面会
うーん、日付だけみれば普通に投稿してるように見えるんですけどねぇ…(嘘です。本当にすいませんでした…)
どうも、一年失踪してましたが、また投稿させていただく禎式笛火です!!もう一度、1から始める意気込みで頑張っていくのでよろしくお願いします!
言いたいことは一つだけ!データはちゃんと(特に違う媒体に)保存しましょう!!(書いた原稿が全部消えるって、思ってるよりもダメージ受けます…)
とても投稿が空いたのと、やる気の表れとして、ここまでの全ての話の流れや設定などを、活動報告にまとめさせていただきました。良かったらご覧下さいm(__)m
それでは「ゆっくりしていってね!!!」
娘を悪の道に引きずり込んだと、本当はいない情音の彼氏に怒る情音の父親を、双治郎を偽の恋人として立てることで、情音の父をなだめ、なんとか乗り切ろうという帝里達の作戦は、準備を入念に行われ、万全の体制で臨み、当日双治郎も爽やかな挨拶が出来たことにより、最初のアプローチも完璧で、これは上手く穏便に成功すると皆が期待したのだが…
「なんだ!この小娘は!?」
「いや、僕は男ですけど…」
「まぁまぁお父さん、可愛らしくていいじゃありませんか~!!」
作戦は次の段階で、もうすでに暗雲が立ちこめていた。
案の定、情音の父親は始めから双治郎に対して、敵意がむき出しであり、ずっと双治郎を睨みつけている。一方で、情音の母方の方は双治郎に友好的なのか、娘の彼氏というものを興味深そうに、また二人のやりとりを面白そうに眺めており、あまり口出しするつもりはないようである。
「うーん、かなりカッコよさげな格好させたつもりだったけど、ダメだったか…」
「まぁ、私達が見慣れているだけで、双治郎様、普通に女性っぽく見えますからね」
玄関で情音の両親と対面した後、両親の二人になんとか家の中に入って貰い、和室に洋式の椅子と机という、少し異様な空間に、両親と、その対面に情音と双治郎が席に着く、という状況を作ることが出来たのだが、結局、双治郎の女性的な見た目から否定してきて、縁側に面した廊下で様子を窺っていた帝里とイブは隣で不機嫌になる羅瑠を隣で必死に収めながら、ため息をつく。
「娘の情音は、お前にたぶらかされて変わってしまった…と思っていたが…」
「えっと、それは僕のせいでは…」
「あぁ、見て分かった!!お前みたいな軟弱なやつが情音に強要させるほどの力があるとは思えんからな!!」
「ほら、やっぱり私の言うとおり、情音がおしゃれしてみたかっただけですよ!ねぇ、情音?」
「だが、方法というものがあるだろう…せっかくの美しい黒髪に産んだのに、なぜ汚すんだッ…!?」
情音の父が嘆く言葉に、そうだと言わんばかりに裏で様子を窺っている帝里も大きく頷く。帝里も本当は源蔵があの黒髪を染めたのは本当に愚かなことだと本当に思っており、あの父親とは気が合いそうだ。
そんな様子の帝里に、茶髪で積極的な剛堂さんにまんまと嵌まっていただろとでも言いたそうな冷ややかな目でイブが帝里の方を見るが、呆れたようにため息をつくだけで、何も言わない。
「だったら、僕は…」
「あぁ、それについては疑ってすまなかった。がっ!お前のような女々しい男に娘はやれん!!」
「うっわ、それ初めて生で聞いたわぁ」
ドラマやアニメでしか聞かない決まり文句に、思わず帝里は謎の感動を覚える。情音の父親は、一昔前の古風な性格と情音から聞いており、少し期待していたが、もしかしたら、さらに他の決まり文句も聞けるかもしれないと、帝里は密かにワクワクする。
ただ、交際を賛成されるより反対された方が、後ほど別れたということで話をまとめるつもりの帝里達にとっては都合が良く、あとは、うやむやに話を終わらせるだけである。
「それに、わけの分からん部活にまで入りおって…あんな世間に恥を晒すようなことしてどうするんだ!?
しかも、こいつも一緒にいるのだろう!?情音、そんな部活、今すぐ辞めなさい!!」
「それについては少しお待ちください、剛堂さま」
いつの間に隣から消え、着替えたのか、落ち着いた紫色のワンピース姿の羅瑠が帝里の横をすり抜けるように部屋に入ると、テーブルを囲む4人の前に現れる。
「…さっき玄関で会ったが、……すまない、君は誰だったかな?」
「いえ、改めてまして、宝大実況サークル代表の道智寺羅瑠です。お話の邪魔をしてすいません。
ところで、剛堂グループ様にはスポンサー契約のお願いをしましたが、お聞きになられましたでしょうか?」
流れるようにさらりと羅瑠は述べると、いつも見せないような爽やかな微笑みながらペコリと頭を下げる。
「あぁ、聞いたよ。…あと、そんな言い方よさないか。娘の友達にまで、そんなに堅苦しくされては疲れる」
それを見た情音の父親は顔をしかめながら、嫌がるように手を払い、軽くため息をつく。
今回の情音の父との面会は、彼氏についてだけではなく、剛堂グループに実況サークルのスポンサーになってもらうことも目的の一つなのである。
スポンサーとは、実況者に支援する代わりに、そのスポンサーの依頼する物を紹介したり、他にも実況動画に広告を載せるたりするなど、いわゆる大きな出資者のようなものだ。また、MOWAから政治的活動が認められている実況者では、そのまま本来の意味をなすこともある。
ただ、帝里達は宝大から資金も得ているので、金銭的支援が目的ではなく、依頼されることで、実況のネタを提供してもらう方が狙いであり、少し変わった契約である。
「見たところ、わしらには利益しかないし、良い商談だが、さっきも言ったように、情音のためにもこんな実況グループは消えてしまえと思っておる」
「なるほど…つまり、情音さんにとって有意義な環境であればいいのですね…」
ちらりと睨むように双治郎を見ながら答える情音の父親に、羅瑠は考え込むように顎に手を当て、腕を組む。
「それならば…やはり、友好関係でしょうか」
「友好関係?」
「はい。今、情音さんと仲が良い、特に学年が違う友達のほとんどがこのサークルにいます。授業が違い、会う機会が少ないので、こういった場を設けるのは情音さん的にも嬉しいのではないでしょうか?」
「むむむ、たしかにそうだが…」
「それに、私は道智寺の娘ですし、他にもあの千恵羽家の息子もいますし、さらに将来超有望な人材もいます!!」
「超有望な人材…?」
「そこの双治郎もそうですが、今回のスポンサーはその男が政界に出たときのためなのです!!」
そう羅瑠は高らかに述べると、パチンと指を鳴らし、バッと手を自分の後方にいる帝里の方向へ指し示す。
「…へ!?…まさか俺!?今!?」
何も聞かされていなかった帝里は突然、全員の注目を浴びて慌てて隠れるが、さっさと来いとでも言わんばかりに睨む羅瑠に顎でしゃくられ、仕方がなく、おずおずと情音の父親達の前に出る。
「えっと、君は確か…あっ、行方不明だった…!」
「はい、入多奈帝里です。あのときはお世話になりました…」
ペコリと頭を下げながらも、帝里は内心、ヒヤリと背筋に冷たい汗が走る。
まずい、第一印象は最悪だ。
「おぉ、そうだ!いやいや、こっちも勝手な判断をして悪かったね。
確かあのとき…情音に頼まれて、かなり力を入れて探したんだが…一体どこで、何をしてたんだね??」
「えっと、そのぉ…世界を見てきた、って感じですかね…」
様々な人から何度もこの質問を問われ、その度に何か良い説明はないのか、と考えている帝里だが、結局今回もいつもと同じ返答をしながら、情音の父親に苦笑いを浮かべる。
「ふむ、それなら留学などきちんとした方法で誰かに伝えていけば、よかったものを…」
「いや、突然連れて行かれたというか…始めは行くつもりではなかったので…」
「君がいなくなった時はまだそんなに物騒ではなかったと思うが…まぁ、それは災難だったな
それで?君も『世の中間違ってる!!』とでも叫んでまた引っ掻き回したい輩かね?」
「いや…?なんか実況者のせいで混乱はしているみたいですが、わりと良い方に向かっているんじゃないです…かね…?」
情音の父親に棘のある質問をされ、帝里は困ったように、頭をかしげながら、答える。
魔法が見つかったときに暴走しないために活動している帝里は、政治関係には全く疎く、何も良い方策があるわけでもなく、実は現在の政治もよく分かっておらず、魔法さえ抑えられれば良いと思っているので、政治面に関わるつもりはないのである。
「なっ!?外国の有様を見て、それを日本に活かそうと思っているのではないのか!?」
「いや、そうなんですが、日本でというより、世界全体…?でやらないといけないことでして…」
「は…?どういうことだ…?」
情音の父親が帝里の話についていけず、困惑して言葉を詰まらせる。
「世界とは…?一体、何がしたいんだ!?」
「いや僕がしたいのではなく、起こると予想しているだけですが…」
「何が…」
「第三次世界大戦だ。」
「………」
「…ってネタは置いといて!!せ、世界中が混乱するでしょうっ!これまでより酷い戦争も、ほんとに世界大戦みたいなこともありえるかも…」
「…何を根拠にそんなことが言えるんだね??」
普通なら笑い飛ばしそうな話だが、帝里の真剣で何か辛いことを見てきたような少し暗い顔つきに、情音の父も惹き込まれるように帝里に問いを重ねる。
ここで、魔法のことを説明するべきなのだろうか。剛堂家の協力が得られれば、実況者として名を馳せなくとも、すぐに解決に乗り出すことが出来るかもしれない。
しばらく腕を組んで悩んでいた帝里であったが、首を微かに横に振って、腕組みを解くと、出来るだけ落ち着いた声で申し訳なさそうに答える。
「…すいません、これ以上、誰か先に知ってしまっては台無しになってしまうのです。特に剛堂さんのお父さんは権力がありますし…」
「ここまで来て教えられんと言うのか!?………もう、いい…情音は知っているか?」
帝里から教えないという意志を感じた情音の父親はどこか疲れたように諦め、代わりに自身の娘に問いかける。
急な父の問いに情音は少し狼狽えるが、帝里の方を見ながら困ったようにコクリと頷く。情音のことはかなり信用しているのか、それを見た情音の父親は「むむむ…」と唸りながら考え込み始める。
せっかく協力が得られそうな機会であったが、それでは意味がない。多くの人が帝里の考えを直接、自分の力で理解してもらうために、誰にも頼らず、実況者の道を選んだのだ。
「今すぐには起きないと思いますし、僕が必ず止めます!!情音さんのことも絶対に守ります!!」
ここぞとばかりに、自分をアピールするが、情音の父親はすでに何か考え込んでしまっており、残念ながら、帝里の声はおそらく届いていない。
なので、帝里はもう一度聞こえるようにと口を開くが、羅瑠が横からそれを止めるように手で帝里の前を遮ると、再び情音の父親の前に出る。
「剛堂さま…少し話が曖昧なやつですが…このように未来を見据えており、将来このサークルはこの世界にとって重要な存在になるでしょう。そのときに情音さんはこのサークルで強い結びつきを得ることになります。ほかにも…」
「分かった分かった!情音のサークルは認める…スポンサーの件も追って連絡するよ」
まだ語ろうとする羅瑠に降参したように情音の父親は手をあげると、半ば呆れたように首を振る。
「ありがとうございます!私たちも期待に応えれるように頑張ります。
では、お話の続きを…いくぞ、入多奈」
「…え…?あっ、はいっ」
あっさりと身を引く羅瑠に急かされ、帝里も慌てて部屋から退出する。
「え、双ちゃん達の手助けは??」
部屋から出て、すぐに帝里は抗議するが、情音は静かに首を横に振りながら木製のガラス戸をしっかり閉める。
「それはもう部外者には無理だ。情音のサークル参加と父親の協力が得られただけでも充分だろ」
「それもそうか…それよりも!あれはお父さんに好印象与えれましたよね!?ね!?」
「いやぁ?もともとマイナスだからなぁ」
思ったより手応えがあって興奮している帝里に羅瑠が意地悪く笑い返す。
「肝心なところを隠すからイマイチ信用できんし、途中で失踪するような頼りない奴だと思われてそう」
「ぴえん…」
「…お前が言うとまじでキモいから二度と使うな。」
「ひどっ!?
っていうか、結局、全部異世界のせいじゃねぇか!くそぉ…
普通、魔王倒したら、『ステキ!娘と結婚して!』ってなるだろぉ!
俺はあの!魔王を倒したんだぞ!?」
「…なんだ、そのチョロインな父親。そんなことを自慢しているようでは、まだまだしょぼい男だな」
悔しそうに帝里が呟いた瞬間、羅瑠は急にそう冷たく言い放ち、どっかに立ち去ってしまった。
「え…なんか今、急に羅瑠先輩怒ってなかった…?」
「まー、エル様と違って異世界を実際に見てませんからね、存在しないことを自慢する、厨二病的なイタイ奴だと思われたんじゃないですか?」
部屋の外で待っていたイブが羅瑠の行った方向を眺めながら、帝里に近寄ってくる。
「それに、羅瑠様は、変な価値観に慣れた私やエル様と違いますからね。魔王を倒したのも、人を殺めたことを自慢しているようで、あまり人聞きが良く感じないのでしょう…それに特に羅瑠様は…」
最後を濁すイブの言葉に帝里も思い当たる節があり、イブ同様口を閉ざす。
羅瑠の実家、道智寺家は海外に対抗するため、日本に武器を仕入れて、日本一の武器商人となったわけだが、その武器を使った事件のせいで道智寺家が恨まれることもあるらしい。武器は使い手で価値が決まるので筋違いな話だと帝里は思うが、そのせいで、娘である羅瑠は過激的な話に敏感なのかもしれない。
「そうなのか…ちょっと配慮が足りなかったな…何でも異世界を話せばいいってことではないのか…」
帝里はあとで羅瑠に謝ろうと、反省しながら、異世界での経験を現実世界で適応させる難しさを改めて実感しつつ、羅瑠の去って行った方向を眺めた。
[補足]
羅瑠が情音の父親を説得するやり方が、個人的に少し彼女らしくないのですが、これは情音の父親が固い結びつきを大事にするという性格であるということを知っての対応です。
そのことをデータ破損前はちゃんと述べられていたのですが、どこに入れればいいか分からず、これ以上ぐだりたくないのでカットさせていただきました。
そのため、情音の父親は昔から京介に目をつけており、京介にしきりと情音の婿になるように勧めてきた過去があり、そのせいで京介が情音の父親と会うのを嫌がって、今回は顔を出さないという設定と、それに関する表現もカットされております。(これに関しては父親の婿に求めるものが変化し、今は京介にそこまで興味を抱かないという設定とややこしくなるのを回避したかったのも理由の一つ)
相変わらず、説明回が下手で申し訳ございません。




