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巨大国家からの挑戦状~その第2話~

敢えて記載せず。次回投稿をお楽しみに…。









日報新聞社の社主、鎌田一郎の起床は毎日朝の4時半である。鎌田は朝刊の配達される前に玄関先で正座して、新聞配達のバイクの音が聞こえると、新聞受けに投函された朝刊を朗読するのが日課であった。それは自社の朝刊だけではなく、主要な新聞社の記事に全部目を通すもので、しかも速読して短時間で読破する特技も持ち合わせていた。


生涯現役を公言して憚らず。年齢85歳ではあったが須能明晰であり、未だに新聞協会会長の地位にあり、日報新聞社では社主兼主筆として君臨する怪物であった。


彼によれば、早起きは三文の徳ではなく、金には換算出来ない健康法であり、数十年毎日続けていると言う。役員会は常に健康法や健康管理の話題で鎌田の締めるのが慣例になっているのは社内では、知らぬ者がいない有名な話だ。


隣家に住む姪の由加も勿論、鎌田の早起きは知っていた。鎌田の妻が亡くなってから、由加は日報新聞社の秘書と言う事もあり、また病床にあった由加の伯母の遺言もあり、男寡となった伯父の為に、隣家に移り住んだのである。気難しい鎌田は、家政婦を何人か寡になってから雇い入れたが、誰も長続きはしなかった。鎌田の妻つまり由加の伯母は、その事を予言していた。



鎌田は、酒は1合程度の下子であり、女遊びには無縁であった。政財界には、色と酒を好む人間は多かったが、彼らとの付き合いで知り合った、芸者や高級クラブのママ等とは、単なる客としての関係だった。理由は単純明快である。日報新聞社系列には週刊紙もあり、テレビ局も傘下にあったので、経営者の一員になった時点で、自ら話題を提供する様な真似は出来ないと著書に書いていた。入社から50歳近くまでは、記者であった鎌田はサラリーマン出身の社主であったのた。


鎌田は由加が隣家に住む様になってから、毎日朝食を共にする様になる。

朝刊を速読して、洗面と着替え、そして毎日同じ時間に由加の住む隣家に飛び込んで来るのであった。時間は6時10分である。


勿論、この日も同じ時刻であった。「飯を頼む。」これが毎日の鎌田の姪に対する朝の挨拶である。


由加と昨夜宿泊した山崎佳代は、事前に鎌田が来るのを知っていた。同じ秘書室の所属であった為だ。しかし上杉は由加に聞いておらず、鎌田の声に驚き、「社主が来られたが食事は大丈夫か?」と慌てて由加に尋ねた。「直樹さん。社主は毎日こちらで朝食を取られます。」「どうした二人とも?朝から喧嘩か?…。」「社主おはようございます…。」「ところで上杉…。内田君の総括記事は見事だったな…。的確な分析で他社に先んじた記事を書いている。」「同感です。社主…。」「箸を進めたまえ上杉。飯が済んだら出社する。同行してくれ。」「わかりました。」「何時もの定食屋に出前を頼んでくれ…。由加。人数は関係部署に確認して。朝飯を差し入れる、陣中見舞いに。」「畏まりました。」


その5分後には既に鎌田と上杉は車中の人であった。専用の送迎車で日報新聞社に向かったのである。



日報新聞社に入ると鎌田は、まず政治部に向かった。今回の贈収賄事件の主役の部署は政治部である為だ。「おはよう…。内田君ご苦労だった。総括記事は見事だった。他社に先んじた記事を書いてくれた事に感謝する。副部長以下夜勤明けの諸君お疲れさま…。秘書室から連絡があったと思うが…。朝飯を用意した。食べてくれ。では…。」鎌田巡行と社内で称する関係部署の訪問は、重大な事件事故のある度の社内の恒例行事であったのである。鎌田天皇なる異名は、強面として使われる事が大半だが、社内に目を配る優しさを持っていたのが、鎌田一郎であったのである。


上杉はその両面を経験した男だったのである。左遷と政治部復帰の往復の繰り返しの記者生活が大半であった彼…。始末書の山と同じくらいのスクープの社内表彰。新聞の世界に君臨する巨人鎌田と変人?記者上杉…。不思議な取り合わせではあったが、共に優秀な経営者と記者であったのである。

敢えて記載せず。次回投稿をお楽しみに…。

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