商人はどこへ?①
久し振りの投稿です。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします( ̄^ ̄)ゞ
「ふっ!」
と言う掛け声と共に宙を斬る木刀、尋常じゃない程の汗を流しながらフーと長く息を吐き出すレイハルトは力が抜けて行く右手を軽く振りながら木刀を地面へと突き刺した。
「クソ・・・。1時間しか持たないか」
とレイハルトは毒付く、10年前たった30秒しか持たない握力もこの10年間リハビリと鍛錬を毎日繰り返し繰り返し繰り返すことで、ようやく1時間にまで伸ばすことができた。
普通に考えればここまで伸ばす為、想像を超える努力を行って来たレイハルトを褒めるべきだろうが、自分に厳しいレイハルトは10年もやって1時間しか使えないのかと自分に只々落胆の気持ちしかない。
もう少し訓練とリハビリ量を増やそうか・・・。
そんなことを考えながらタオルを取ろうと振り返ってみるとそこには10歳になった娘のシルヴィアがどこか熱っぽい視線を浮かべている姿があった。
レイハルトは長くなった自分の髪を一つに纏め、後ろで縛るとシルヴィアからタオルを受け取る。
「お父様は凄いですね。今年でお歳35になるとは見えませんよ」
「そうか?昔よりは運動能力が落ちている気はするが?」
冒険者の時は今の量を平然とやってのけたが、今ではそうはいかない。自分も歳をとったレイハルトがそう思っているとドタドタと走ってくるアスラの姿が見え思わずそちらに目を向ける。
「オイラもうダメ死ぬ!!」
と汗をレイハルト以上に流すアスラはその場でばたりと倒れる。
「アスラ情けねえなー。たった10キロだぜ?」
「レ、レオは余裕がもしれないげど!オイラにとっては苦痛でしかないんだよ!」
「アスラ情けない」
「そうだよ!10キロぐらい余裕で走らなきゃ」
ケロっとしているユノ、リリー、レオをどこか化け物でも見るような目を向けるアスラ。自分の身は自分で守れるようにするため5歳から筋トレと素振り魔法の練習を行わせてきたが、いまだにアスラは筋トレいやこの訓練自体苦手としていた。
アスラは自分と同じ位の汗を掻くベルリを、まるで同士のように見つめる。
「オイラの苦しみを理解しているのはベルだけだよ」
「んなわけないだろう?こいつがどんだけ走ってたのかお前は知らないのか?最初っから最後まで全速力で来てんだぞこいつ?」
と指差すレオに汗をぬぐって水を飲み息を整えたベルリは答える。
「僕は近遠と弱点がない魔導士になりたいんだ。その為には生半可の努力じゃ足りない。10キロぐらい全速力疾走しても息切れしない体力を身につけないとそれもかなわないだからしてるだけだよ」
「お前は一体どこに向かってるんだよ?」
と呆れ果てるレオと裏切り者を見るような目をするアスラ、その両方を無視するベルリの姿を見た少女3人組はやれやれと首を左右に振り、レイハルトは苦笑してしまう。
「まあ取り敢えず昼食をとろうか。リリー、ユノ、シルヴィアお昼お願いできるか?」
「「「もちろん」」」
と少女達は言うと家に向かって走り出す。
昼食と聞いたアスラはキランと目を輝かせて今日は何かな!今日は何かな!と元気を取り戻す。
「よっしゃ。アスラも元気になったことだし、組手でもやるか」
とレイハルトが提案するとレオが好戦的な笑みを浮かべ拳を鳴らし、ベルリは静かに短刀を模した木剣を2つ取り出すと絶望したような顔を浮かべるアスラ。
各々が各表情を浮かべる中レイハルトは笑みを浮かべて左手を出す。
「それじゃ決まりだな。俺はハンデで左手一本でやるからお前たちは全力で取りに来い」
「魔法は使っていいの?」
と聞くベルリにああと頷くレイハルト。
「魔法はもちろん身体強化も使っていいぞ。もし俺に一撃でも当てられれば俺が叶えられる範囲で叶えてやろう」
そう答えると3人、アスラも目に闘志を燃やして立ち上がった。
「「「絶対だよ」」」
ここぞとばかりに息を合わせる息子たちに苦笑いしながら、レイハルトはスッと表情を変えフーと集中力を高める。
「いつでも来い!」
「言われなくても!!」
そう声が聞こえた瞬間、身体中に魔力を巡らせ全力の身体強化をかけたレオが、まるで突風のような速度でレイハルトに迫る。常人から見ればレオが瞬間移動でもしたのかと見えるがレイハルトにとってはその限りではない。
突き出されるレオの突きを一歩右に体を動かしすれすれで避けるレイハルトは、そのまま無防備になったレオのみぞおちにパンチを食らわす。
パンと言う音を伴いながら後方へ飛ぶレオはそのまま木へとぶつかる。
「みぎゃ!」
まるでカエルの様な悲鳴をあげたレオは苦悶の表情を浮かべ、腹を抑えてその場でうずくまった。どうやら痛みで立ち上がれないようだ。
そんな光景を見て怯えるアスらに少し思案した表情を浮かべていたベルリはコソコソと耳打ちし何かを伝えている。
何かの作戦かな?
と何をしてくるのかとどんどんワクワクしてきたレイハルトの目の前に突如、土煙が飛び込み思わず目を閉じてしまう。
「それ!今だ!」
「ちょっとまっ!」
とアスラが静止するにも聞かず、ベルリは風魔法を使いレイハルトめがけアスラを放つ。
「ふぎゃああああ!!」
と声を上げるアスラは持っていた木鎚をぎゅっと握ると大きく振り上げた。
「取った!!」
とアスラは木鎚を振り下ろす。
視力の回復したレイハルトはスッと左腕を引くとアスラの振り下ろした木鎚に向かって拳を放つ。
ドスン!!と木鎚を通じ手に衝撃の伝わったアスラは、悲鳴をあげると木鎚から手を離し転がる。そしてレイハルトはとどめというばかりにアスラの首に手刀を落とす。
その様子を見ていたベルリは額に少し汗をかきにっと笑みを浮かべた。ベルリにはとてもめずらしい好戦的な笑みである。
「アスラ十分だ。父さん・・・覚悟してよ!」
少し息を吐いたベルリは両手を前に突き出すと魔法陣が浮かび上がり風が髪をなびく。
「突風よ爆発しろ ストーム・バースト!!」
すると爆発的な威力を持った風が魔法陣から発生し、レイハルトに向かって迫る。
顔に笑みを浮かべ迫る風を見るレイハルトの顔は、まるで子供を褒める父親の顔をしていた。
レイハルトは笑みを消すとスッと動き出し、アスラが落とした木鎚を拾うと大きく振りかぶり迫り来る風を地面へと叩き潰す。
その人外的行動にポカンとするベルリは信じられないという顔でレイハルトを見ていた。
そんな目線もどこ吹く風と言うように木鎚を肩に置いたレイハルトはにっこりと笑う。
「さあお昼にしよう!」
この時ベルリは自分の父親の異常な強さに只々笑う事しか叶わなかった。
◇◇◇◇◇◇
気絶したレオとアスラを起こし昼食をとったレイハルト達は午後には各々が自分の好きな時間を過ごす。
レオとアスラ、それにリリーは村の子供達のところへ遊びに行き、その他の残ったレイハルト達は家で趣味や家事に取り組み始めていた。
レイハルトはリビングにある自分専用の椅子に座るとバッグを取り出し、冒険者時代に使っていた武器をテーブルに並べると綺麗な布で丁寧に吹き、武器の手入れをし始める。
隣には本を読むふけっているベルリと足元には普通の大型犬サイズに戻ったフェルが大きな欠伸をしながらグググと寝ていた。
レイハルトにとって武器とはその持ち主の心が映し出しているものだと思っている。
今までのレイハルトの経験の中で戦って弱い奴は大抵武器の手入れを怠っている者が殆どで、強者やこれから強くなる者などはやはり自分の武器を新品同様とは言わないまでも綺麗に手入れされているものだった。
いつものように心を込めて武器を吹くレイハルトは綺麗になった武器を眺めると頷きその場で一振りして感触を確かめる。
「よし・・・」
「ごめん下さ〜い」
とレイハルトが呟くと玄関の方から見知った声が聞こえてきた。
「うん?もうそんな時間か?」
よっこらしょと深く座り込んだ椅子から立ち上がり玄関へと向かうレイハルトは、少し痛む腰を摩りながら自分ももう歳を取ったなとしみじみと感じてしまう。
玄関のドアを引きその人物を見てみるとそこにはやはり見たことある赤毛の少女がにっこりと笑顔を浮かべながらこちらを見上げていた。
「あ!レイハルトさんこんにちは!今週の分お届けにきました!」
「あ〜。ミアちゃんありがとう。いつもすまないね」
「いえいえ!レイハルトさんにはお肉やらいろんなことで、お世話になってますので!これくらいどうってことないです!」
「ははは。それで味の方はどうだい?」
「はい!いつもと変わらず美味しいですよ!特にチーズは渾身の出来になりました!」
「ほうほう!それは楽しみだな」
ミアの一家は代々酪農で生計を立てている一家でこうして毎週チーズやバターなどを作っては村中に配っており様々な料理を作るレイハルト達にとってはとてもありがたく、いつも料理に活用していた。
「今度チーズを使った料理を作ってみるから家族で家に来なよ。ご馳走するから」
「いいんですか!ありがとうございます!」
「うんうん。ところでエマちゃん王都からくる商人のリンダさんはまだ来ないのかい?」
「リンダさんですか?」
リンダとはこの村に王都の物や新聞、配達便などを運んでおり、その他にもこの村の野菜や動物の肉、エマの家のチーズ類なども買い取ってくれる商人のことで、月に2度ほどくるのだがいつもの時間になっても来ないのでレイハルトは少し心配になっていた。
エマは少し考え込むように腕を組む。
「う〜ん・・・。確かにまだいらっしゃらないですね。でも前も夜頃村に着いたこともありますし大丈夫じゃないですか?」
確かに1年前もそんな時はあったのだが、レイハルトには何か嫌な気がしてならないのだ。「そうか・・・」と未だ納得のいかない表情を作るレイハルトだが次の瞬間にもその表情は一変した。
「「エ!エ!エマさん!こんちゃす!」」
上ずった声が辺りに響き渡る。
そこには頬を赤色に染めるレオとアスラがこれでもかと慌てている姿とそれを白けた目で見るリリーの姿があったのだ。
「こんにちはレオくん、アスラくん、リリーちゃん」
レオとアスラは自分の声を呼ばれただけではしゃぎまくりリリーは笑顔で挨拶を返す。
見ただけでレオとアスラの2人がエマを好きなのだと周りにモロバレで、そんな2人の態度と分かりやすさにレイハルトは思わず苦笑を浮かべてしまう。
「エマさん!その荷物重いでしょう?俺も配達手伝いますよ!」
「ず、ずるいぞ!おいらだって手伝います!」
元気いっぱいに大声で言う姿を見て可笑しそうにコロコロと笑うエマ、とその笑顔に照れる2人。
これはまだまだかかりそうだな〜。俺もこんな時あったけ・・・。
と思わず昔を懐かしむレイハルトは背中の衣服を掴まれた感覚を覚えたので、首を動かし後ろを見てみるとそこにはベルリが、明らかに不機嫌な顔を浮かべレイハルトの衣服を掴んでいた。
「ベルリどうした・・・?」
レイハルトが尋ねるとレオ達を睨みつけたベルリはいつもよりも低い声を出す。
「・・・うるさい。読書に集中できないだろう」
これは明らかに怒っているなとレイハルトはまた苦笑する。
「なんだよベル!エマさんがいるんだ挨拶するのが礼儀だろ!」
「そうだそうだ!」
と怒り気味に言う2人に対し未だ不機嫌なベルリ、それに対しエマと言うと少し頬を赤く染めてベルリを見つめていた。
「べ、ベルくんこんにちは!今日はなんの本読んでるの?」
「・・・」
エマの質問に対し普段から人見知りするタイプのベルリは恥ずかしいのかレイハルトの影に隠れてしまう。
「お前!エマさんが質問してるだろうが!」
「そうだぞベルちゃんと答えろ!」
と言う2人に対しエマは少しだけ熱っぽい視線をベルリへと向けていた。
そんなエマの雰囲気にベルリとエマを交互に見る2人からピキッとヒビが入ったような音がするとベルリに詰め寄った。
「なんでお前ばっかモテるんだよ!」
「そうだそうだ!おいらだってもてたいのに!」
と歯軋りしながら迫る2人を軽く引き気味に見つめるベルリは掴む衣服をさらにギュッと握って答える。
「知らないよ。興味ないし・・・」
その答えに切れた2人は鬼気迫る表情でさらに詰め寄った。
「「てめえ表でろ!相手になってやる!」」
理性を失っているモテない2人、その態度に問題があるんじゃないかなとレイハルトは思いながら詰め寄る2人をなんとか引き剥がす。
「落ち着け2人共。エマちゃんが居るんだぞ?」
とどうにか2人をなだめようと声をかけたレイハルトだが、それも次のエマの台詞で台無しになってしまう。
「ベルくん!今度2人でピ、ピクニックでもいかない!お弁当作るから!」
「嫌だ」
顔を真っ赤にし決意したように言ったエマの提案を即答で返すベルリに完全に切れた2人は殴りかかろうと胸倉を掴み拳を作る。
「「歯食いしばれ!その顔ぶん殴ってやる!!」」
「うるさい!」
と今にも拳を振ろうとした家の奥から大きな声が聞こえて来た。その声に拳を途中で止めたレオとアスラは同時にその顔が青ざめて行く。
「せっかくお父さんのために服を作ろうと頑張ってたのに失敗した・・・」
その黒いオーラに震えだす2人、奥には目を見開きホラーちっくになったユノがゆらりと立っている。
「2人にはお仕置きが必要。覚悟して」
「嫌だ!!!!」
とその雰囲気かはたまた過去のトラウマなのか耐えきれなくなったレオは踵を返し逃走を図ろうとするが、いつの間にか背後に移動したユノが首に手刀を下ろし気絶させそれを阻止した。
その光景を悲鳴をあげ震えながら見るアスラに首をクイッと動かし付いてくるように促したユノ。
アスラに反抗出来るはずもなく生気を失ったような目を浮かべながらレオを引きずるユノと共に奥の部屋へと消えていったのであった。
「ははは・・・」
と皆が苦笑し「私様子見てくるね」とリリーが家の中へと入る。
レイハルトはそっとベルリの頭を人撫ですると優しい笑みを浮かべた。
「ベルたまには行ってあげなさい」
「父さん・・・」
「父さんのお願いだ頼むよ」
とレイハルトが困ったような顔で頼む。
「分かったよ・・・。でも一人じゃ嫌だ」
「ていうんだけどいいかな?エマちゃん」
ポカンとしたエマは直ぐにブンブンと頭を縦に振ると嬉しそうな顔を浮かべた。
「うんうん!みんなの分のお弁当作るよ!ありがとうベルくん!」
とベルリの頬にキスをしたエマは恥ずかしそうな顔を浮かべながらレイハルトの家をあとにする。
ベルリはキスされたところを撫でると顔を真っ赤にして行く、こうやって子供は成長して行くのかとレイハルトは思いながらベルリのことを微笑み見守るのだった。
場面変わって夕方。
子供達が10歳となり料理の仕方などを覚えさせるため朝、昼、晩と料理当番を設けたのが数ヶ月前。最初は料理を焦がしていたものの今では皆慣れたもので、調味料など様々な工夫を施すようになっていた。
今日の夕飯当番はレオ達男子組で何を作ろうかと話し合っていた頃だった突如ダンダンダン!とドアをノックする音が家中に響いたのである。
何事かとレイハルトが玄関のドアを開けるとそこには頭から血を流し憔悴しきった男性がいたのである。
「ダンさん!どうしたんだこの傷は!」
それは商人のリンダを護衛するために雇われていた傭兵のダンと言う男だった。
フラーと倒れそうなダンにレイハルトはすかさず腕を担いでリビングに移動させると椅子に座らせる。
「シルヴィアは水!リリーとユノは2階から包帯とタオルを持って来るんだ!」
「「「はい!」」」
と迅速に行動する娘達、レイハルトはダンの傷口を見て青黒く変色している事に気がついた。
「これは毒か・・・」
すぐさま解毒しなければまずいと携帯しているマジックバッグから、体力を回復するポーションと解毒剤を取り出したレイハルトはダンにそれを飲ます。
このダンという男はかつてA級冒険者としても活躍していたとあってかなりの実力者のはずだが、こんなに傷を負うとはどんな目にあったのだと気になるレイハルト。
それに一緒にいるはずのリンダの姿も見えない事からこれは由々しき事態なのでは?と焦りを募らせる。
「お父様持ってきました」
と水と包帯などを受け取ったレイハルトは感謝の言葉を述べるとダンに少しずつ水を飲ませて行く。
「んぐんぐ・・・。ぷは・・・。あ、ありがとうございますレイハルトさん」
「ああ。こんなのどうってことないさそれよりもダン。リンダさんは一体どこに行ったんだ?」
それを聞いたダンは焦るようにレイハルトの方を掴む。
「そうだった!こんなことしてる場合じゃないんだよ!リンダさんが大変なんだよ!」
「落ち着いてくれ一体何が合ったて言うんだ!」
「早く行かないとリンダさんが・・・リンダさんが!ヒュドラに襲われたんだ!」
「ヒュドラに襲われた!?」
レイハルトは思わず大声を上げてしまった。
ヒュドラとは魔物の一種で三頭竜とも呼ばれており、極めて獰猛その吐く息は猛毒で、目が合ったもの石化してしまう能力も保持しておりA級冒険者が数人がかりでようやく倒せる程危険な魔物なのだ。
ヒュドラは普段湿った暗い場所を好み洞窟の奥などに巣を作っているはずなのだが・・・。
とレイハルトは少し違和感を覚えるが今はそんな事をしている場合ではない。
「ダンこれは一刻を争う。早くリンダさんのところへ案内してくれ」
「父ちゃん俺も行くぜ!」
「私も行きたいです!」
と子供達が手を挙げるがレイハルトは無言で首を振って、子供達の肩に手を当てた。
「ヒュドラはとても危険な魔物だ。それに夜の森は何が出るか分からない。お前達は家で待ってなさいこれは命令だ!」
ションボリする子供達をよそにレイハルトはマジックバックから胸当てと籠手類を出して装着し腰にミスリル銀で出来た剣をさすとフェルを人撫でする。
「フェル子供達を頼むぞ!もし俺に何かあればあとは頼む!」
『分かっている。レイよ死ぬなよ』
コクリと頷き指笛を使って納屋にいた馬を呼び出した。
「またお前の力を借りる事になったな」
「ブルルルッッ!」
と何処か嬉しそうに声を出す馬、それでは行こうかと馬に乗り込もうとしたとき子供達が駆け寄ってきてレイハルトを不安気に見上げてくる。
「父ちゃん置いてくなよ!」
「私たちを置いて行かないでください!」
「置いてくなんて嫌!」
レイハルトは困った様な表情を作ると子供達を落ち着かせる為にそっと抱き寄せた。
「心配なのはわかる。でも俺はリンダさんを助けなければ行けないんだよ。大丈夫だ!俺はあの龍だって倒したんだぞ?だから約束する必ず戻るって。俺が約束を破った事なんてあったか?」
とレイハルトが子供達に聞くと皆首を揃えて横に振る。
「だろう?だから大丈夫だ必ず戻るから」
とレイハルトは子供達を放すと一人一人の頭を撫でて馬へと乗り込んだ。
「フェル頼むぞ!ダン急ごう案内してくれ!」
馬を走らせ先行するダンの後を追いかけレイハルトも馬を蹴る。背後に待っている者たちがいると感じながら。
定期的に出せる様頑張ります( ̄^ ̄)ゞ
次回商人はどこへ?②よろしくお願いします