月姫
[前回までのあらすじ]
帝里達は玲奈を迎えに来たが、月法という男に先を越された。(28字)
約500倍圧縮…逆に前回はそんなに引き延ばしてたんですね。家のカ○ピスでもさすがにもっと濃い笑
あと内容変更についてですが、前回の玲奈を襲った頭領の台詞が一部変化したぐらいで、大きく変わることはありませんでした。
月法と玲奈達が村を離れ、数ヶ月の月日が経った頃である。
「へーぃ、あーん、きょ~~!!!!」
道の真ん中に立ち、両手を空に突き上げて、玲奈が天真爛漫、元気いっぱいに叫ぶ声が道中に響き渡る。
「ひろーーーい!!人がいっぱい!!!!」
「こ、これ玲奈ッ!待つのじゃ!!!」
道幅が80mを越える朱雀大路を楽しくて堪らないといった様子で、勝手にどこまでも行ってしまいそうな勢いで縦横無尽に駆け回る玲奈に、翁が牛車から慌てて降りて、玲奈の後を追う。
この朱雀大路は、このときの都、平安京のメインストリートとも呼べる大通りである。
世の乱れの影響の受け、平安京内でも荒廃が見られる場所もあったが、朱雀大路はなんとか威厳を保っており、今日も多くの人で賑わいを見せていた。
そんな人が多い場所で、この時代に珍しい金髪で、更に‘世界の警告’を持った玲奈が走り回るものだから、
「なんじゃあの子は…」
「まぁ!可愛い!」
「しかし、あの髪は一体…」
「今、月法様の乗物から出てきたぞ!?」
「月法様じゃあ!月法様がお帰りになったぞ!」
「月法様はあの子を探しに旅を…?」
やはり瞬く間にそこら中で騒ぎになってしまい、
「…こうなるから目立たないように車を、わざわざ都の外で待っておったというのに…」
騒ぎに巻き込まれ、都の民から噂された月法が、牛車の上で嫌そうな顔で頬杖をつき、そっぽに向く。
一方、さすがに自分が皆から注目されていることに気づいた玲奈は足がすくんでしまい、ようやく追いついた翁に抱きかかえられて回収されていく様を見て、都の人々はあれやこれや言っていたが、結局皆、
「気になる…」
という感想は一致して全員が足を止めて玲奈に釘付けになっており、
「……ま、これが最初なら先ず先ず、か」
そんな民衆を月法は目を細めて横目で見ながら、フッと意味ありげに笑うのであった。
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「ほら、着いたぞ」
「こっちの方が広い!?あっ!池だー!!」
しばらくして、ようやく月法の家に着き、皆に月法が紹介するや否や、玲奈は目を輝かせて庭に向かって全力で走り出す。
「…けっ、もう少し驚かんか、つまらんのう…」
出迎えに来た家人や下男に驚いたものの、壮大な屋敷を気に留めることなく無邪気に池の魚を目で追っている玲奈に、月法は面白くなさそうに鼻を鳴らす。
月法の屋敷は、素朴ながらも都で屈指の豪華さを誇る素晴らしい寝殿造りなのだが、更にそれを何段も重ねたような千恵羽邸に住んでいた玲奈は、少し相手に悪かったようである。
「ほ、本当に私達もこんな所で働かせていただけるのでしょうか…?」
「いやいや、働く必要なんてないぞ」
「いやっ、そんな滅相も…!」
「れいなの育て親なんだから当然じゃ。これからは我が家だと思ってくれ」
一方、恐れ戦いて牛車から出てこない翁と媼の様子を見て、月法は満足そうに頷きながら答えると、自ら二人が牛車から降りるのを手伝ってやる。
「それより…その育て親だの、翁媼呼ばわりだの、気になっていたのだが…
その…本当の親ではないのか?…」
「……はい。れいなは山で見つけた赤子でして、私らの子ではありません…」
「山で…?でも、赤子から育てているなら、もう親としても良いと思うが…」
「いえ、それが見つけた日に、村に奇妙な服を着た黒髪の男と青髪の女の方が来て、れいなを探していたようでして…
きっと、私達の喜び様を見て言い出せなかったのでしょう…なので、彼らがいつ来ても良いようにと、親とは分けることにしたのです。」
「……ほんと人が良いというか、都合の良い翁と媼だな…」
二人の配慮に、もはや尊敬の念すら覚えた月法が目を細めながら、感嘆の吐息をこぼす。
「なので、私らのことは気になさらなくても…」
「いや、それでも歓迎するが…」
申し訳なさそうに答える翁と媼を手で制しながら、ふぅむと月法は唸り声を上げると少し考え込み、一応、その男女の特徴を頭の片隅に留めておくことにする。
「ねー!ねー!」
牛車から降り、改めて屋敷を見て腰を抜かす二人の驚き様に、月法はすっかり悦に入っていると、玲奈に後ろから声をかけられ振り返る。
「なんじゃ」
「ねぇ、お寺に住んでるんじゃないの?お賽銭は?鳥居は置かないの!?」
「…鳥居は大体神社じゃな」
まっ、まだその歳じゃあな、と月法は呟きながら、玲奈と目線を合わせるようにしゃがみ込んであげると、言葉を続ける。
「それに…わしは還俗というて、坊さんではなくなったんじゃ
まぁ、今は公卿や殿上人といったところかの」
「…それって凄いの?」
「おぉ、偉いぞ!!
ふふんっ、なんてったって位階は正一位じゃからな!すごかろ!?」
「ふーん…」
知らない言葉が色々出てきて、途中で興味をなくしたのか、自分から尋ねておきながら玲奈は適当に相槌を打つと、月法を置いてさっさと次は屋敷の探検へと走り去って行ってしまう。
「……。」
かつての玲奈の片鱗を窺わせる、そんな身勝手さに月法は呆れて暫く立ち尽くしていたが、諦める様に弱々しくため息をつくと、玲奈の後を追って翁と媼と共に家の中に入っていくのであった。
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「ふぅ~、終わった終わった…」
それから数時間後、旅から帰って来た片付けや挨拶などを終わらせ、ようやく一息をつくことの出来た月法が、屋敷で一番大きい建物、寝殿のほとんど物の置かれていない母屋(建物の中央)の真ん中に畳を無造作に置き、その上に寝そべる。
藍色の、袍という、よく将軍や貴族の肖像画で見られる、前が開かなそうな着物に、足先がぶかぶかの、袴のような指貫を履いた、直衣という格好をした月法は、達成感に満ちた表情で背中や頭からの畳の感触を味わうように目を閉じる。
「-!…さて、始めるか…」
ついそのまま寝てしまいそうになり、慌てて身を起こした月法は畳を増やすよう家人に指示し、自分は服の乱れを整えながら、玲奈達を呼ぶ。
「なにーー?」
しばらくして、別の建物で休んでいた玲奈がドタドタと廊下を渡って、月法の前に現われる。
玲奈は袴に褻の汗衫という色鮮やかな着物を何着か重ね着て、髪も小綺麗に整えられており、見違えるように気品高く女の子らしくなった姿に、月法もほぅと思わず感嘆の声をあげる。
そして、玲奈の後を追ってきた翁と媼も、月法のようなしっかりとした衣服に変わっていたのだが、逆にこちらは服が浮いて似合っておらず、困惑している本人達の顔も相まって、月法はつい声を上げて笑ってしまう。
「まぁまぁ…とりあえず座れ」
笑いを噛み殺しながらも月法は自分の前に置かれた畳に皆を勧め、一つ前に玲奈、そしてその後ろに翁と媼が並んで座る。
「さてと…」
とりあえず全員が揃い、ふと京特有の寒さにブルルと身を震わせた月法が火桶を用意しつつ、じっくりと三人の顔を見る。
「れいな、さっきわしは殿上人になったと教えただろ?」
「うん、正一位。」
「ほぉ、覚えておったか…
で、子供が欲しいんじゃが、もう歳だし嫁も取る気もないしで、いっそ、よそから貰い受けようと思ってるのじゃ」
「………おとくちゃんとかいい子だよ」
「友達を売るな」
なんとなく察したのか子供ながらに、はぐらかそうとする、そのいじらしさに月法は少し苦笑する。
「わかった、はっきりと言おう。れいな、わしの子にならんか?」
「……いやだ」
「れいな!!?」
玲奈の返事に翁が血相を変え、慌てて玲奈に詰め寄るが、言われた月法は眉一つ動かさず、こちらを真っ直ぐと見てくる玲奈と静かに見つめ合う。
「なんてことを…
よいか、れいな。月法様の子になれば幸せな生活が決まっているんじゃ…翁の言うこと、聞いてくれないか?」
「…うん、っ…はい…ごめんなさい」
「どうして…」
「…子になるなら翁と媼の子がいい、です…」
「ッ!!-」
「じゃろうなぁ…」
「月法様!!?」
少し涙ぐみながら頭を下げる玲奈に翁は一瞬怯むが、すぐに説得し直そうとした瞬間、そうだと言わんばかりに月法が目を閉じて頷き、翁は言葉を失う。
「貧しい家では口減らしに子を売りに出し、裕福な公家ですら実の兄弟で争っているような時代に、血も繋がってないのに、なんとあはれなることか…れいな、よくぞ申した!!」
いつしか翁も涙を浮かべてお互いの手を握っていたその姿に、しみじみと月法が気迫の籠もった声で語り、カッと目を見開いて、興奮したように膝を打つ。
「しかし…養女の件は一体どうするのですか…?」
「むむむ、確かに…さて、どうしたものか…」
恐る恐る月法に尋ねる翁に、月法は困り果てたように再び目を閉じて考え込み始め、玲奈が不安そうに見守る。
「…………そもそも、義父は一人という決まりがあったか?」
「ッ!?まさか…!!?」
ぽろりと漏らした月法の疑問に、考えが分かった翁がハッと月法の方へ顔を上げ、月法は静かに頷き返す。
「わしも詳しい決まりを知らんが…何人も養子が取れるなら、何人も養親がいてもいいはずじゃ。
しかも、‘養子’と‘猶子’とかいう、ほぼ同じの、すごーく都合の良い言葉があるしな」
ニッと悪戯っぽく笑ってみせる月法に、玲奈の顔がパァァとみるみる明るくなっていく。
「そうじゃの…定義的にも、漢文の語意的にも、『わしの‘養女’で、翁と媼の‘猶子’』で使い分けて通すのがいいか。
どうじゃ、れいな!?これなら良いか?」
「うん…!!ありがとう!!!」
片目を閉じて聞いてくる月法に玲奈が嬉しそうに頷くと、泣きながら媼と翁が玲奈を抱きしめ、ようやく落着と月法が胸をなで下ろす。
「とはいっても、世間的にはわしとれいなの方が知れ渡るから、他の者が混乱せぬよう、今まで通り、翁媼呼びで頼むぞ。わしは…まっ、何とでも呼ぶがいい
さて、れいなの呼び名じゃが……ふむ………わしの官職『月法』から一文字取って、‘月姫’…というのはどうじゃ」
「月姫…とても良い名だと思います…!」
月法の提案に翁も手を叩いて、たいそう喜び、媼も微笑みながら静かに首を縦に振るのを見て、「よしッ」と声をあげて月法が立ち上がる。
「報告は…面倒だし、占いの結果が悪かったということで明日にするか
ならば…」
そう言って、ポンポンと月法が手を叩くと、スゥと奥から何人もの女性が玲奈達の前に現われる。
「この方々は…」
「彼女らはれいなの女房(侍女)候補、つまりは‘先生’ じゃ」
「そんなッ、恐れ多いことでございます…!」
女房の多さに圧倒され、慌てて首を振って頭を下げる翁に、月法は立ち上がって近寄ると、ぽんと静かに手を翁の肩に置く。
「よいか…れいなが最も良い婿を迎えて幸せに暮らすには、大切なことなのじゃ
そして、そのれいなの成長ためには良い教養と‘親のような存在’が必要になってくる。なによりれいながそう請うたのが証拠じゃ。翁、手伝ってくれるか?」
「はッ、もちろんでございます…!!」
月法の言葉に心を打たれ、改めて平伏して了承する翁に、月法は嬉しそうに頷くと翁の肩をゆっくりと擦る。
「まぁまぁ、本格的な教育は明日からで、今日は今の状態を知る腕試しだと思ってくれ
それでは始めるぞ!」
そう母屋にいる全員に伝えると、さっそく初めての授業が始まったのであった。
しかし…
「むむむ…やはり、そう上手くいかんか…」
母屋に残った月法、翁、媼が女房から玲奈の様子を聞き、月法は困ったようにため息を漏らす。
まずは最重要といってよい和歌について勉強が始まったのであるが、正直な話、あまり芳しい結果ではなかった。
「まず音数律や語感と音の感覚がまだないようでして…。また、歌も全然知らないご様子で…」
「うーむ…わしも人のこと言えんが、それは不味いのぉ…」
女房の報告に月法は頬杖をついて顔を渋めながら、ハァと再びため息をつく。
「私らが至らないばかりに…申し訳ございません…」
「まぁ、ある程度は覚悟しておったから、そう気に病むな。
これから巻き返していけばよい、そうだろ?」
「はい。野山で暮らしておられたからか、少し素直すぎるものの感情豊かで趣深き方だと思われます。」
「なら、良いか…」
奥の部屋から聞こえる、穏やかな箏の見本の調べに心が落ち着いたのか、恐縮している翁を宥めながら、月法はなんとか希望を見出す。
そして、気を取り直し、皆が今後について考え始めたときであった。
「た、大変でございます…!!!」
先程から聞こえる美しい音色をかき乱すように、トタトタと奥から別の女房が息を切らして母屋の中に入ってくる。
「つ、月姫様が…!!」
「なんじゃ、騒々しい…せっかくの音色が-……待て、これは誰が弾いている??」
女房の慌ただしい登場に眉をひそめた月法であったが、その女房が箏担当の大人であったことを思い出し、思わず身を乗り出す。
しかし、呼吸が整わず、目だけで訴えてくる女房に、月法は反射的に立ち上がると、信じられないといった表情で何かに取り憑かれたように音のもとを目指して走り始める。
すぐに他の者も月法の後を追い、皆がドタドタと音を鳴らして廊下を走るが、箏の音が先程と違い、月法の中で不気味なほど鮮明に、より美しく聞こえて、その感覚に月法はゾッと悪寒を走らせ、脂汗を垂らしながら先を急ぐ。
「-ッ!……まことか…」
別棟の対屋に辿り着いた月法は、そのまま母屋に入った瞬間、その目の前の光景に言葉を失い、その場に立ち尽くす。
そう、調べの主はやはり玲奈だったのである。
自分よりも大きい箏を、身を乗り出して無邪気に弾くその姿は、お転婆な7歳児とは思えぬほど、とても優雅で大人びていて、まるで巻物に描かれたような光景に、皆息を呑む。
そして、少しノってきたのか、さらに身を乗り出すと、軽快で楽しげな曲調に変わっていき、その誰も聞いたことのないようなポップな音楽に、月法までも少しずつ惹き込まれていく。
「~♪…あだッ!?…っ~~~!!」
しかし、さすがに調子に乗りすぎて、弦を指で激しく弾いてしまい悶絶する玲奈に、周りの者はハッと正気を取り戻し、女房が急いで看護する中、月法は玲奈から目が離せないまま、翁の方に近寄る。
「…これはお主が教えたのか…?」
「いえ、れいなが箏で遊ぶのは初めてで、私達も驚いております…」
顔を蒼白させて、痙攣するかのように小刻みに顔を振って否定する翁に、月法は応える言葉もなくし、静かに玲奈を見守る。
そして、この後も、作法や玲奈の能力を測るテストは続いたのだが、それが更に月法を驚かせるものとなった。
「なんと…他も出来るのか…」
「はい…。少し変な字を書きますが、あの歳で‘かな文字’の読み書きも出来ております…!」
「作法や振る舞いも、最初は嫌がっていて心配しておりましたが、一度なさると、教えずとも上品に振る舞われており、後は少し修正をするだけでございます!」
「そして何よりも見たことも聞いたことものないような、楽しげで滑らかな舞と調べ!
なんと多才で素晴らしいお方でしょう!!」
流石は月法様のご息女、見事な教養でございます、と口々に、少し興奮気味に玲奈を賞賛する女房達に、もちろん、そんなことを教えた記憶もない月法と翁達は困惑するばかりで、
「ふーむ…相変わらず変なやつじゃ…」
と、月法も特別な不思議がるばかりである。
しかし、実は多才なのでも、特別なことなのでもない。全て、前世で父親から受けた数々の習い事の結果なのである。
現世でもこの歳あたりから、父親が玲奈を淑女にすべく、様々な習い事を始めており、その影響が色んな形になって現在のれいなにも表れているのだ。
さすがに和歌までは習わせなかったようだが、他のことは活きて、これからの玲奈の人生を大きく助けていくことになり、父親まさかの千年越しのファインプレーだったである。
因みに、先程からもてはやされている曲と踊りは、朝の少女向けアニメのもので、そりゃ月法たちが知るはずもない。
とにかく、そういった事情を知らない大人達は騒ぐばかりで、「きっと京で噂になる」と皆の嬉しそうな燥ぎ様に、月法も、
「思わぬ拾いものをしたものだなぁ」
と、満足げに顎を擦っている。
「これで明日には素晴らしい殿方のお耳に止まりますね!!
年頃になったら、きっと多くの男がれいなを見初めてくれるでしょう…!」
「…そうじゃな。あ、そうじゃ」
嬉しそうに語る翁に月法は頷いて答えると、何か思い出したように懐を漁りながら玲奈のもとに近寄る。
「れいな、その、褒美と言ってはなんだが、これをやろう」
「なーに?」
「まぁ、お守りみたいなもんじゃ」
そういって取り出したのは、まるで三日月のような白い勾玉が付いた首飾りで、それを玲奈の前に掲げて見せる。
「…まん丸がいい」
「そう文句を言うな。まぁまぁ、ほら、わしがつけてやるから」
形に不満を漏らすものの、やはり女の子。うきうきで待つ玲奈に、月法が首飾りの紐を解いて、玲奈の首に腕を回し、つけてあげようとしたときであった。
「「-ッ!!!?」」
勾玉が玲奈に触れた瞬間、触れた場所がバチッ!!と大きく音を立てて光り、勾玉が激しく弾けて、月法の手から離れて床に転がる。
あまりの突然の出来事に皆が呆気に取られる中、月法だけは床を這うように夢中になって追いかけ、勾玉を拾い上げる。
「…!?」
拾い上げた勾玉の様子を見て月法の血相が変わるが、周りが自分に注目しているのと、なにより、怯えた目でこちらを見る玲奈に、あわてて首飾りを懐にしまいながら立ち上がる。
「ど、どうやら、ちと間違えたようじゃ!れいな、もうしなくてよいぞ!
…さっ!勉強はこれぐらいにして、夕飯にしよう!!今日は豪華にするぞ!!」
「やったぁ!!」
飛び上がって喜ぶ玲奈に、屋敷の空気も元通りになっていき、月法も周りに合わせて顔に笑顔を貼り付けたまま、こっそり懐を覗き込む。
「…ご丁寧に解除までしおって…」
どこか悔しげに月法は呟くと、気づかれぬよう玲奈ではなく虚空を少し睨みながら
「…まったく、思わぬ拾いものをしたわい」
と、再び呟くと、自分の部屋に帰っていくのであった。
今回で累計50話となりました。ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!
そして…
50話目にして初の主人公完全不在です!!!!笑笑
これまで無理矢理出していたのですが、名前すら出てこないのは初めてです…!
最後に出そうかとも思いましたが、現代人の帝里が出ると、今回の‘平安感’が消えてしまうので、見送ることにしました…帝里、ごめんよ




