03:思い出したら腹立つ事ってあるよね
主人公は前向きです。死んでもめげてません。
──時は遡り、私こと【白崎 真央】が転生する少し前のことである。
ショッピングモールに居たはずの私は、気が付くと、真っ白な空間に浮かんでいた。友人達はいない。
そこには、ウィンドウだけが浮いている。
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転生するなら?
勇者 or 魔王
どちらかをタップしてね☆
お友達もチャレンジ中☆
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そうか、あいつらもやってるのか、これ。
じゃあ、やるか。まあ、答えは決まってるけど。
「え?勇者に転生?いやいや!そんなの柄じゃないし!こっちのが面白そうじゃん!!つーわけで魔王!!!」
ポチッ
魔王の文字をタップした瞬間、ウィンドウは消えて、代わりに白いおひげをたくわえたお爺ちゃんと、メガネをつけたイケメンが現れた。
「よく、魔王を選んでくれました。僕はヴォルティス、異世界の神です」
「わしはイザナギじゃ!まあ、おぬしは死んじゃったのじゃ。異世界召喚を行った、その余波に巻き込まれて、魂がぶっ飛んじゃったのじゃ!!!」
どんだけハイテンションなんだよ、イザナギ。
まあ、こういう展開には見覚えがあるよね。
ネット小説なんかでよく見る、異世界転生の流れ。あれとほとんどいっしょだ。
「おぬしの思った通りじゃ。全く以てテンプレじゃのw乙じゃの!」
ちょっとむかつくな、このジジイ。
あ、やべなんか腹立ってきた。
「笑ってんじゃねーぞクソジジイ!!!!こちとら、せっかく友達と遊び倒そうとしてたって時なんだから!!毛根絶命しやがれ!!!!!」
根こそぎ黄泉の国に送ってやろうか!!
そりゃ! そりゃ!!
ブチブチブチブチ……
「やめい!やめんか!!やめて、ほんとにやめて!!おひげの毛根絶命しちゃったら、わしただのハゲになっちゃう!!!」
人の不幸に草を生やす方が悪い!
「イザナギ殿、貴方が悪いと僕は思いますよ…すみません、最近面白いことがあんまり無かったみたいだそうなので…」
あっ、イケメンがログインしてきた!
仕方ない、イケメンに免じておひげは許そうじゃないか。ジジイがあの、イザナギなのはもうスルーで、ジジイでいいや。
てか、面白いことって…ホントにただのジジイじゃないか。
「いてて、誰のおかげで日本人が居ると思ってるんじゃ……わし、禿げてない?」
うん、知ってる。国産みとか知ってるから。
祖父にしこたま聞かされた話だからいいです。
「禿げてないですよ、イザナギ殿」
「最近の若い子は酷いわい、お爺ちゃんかなしいぞ……時間もあるし、本題にはいろうかの」
****
「はあ、転生ですか」
「はい、僕があなたの転生を担当します。僕は地球とは異なる世界で、かつて軍神として信仰されていました」
ほう、イケメンことヴォルティスは異世界の軍神だったと。イケメン軍神とか、異世界は最高か。
「でも軍神が…なんでまた私みたいなのを?何の変哲もないただのオタクなんだけど…」
「気に入ったんです。あなたの魂は、軍神にこそ相応しい。平時は穏やかでありながら、有事には猛る竜のごとく荒ぶる…それでいて戦術を忘れない」
ごめんなさいヴォルティスさん…同士に出会ったオタクの習性です。
しかも戦術って、それただの布教だし…。
「それに!あなたは戦道具にも興味を持っておいでです!!女人でありながら!!僕は軍神としてうれしいんです…グスッ…だって、女神の皆さん、揃って野蛮だなんだと……酷い……ズビッ」
戦道具…まあ、刀だの銃だのは他の人よりは知識あるけども。歴史好きだった祖父に色々と布教されたりしたからしかたないよ。
ゲームにもたくさん出て来るし。
でも、理解されないオタクってツラいよね。同類としてもかわいそうだし、死んだなら仕方ない。いっちょ、やってやろうじゃないか!
「まあまあ、泣かないでよヴォルティスさん。転生、してあげるから。私は異世界でなにすればいいの?」
あ、泣き止んだ。よっぽど嬉しかったのね。
「ありがとうございます…!では説明をいくつかさせて貰いますね。まずはあなたが転生する世界のことからですね──」
イケメ…ヴォルティスの解説を要約するとこうだ。
・転生先は、いわゆる剣と魔法の世界
・中世程度の文明
・過去、転生したものはいない
・人間が召喚した者は過去にもいる
・魔王と勇者の敵対がある
・人間が召喚を乱発するせいで世界の魔力が
上手く循環しなくなった
・ダンジョンは魔力回収システムの一つ
「あなたには、魔王兼ダンジョンマスターとしてダンジョンを経営してもらいます。魔王の称号を持ったダンジョンマスターは、より効率よくダンジョンを動かせますからね」
「どんなダンジョンでもいい?自給自足とか」
「ちゃんと魔力を回収出来れば、大丈夫ですよ。昔、人間をダンジョンで飼っていた魔王も居ましたし」
いたのかよ、リアル人間牧場やってたやつ。
***
「…そろそろ時間じゃ」
某神隠しみたいに足が透けてきている。
世界のことは一通り教えて貰った。
ダンジョン作りは向こうでやりながら覚える事になるから、がんばらなきゃ。
「…討伐だけはされないようにしてください。飢餓とかで死んだりはしませんし、コアは再度、作り直せますけど、マスターは殺されたらおしまいです」
「せいぜい長生きするんじゃぞ?餞別がわりに、名前はおぬしに馴染むものを新しくつけておいたぞ」
「気休めですが死ににくい体にしておきましたので、頑張って下さい。あなたの生がよりよいものになることを祈っています」
神様達の言葉が終わると共に、白い空間がどんどん霞んでいく────。
そして私は転生した─。
「って!死ににくい体ってこれか!!!ようやく思いだしたよ!!!!!!ドラゴンボディはそりゃ死ににくいよ!!!!ありがとうヴォルティスさん!!!!!でも、たぶん素材扱いされるよね!!!!!」
ボンッ!
【精神耐性 Lv1 を習得しました】
【ひっかき Lv1 を習得しました】
【ミニブレス Lv1 を習得しました】
神様たちへ、怒ってジタバタしたらスキルが生えました。ついでにブレスも出ました。
女神たちに趣味?を理解して貰えない軍神。その気持ち、分かるぞ。
…なんか、ブックマークがついてる。
ヒイィィ(゜ロ゜;三;゜ロ゜)ヒイィィ
ありがてえありがてえ…。




