと愛情を注ぐようになっていった。
そんな生活を続けることはや半年。俺はいつものように
晩ご飯+αお菓子を買うためコンビニへと足を運んでいた。
「早く帰ってあのイベントのつづきしなきゃな」
彼はもうじき18歳。大学受験の時期だが、龍輝にはそんなことは関係なかった。というか、受験があることすら頭にはなかった。彼は今まで苦難、困難ををすべて投げ出してきており、彼にとって受験はそれほど重要なことではなかったのだ。そんな彼だったが、ふと目の前の光景に違和感を覚える。
「ん、あれは」
そこには女性と後ろを向いている男性の二人。あまりにも普通の光景。取るに足らない光景であったが、よく見ると男性の手には銀色に光る料理に使うであろう包丁が握られており、女性に近づいているところであった。
「な、なんだあれ」
あっけにとられ、茫然と立ち尽くすほかなかった。こんな出来事は空想上の出来事のはずだろう、とどこかで思ってはいたが現実ですでに目の前で起こっているのだから頭が混乱するが、間もなく女性の悲鳴を聞こえ、我に返る。
「きゃあああああああ!!!」
彼はこの声を聴き今までの人生を振り返った。
逃げ続けてきた人生。ありとあらゆる困難をすべて投げ出してきた18年。ここでも見なかったふりをして逃げるのか。俺は今度も逃げてしまうのか。
ふと俺は小さい時のことを思い出していた。
回想された場面は小学生の時の記憶。目の前には鬼の形相をした先生が俺をしかりつけていた。
「どうしてあなたはみんなができるようなことができないの!?」
「そ、それは......」
この時は確か宿題を忘れてきた時だったか。宿題のことがすっかり頭から抜け落ちていて、そのまま次の日になって先生にしかられたのか。
彼はいつも失敗ばかりしていた。何かあるごとに家族や先生に迷惑をかけ、自分に劣等感を抱くようになり、いつしか彼は自信を失っていった。
ここで現実に引き戻された。状況は変わっていない。
「どうして過去のことなんか......」
彼の脳裏には今までの失敗の数々が思い出されていった。他の人ならこうはならなかった。ほかの人がすれば自分は何もしなくていい。今まではそれでよかったが今回、周りにはだれもいない。
ここで俺が助けなければあの女性は確実に殺されてしまうだろう。
「ああ、ううう」
変質者は奇声を上げ女性の首に包丁をあてがった。
彼は迷った。今まで失敗し続けた彼だったが一つ、この人生で学んだことがある。
それは逃げること。逃げることでたいていのことはなんとかなってきた。彼は18年の人生でほとんど逃げ続けてきた。今回も逃げればなんとかなるかもしれない。
「何も見なかったことに......」
「誰かああああああ!!」
「っ!」
状況は急変した。男は包丁を振り上げ女性を突き刺そうとする。ここで俺が動かなければ。しかし、心の傷が足かせとなり足は動かない。
「俺は、俺は......!」
なぜ彼は逃げてきたのか。深く掘り下げれば「人に迷惑をかけたくなかった」ためだった。
自分がなにかすることで人に迷惑をかけるならなにもしなければいい。それが彼が見つけた答えであった。
そして今回、それが彼の足を無意識的に動かせた。なんとしても助けたい。今まで何もしてこなかったが、ここだけ、ここだけは俺が動かなければ。
◇
周囲に肉が避ける音が響いた。と同時に血しぶきが飛ぶ。
「......」
気づけば俺の足は勝手に動いていた。頭で考えたのではない。体が、本能が俺の体を動かしたのだ。なぜ今まで逃げ続けてきた俺がこんなことを。何を思ってこんなことを。
そう思った直後に激痛。いや、激痛すらを超える痛みが俺を襲った。
「ぐ、う」
「え?え?」
女性は自分が刺されたと思ったのだろう、女性は恐怖で染まっているように見えたが、今はそれどころではない。
あわてて腹のあたりを手で触り確認する。すでに感覚はなくなりつつあったが手にはドロッとした感触があった。
それと同時に意識も朦朧とし始めた。そんな中でかろうじて見えたのは赤い液体。おそらく自身の血であろうことは容易に想像ができた。
直後、目の前が真っ黒になり始める。全身のけだるい感覚はすでになくなりつつあった、と同時に襲い来る抗うことのできない睡魔。
「これで、よかったのか」
ここまで逃げてきた人生。しかし、今度は逃げなかった。俺は自分でも何をやっているのかわからなかった。
「あああ......ううう」
変質者は俺を刺して満足したのだろうか。唸り声をあげ、どこかへと行った。
女性は俺を心配して涙ながらに大丈夫であるかを確認するが俺はすでに限界だ。
しかし、俺はこの一件で人生に未練はなくなった気分だった。俺は死ぬだろうが、俺はそれでもいいと思っていた。
こうして彼は女性をかばい、帰らぬ人となった。