見た目の楽しさ
「コレ……が、私のキャラクター………」
千夏は鏡に映る自分を見て、驚愕する。
元々、千夏の身長は165cmとそれなりに高いのだが、チカの身長は140cm程度しかない。
加えて、顔は幼顔である。全ての点で千夏とは真反対のキャラになってしまった。
「折角、種族をオーガにして出来る限りリアルの私に近付けようと思ってたのに、これじゃあ、意味ないじゃない。変なツノも生えてるし。」
千夏はVRMMOというゲームの特性を加味して、キャラクターの設定をした。
《仮想現実》
そう、仮想であっても一歩その世界に自分が足を踏み入れば、そこがもう現実と同じ感覚を味わう事になる。
だからこそ、千夏はよりリアルの自分に近づけてゲーム内と日常生活に大きな変化を出さないようにとオーガ種を選んだ。
「こんな事になるなら、ヒューマンにしとけば良かった。」
ツノをクリクリしながら、いじけるように言う千夏。
ヒューマン種は戦闘力が極めて低い代わりに、生産系スキルの全てを習得する事が出来る。
言い換えれば、一人ではほぼ無力に等しいのである。
そうなると、歩が来るまでモンスター狩りに行く事が出来ず、レベル上げが無理となる。
なら、戦闘力が高く、ヒューマン種に一番見た目が近いオーガ種にした。
その結果が、幼女である。
「……決まっちゃったもんは仕方ないか、時間が勿体無いし、装備を整えて早くレベル上げしに行こう。」
そう言って気持ちを切り替え、チカは外に出た。