9月15日
まさか本当に9月15日に出せるとは、少し感激…!
まぁ、西暦の方が予定より二つほど違うんですけどね()
さぁて、僕が一番書きたかった章なので、もうドキドキしまくってますっ…!
頑張っていきましょう!
では、五章開幕です。
ある日の午後のことである。
「ねぇねぇ!!!!今日は何の日だと思う!!??」
玲奈が突然、実況サークルの皆が囲む長机の前に立ち、堂々と胸を張り、高らかに告げる。
いきなりの出来事に、羅瑠と情音、双治郎は何事かと、ぽかぁんと面食らった顔で玲奈を見つめるが、帝里、イブ、京介はどこか疲れたような表情で呆れる。
千恵羽邸組の三人は、朝からずっとテンションの高い玲奈に付き合わされており、ここまで玲奈から口に出すことはなかったが、もう嫌というほど分かりきっている。ヒントがあげるとすれば、今日はタイトルにあるように9月15日である。
前に情音の父親と初めて対面したのが、大体6月の出来事であり、それから事後処理や、実況サークルの再開、夏休みに、その間に初めてのサークル合宿、海や山に行ったなど、面白そうな話、語りたい話が盛り沢山なのだが、玲奈からしたら、そんなことお構いなし、全カットのようである。
「フッフッフッー、それはね…この私の-」
「京介と帝里の聖剣戦予選のちょうど1ヶ月前だな」
「…え?」
ということで、部屋に秋風が流れ込むなか、玲奈が高らかと正解を述べようとするが、途中で羅瑠から全く予想と反する解答が帰って来て、玲奈は思わず聞き返しながら、唖然とする。
「夏の聖剣戦と聖銃戦はあの事件で、世界中で中止になったからな~。双治郎は大丈夫か?」
「あ、うん。今のところ襲われてないかな…」
あの事件とは、聖剣戦選手、聖銃戦選手暗殺事件のことであり、去年の聖剣戦、聖銃戦に出場した選手が次々と殺害されたのである。
被害者の多くは、双治郎と同じような超人類といわれる、魔力により強化された人々であり、そんな強靱な人間が次々と殺されていることに、世界中が混乱し、急遽、試合の開催は中止されたのである。
とはいえ、警戒のおかげか、最近は鳴りを潜めており、開催を求める声が多かったことから、国の代表だけはひとまず決めるようである。
「まぁ、うちには帝里がいるし、襲われたって一瞬で返り討ちだろ
それにしても、双治郎、気合い入ってるな!」
「うん!!去年はギリギリ入れたけど、今年は世界一になる!!!」
「えっと、あの…ちょっと…」
羅瑠の言葉に、凄まじい気迫で答える双治郎に、話を切り出したはずの玲奈は気圧され、話から置いていかれてしまっている。
「ほぅ!帝里の前で言うとはなかなかだな!!
じゃあ、今日の動画は『一ヶ月後聖剣戦に向けての意気込み』で決まりだな!!」
「…うん…そうね…」
素なのか、わざとなのか、羅瑠によって全く違う方向に話が進んでしまい、完全に意気消沈し、しょげている玲奈をみて、帝里は大きくため息をつくと、口を開く。
「お前の誕生日だろ」
「-ッ!!…もぅ…分かってるなら早く答えなさいよっ」
途端に玲奈の顔がパァァと明るくなり、嬉しそうに胸を張り、ようやく先程の勢いを取り戻す。
「あんなクネクネして…誕生日を覚えてもらえているのが、そんなに嬉しいものなんですかねぇ」
「さぁ…?そういや、イブの誕生日って12月24日?」
「!?…ッ…エヘヘ…確かに嬉しいものですね…!でも、私、誕生日について言いましたっけ??モミから…?」
「いやぁ別に?ただお前の両親って単純だなぁ、って思っただけだよ。」
未来でもまだクリスマスが存在するのかと、どうでも良いことに帝里が感心していると、隣に座っていた羅瑠が立ち上がり、玲奈の隣に並ぶ。
「そうか、お誕生日おめでとう。じゃあ、今日の動画は玲奈の生誕祭にするか!」
「あ、ありがと…え、ちょっと優しすぎて怖いんですけど…」
「失礼な…私だって祝うときは祝うぞ!まぁ…せっかく二十歳になったんだから、もちろんお酒を飲むよな??」
「ははーん、そういうことね。配信で飲ませる空気を作ろうって魂胆か」
「いやいや、そんなことないぞ?玲奈を酔わせて、色々暴露させたいだけさ」
「はっきり言うわね…いいわ!いくらでも飲んであげるからかかってきなさい!!!」
羅瑠の挑戦的な視線に対して、玲奈が自信満々に答えると、羅瑠は嬉しそうに頷き、後ろのホワイトボードに『玲奈 誕生会』と書き、横に『用意 酒』と付け加える。
「おいおい、潰れて吐いて黒歴史を作る奴の典型例みたいだから、止めとけって」
「ふん、酔うなんて状態異常、私には余裕よ!」
「いや、どういう発想…」
一応心配して帝里が諫めてみるが、意気揚々とした玲奈が聞く耳を持つはずがなく、玲奈のテンションの高さに半ば呆れながら、諫言を諦める。
「にしても、玲奈も二十歳か。いーな、お酒が飲めて」
「ふふん、あんたも早く大人になりなさい♪」
「うるせぇ、別に飲んだことないわけじゃないからな?」
まだ帝里は二十歳になっておらず、そのことを玲奈にからかわれ、帝里は不機嫌そうに顔を背ける。
まさか、異世界と現実世界で時間の流れが違うとは夢にも思わず、帝里は異世界で3年目の二十歳になった際、すでに酒を覚えていたのである。
別に溺れていたわけではないが、禁止と言われると余計に飲みたくなるのが、人間の性であり、帝里は羅瑠に不平を漏らす。
「だから、別に飲んでもいいと思うんだけどなー!!
別に未成年だって、他のサークルは絶対飲んでるって!!」
「他のサークルは知らん!うちはうち、よそはよそ。異世界ではなく、現実世界の設定で、現実世界の法律に従う、それがこの実況サークルの方針だ!なので、禁止!!
それに実況をしているんだから、そんなことで問題になりたくないだろ?」
「うぐぐ…ちぇぇ、それ言われると言い返せねぇんだよなぁ…」
案の定、今日も羅瑠から禁止され、帝里は不貞腐れる。
その後、何をするかなど、皆で企画していると、玲奈がリズムを刻みながら、ご機嫌の様子で帝里に近づいてくる。
「ねぇねぇ、帝里!去年の約束覚えてる!?」
「…あぁ…あー、そういやそうだったぁ…」
ウキウキとした様子で玲奈から聞かれ、その約束の内容を思い出した帝里は頭を抱える。
去年の玲奈の誕生日に、帝里はちょうど財産を全て失ってしまい、来年はその分も頑張ると、自ら宣言してしまったのである。
「やっべぇ!何にも決めてねぇ!」
「ハァ、あんたのことだから、そうだと思ったけど…まぁ、皆よりも凄いのにしてよ」
「お、なんだなんだ?もの凄くネタの香りがする!!」
忘れていたわけではないが、これといって思いつかず、今日までずっと放置してきたツケに帝里が悶絶していると、羅瑠に聞きつけられ、まんまとプレゼント企画として組み込まれる。
そうして、大方、玲奈の誕生日会の内容が決まり、ホワイトボードに書き上がった数々の企画を見て、羅瑠が満足そうに頷く。
「よし…これで完璧だな…!
さて、後はどこでやるかだ。せっかくだし、どっか貸し切るか?」
「いや、私の家で十分よ。騒いでも誰も文句言わないし」
玲奈の言葉に羅瑠が頷くと、皆の方を向き、右手を高らかに掲げる。
「玲奈とはいえ…まぁ、二十歳という、せっかくの節目だ。皆、騒ぎまくるぞ!!!」
「「「「「「おぉーー!!」」」」」」
「あ、あと再生回数を稼ぐのも忘れずにな」
こうして、誕生会の全てが決定し、玲奈には先に帰ってもらい、残りで、買い出しや準備などを、情音宅を拠点として行うこととなった。
「うーーーん、一体どうしたものか…」
「前見て歩かないと危ないですよ、エル様!!
玲奈だから適当でいいんですよ」
「そういってもなぁ…実況者として、せっかくだからこう、経験したことのないものをあげたいんだよねぇ…」
「それ実況者関係あります??」
買い出しの道すがら、そういって悩み続ける帝里の横で、「経験したことがないものねぇ…」とイブが空を見ながら呟く。
次の瞬間、そのイブの仕草を見て何か閃いたのか、帝里がガバッとイブの方を振り向き、イブの方に近づく。
「な、な、なんですか!!?」
「良いこと思いついたんだよ!!なぁ…イブ、こういうのって出来るか…?」
周りの通行人を気にした帝里が、イブの耳元で考えを囁くと、イブが驚いたように帝里の方を見る。
「出来ない…わけではないですけど~…それ、ほとんど私のプレゼントじゃないですか?」
「合作ということで!お願い!!」
「もう…。ハァ…去年、お金がなかったのは私のせいですし、今回だけですよ!」
「やったぁ!!イブ、恩に着るぜ!!!」
渋々と頷くイブに帝里は飛び上がって喜ぶと、肩の重荷が下りたような軽い足取りで、買い出しの行き道を進んでいった。
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「なぁんだ、皆優しいじゃない♪」
そう呟きながら、珍しく満面の笑顔で帰って来た玲奈が、楽しそうに家の扉を開ける。
軽くステップを踏みながら進んでいた玲奈だったが、奥の方に人の気配を感じ、すぐに真剣な顔に戻ると、足音を立てないよう、ゆっくりと歩み始める。
気配はリビングから発せられており、そこに通じる廊下を抜け、リビングの扉の前まで辿り着くと、玲奈は一回大きく息を吐き、一気に扉を開け、中に入る。
「……なんであんたがいるの」
「親に向かって『あんた』とはなんだ」
リビングのソファーの前に立つ人物の顔を見て、玲奈は見たこともないような険悪な表情で、自分の父親を睨む。
そんな玲奈を父親が同じように険しい表情で睨み返し、しばらく睨み合いにあるが、玲奈がプイッと顔を背けると、部屋の奥の方に歩いて行く。
「一体、何しにきたの」
「もう2学期にもなったんだ。そろそろ満足しただろ、帰って来なさい」
「-ッ!連れ戻しに来たと…」
一瞬、玲奈の顔が酷く歪むが、フゥと息を吐いて、なんとか平常心を取り戻す。
「別にちゃんと大学に行ってるんだから問題ないでしょ。言われたとおり、出て行かず、この家に住んでいるし。」
「別に大学はうちの家からでも通える。もう遊びはおしまいだ!」
「遊びじゃないわよ!!それにここに住んでいる帝里はどうするのよ!?」
「そんな奴知らん!男を囲わすためにここに住まわせているわけじゃない!!」
叫ぶように言い返す玲奈に、憤然と、全く認めないといった様子で玲奈の父親は切り捨てる。
「そんなわけの分からん男じゃなくて、私が決めた然るべき相手とお見合いをさせる。
早く荷物をまとめろ」
「……ふざけるな」
父親から一方的に決めつけられ、我慢の限界に達した玲奈がポツリと言い放つ。
「私はあんたの道具じゃないわよ!!!
昔からいつもいつも私だけ習い事ばかり!!外へもろくに出してくれないし、何から何まで決めつけて!!
これまでは我慢してたけど、もう限界!!私の人生は私が決める!!」
これまでの我慢が溢れ出すように叫ぶ玲奈に、玲奈の父親が押さえつけようと口を開くが、顔を上げた玲奈の表情を見て口が開いたまま、固まる。
玲奈の頬には涙が伝っていたのである。
「なんで、京介は良くて私はダメなのよ…
なんで、帝里は赤の他人なのにあんな一生懸命探してもらえて、私はついでなのよ…
あんたの都合ばかり優先して…私だって、いなくなったときぐらい、ちゃんと探して欲しかった!!!」
「………」
絞り出すように吐き出す言葉に、玲奈の父親は何も言えず、その場に立ち尽くす。
玲奈はぐいっと袖で涙を拭うと、キッと父親を睨みつけ、
「今日が何の日かも分かってないくせに…!!
もう二度と現れるな!!!!」
そう叫ぶと、部屋の外に駆け出し、そのまま家から飛び出て行ってしまった。
「………」
玲奈が出て行った方向を暫く目で追っていた玲奈の父親あったが、諦めたように首を振ると、少しの間、思考を巡らせるように、その場から動かなくなる。
「……今のは、どういうことです?」
ハッとして、玲奈の父親が顔を上げると、別の扉から京介が困惑した表情でこちらを見つめている。
「……お前には関係ないことだ」
「いやいや、家族会議ものでしょ」
衣服を取り繕いながら、また高圧的な態度で京介に答えるが、あっさりと躱されてしまい、玲奈、京介の父親は嫌そうな顔をしながら京介の方を見る。
「…変に俺に似やがって…」
「そりゃ、どうも。で、どういうことです?確かに僕から見ても、昔から姉上には厳しくしていましたけど、それが原因で…?」
「…なんかお前達は勘違いしている」
その言葉に京介が首を傾げるが、それを見た父親はしかめ顔を背けると、深いため息をつきながら続ける。
「別に私は玲奈に厳しくしてるつもりはないし、道具なんて全く思っていない。
…普通に最愛の娘だ。」
「…えっ…?」
少し顔を赤らめながら答える父親に、京介は呆気に取られた様子でまじまじと父親の顔を眺める。
「え…いや、今なんて?」
「何度も言わせるな、恥ずかしい」
「いやいやいやいや、えっ…えぇ!!?何言ってるんですか!?」
「…お前、大学行ってなんか変わったな」
「僕はどうでも良くて!!え、じゃあ、なんであんな習い事ばかりさせていたんですか!!?」
「……ん。」
京介の問いに、父親が顎をしゃくって指し示し、京介が目で追うと、写真立てが棚の上に立てかけられている。
「母上…?」
「お前らの母さんは体が弱くてすぐに死んでしまったからな。お母さん似の玲奈も幼い頃、体が弱かったから、鍛えるために格闘や体操など、色んなことを学ばせた。
…そしたら男勝りになりすぎたから、品をつけるために琴やピアノとか、色々増やしてたら、いつの間にか、ああなった」
「んな、バカな…え、じゃあ僕は?」
「お前は俺似だから、放っておいても死にはしない。」
「えぇ、僕の方がグレそう…」
「本気で全部、玲奈のためになると思ったからやったんだ。まぁ、言われれば少し厳しすぎたかもしれないが…」
先程の玲奈の叫びが響いたのか、辛そうに俯く父親を、京介は見たことのない物を見たような、信じられないといった目で見つめる。
「…えっと、じゃあ、さっき姉上が言っていたのも…」
「…あの子の将来に響くかと思ったんだが…よく分からなくなってきた
って、お前は知らなかったな」
「……いや、もう詳しくはいいですけど…なんか…これまでの父親像と全然違うんですが…」
父親に玲奈と同じイメージを抱いていた京介は、驚きすぎて疲れたのか、ドサッとソファーに座り込む。
「じゃあ、これまでの態度は!!?なんであんな連れ帰ろうと!!?」
「早くに母親を失った分、私がしっかりと育てるべきだと思ったからだ。まぁそれと……なんだ、面と向かうと恥ずかしくてな…
それに家族一緒にいることの何が間違っている?」
「…うん、もういいです…
じゃあ今日が何の日かも…」
「玲奈の二十歳の誕生日だろ。…一応、プレゼントは用意したが無駄だったようだな」
諦めたように胸から取り出した筒のように細い箱をソファーに投げ捨てるが、京介はもう驚くこともせず、黙って封を開ける。
「…これは…?」
「今時の子は何が良いか分からなくてな…ちょうど俺がお母さんと出会ったのが、二十歳だったから、母さんに初めてプレゼントしたものと同じ物を選んだ。」
「うげぇ、重っっ!!」
京介が呆れたように箱から手放すと、父親はため息をついて、歩き出す。
「…どこに?」
「いや、今日はもう帰る…」
「いやいや、成長しないなぁ!!」
バカにしたような京介の発言にピクリと父親の眉が動くが、京介はそんなことお構いなしに、先程のプレゼントを手早く包み直すと、父親を追いかける。
「探してほしかったって言われたんでしょ!!ほら、探しに行きますよ!!」
「いや、でもッ…」
「後回しにしたら絶対に面倒なことになりますから!!全力で探しますよ!!」
渋る父親の背中を強引に押しながら、京介と父親は部屋から出て行った。




