火力姫
9月15日…ですね…
えっと、玲奈さんお誕生日おめでとう( ^-^)!
それと…5章開幕とか言ってたくせに3章すら終わってないって…投稿が遅くて、本気にごめんなさい( ノД`)…
「くそっ!一体どうなっているんだ…!?」
イブと情音を車に乗せ、帝里達から逃げている源蔵は荒々しくハンドルを叩く。そして必死に時空移動装置のボタンを何度も押すのだが、
“ただ今、この時代の人の多くに注目されているか、映像として明確に残されている可能性があるため、時空秘密保護法により、時空を超える事は出来ません”
とアナウンスが流れるばかりで、それが一層源蔵の苛立ちを募らせる。
「なぜだっ…!?警察の目に留まらないように速度は守っていたはずなのに、なぜ注目が集まっている!!?」
「そりゃ、相手は歴史上でも有名な実況者、エルクウェル様ですからねぇ。あなたを追い詰めるくらい造作もないのですよ。あ、ドローンまで飛んでる」
「むぅ…あれを打ち落としさえすれば…」
「止めときなさい。そんなことしたら、次は秘密保護法で一生、時空を超えることができなくなりますよ。
あなただけなら良いですが、私は嫌です」
焦った源蔵が魔法を使おうとするが、帝里が来ていると確信し、安心しきっているイブが気の抜けたような声で諫め、源蔵は苦渋に満ちた顔になる。
「さーて、そろそろ諦めて、私と情音様を解放しなさい。私はエル様と未来を変えます!」
「ふん、まだそんな絵空事を…それにこちらにはエルクウェルが好きな情音という人質がいるのです。最悪、これを使えば、イブ様どころじゃなくなりますよ」
「うっ……確かに…そう…かもしれませんが…」
源蔵の言葉にイブの歯切れが急に悪くなり、目の奥で一瞬陰りを見せる。
「実際まだ役には立っていませんがね。それでもこうしてイブ様を捕らえられたのですから、半年待った甲斐があったというものです」
「…ほんと回りくどいですね…」
「まぁ、火力姫様とエルクウェルとあの玲奈という女の三人を相手に戦っても勝てる気がしなかったもので」
「確かにそうでしょうね…そういえばなぜ情音様を知っていたのです?半年前はまだ情音様はエル様と直接的な接触はなかったと思いますが…」
「あぁ、それはですね……話す義理はないですが、成功しましたし、まぁいいでしょう。
まず、あのとき武力行使で勝てないと悟ったので、まずはあのエルクウェル、入多奈帝里という人物を調べてみたのです。もともと“平和の創始者”とも呼ばれている彼に興味ありましたしね
そうしたら、過去に1年間、どうやら行方不明になっているそうで、さらに詳しく調べてみると、捜査に協力したというのが剛堂家と千恵羽家だったというわけですよ」
「千恵羽家??なぜそこで千恵羽が出てくるのです?」
「そんなの知りませんよ。千恵羽の方は秘密裏に協力していたようで、詳しいことは分からず、ただ捜査に紛れて別の人物を探してもいたようですが……まぁ、その千恵羽家にイブ様が匿われているのでどうしようもなく、消去法的に剛堂家を調べることにしました。
そうしたら、この剛堂情音という人物、なんと入多奈帝里のことが好きだというじゃないですか!
そこで、『この情音を入多奈帝里と結びつけることで、千恵羽玲奈、イブ様とは疎遠になり、簡単にイブ様を捕まえることが出来るのではないか』という考えが思い浮かび、それを実行したのです」
「なんちゅうラブコメ脳……まさかイメチェンも玲奈に似せるために…!?」
「えぇ、同居するほどですから、エルクウェルはああいう外見の女性が好きなのかと思ったのですが…どうやら好みとかではなかったようですね……」
「…はぁぁ…ばかばかしい…これはさすがにエル様に報告するようなことでもないですね…
さて、」
イブは呆れたように呟くと、檻の中で立ち上がり、服の汚れを手で払う。
「もう大体のことは分かったので私はここから出させてもらいます。
…ああ、エル様のもとには当分戻らないので、情音様を人質交換とかに使っても無駄ですよ。これであなたの負けですね!」
「……そこから出す気はありませんが?」
「笑わせないでくださいよ、私を誰だと思っているのです??私が火力姫と呼ばれる所以が生まれつき持つ魔力が桁外れなのを知らないのですか??
もともと私を閉じ込めようという考え自体、間違えているのです」
イブは自信満々に胸を張ると、檻を突き破るために両腕を横に突き出し、掌の前に自分と同じくらいの大きさの炎の玉を作り出す。
「…言っておきますが、半年もあったのですから、そんなの想定済みで、どれだけ頑張っても壊れないように作っていますからね。 たとえ、あなたが魔力増幅装置をつけたとしてもね」
「……は…?」
イブの隣にあった炎の玉が急に消え、イブは訳が分からないといった顔で首を横に振る。
「…あなたには見えないんですか…?ほら…私だって指輪をつけているじゃないですか…!?」
「えぇ、つけてますね。赤い蛍光塗料を塗っただけのただの指輪をね」
「!!?…え、…な、何を言って…!?」
「あぁ、確か異国で会った初恋の人からもらった指輪でしたっけ?はぁ…あんな国の人間なんてどれも雑魚なのに、火力姫とあろう者が――」
「うるさい!!!それ以上言うな!!」
イブの怒声が車内に響き渡り、髪を逆立てながら睨み付けてくるイブの威圧に押され、嘆くように呟いていた源蔵はピタリと口を閉じる。
「……ハッ、なぜ、なぜあなたがそれを知っているのです…!?国の最高機密なのにッ…」
「一応、私だって国の人間ですからね。それに言ったでしょう?魔法の発展・開発の研究をしていたって。魔法増幅装置を作ったのは私なんですよ」
「いやっ、だからって…!」
「確かにそれだけで教えてくれるわけないですよ。私の考えた予想がたまたま当たっていただけです」
「予…想…?何をどう考えたらそんな予想がつくのです!?」
「まぁまぁ、イブ様も幼く、知らなかったことも多いと思うので。
……どうせですし、話してあげましょうか?私の計画にも関わるので、もしかしたら心変わりしてくれるかも知れませんし」
「……聞かせてください。心変わりはしませんが」
敵意を押さえつけ、静かに答えるイブに源蔵は頷き、話を続ける。
「まず魔法増幅装置なのですが、おかしいと思いませんか?」
「…おかしいとは?」
「形ですよ。なぜわざわざ見せつけるかのように指輪の形をしているのでしょうか?魔力を増加していることが一目で分かってしまいますし、何より外されやすく、戦いでは不利です」
確かに源蔵の言う通りであり、実際、‘英雄殺し’のモイラとアッシュも帝里に指輪を外され、魔力が激減したことで負かされている。
「始めは私も外しやすいことで戦闘の激化を避けるためだと思っていました。しかし、あなたの話からあることを知らないのに気づき、考えが変わったのです」
「私が知らないこと…?」
「ええ、それは……初めて普及されたときの魔法増幅装置の形状はネックレス型なのです」
「!!?」
全く知らないことを聞かされて、イブは驚愕で口が塞がらず、その表情を見て、改めて確信したように源蔵がニヤリと笑う。
「やはり知りませんでしたか。そうです、始めは隠しやすく、理に叶っていたのです。
しかし、形状は変わりました。そのタイミングが重要なのです!それが10年ほど前に起きた世界規模の反乱の最中なのです。
反乱が起きた原因はさすがにイブ様も分かっていますよね?」
「うっ……それは…魔力増幅装置の登場で、世界中の人が……私の力が世界の破滅をもたらすと恐れたから…」
苦々しい表情で辛そうに答えるイブに源蔵は満足した表情で頷く。
「はい、その通りです。危険な存在となった火力姫を国が保護していたことに危機感を抱き、起きた反乱です。
その結果、当時6歳だったあなたは隣国に亡命することとなりました」
「でも…!だからこそ!あの反乱は私自身の力で鎮めたじゃないですかッ…!
………あのときに魔力増幅装置の形が変わったのですか」
「そろそろ気づいたようですね。そうです、そのときです
私たちの国ではあなたがどうすれば帰って来られるか考え続けていました。
そしてその結果、次の改良品を出すときに魔力増幅装置の形を、あなたが帰ってきたときに付けていた、そのただの指輪と同じ形に変えることで、人々にある考えを植えつけたのです。
『今、火力姫は指輪をつけているので、もうこれ以上魔力が上がることはない。また、火力姫は生まれたときからネックレス型の魔力増幅装置を隠しながらつけていて、あの強い魔力はすでに増加された後のものであり、そこまで力は強くない』と。」
源蔵の話にイブは黙り込んでしまい、その沈黙が暗に肯定していることとなって、さらに源蔵の舌の滑りが良くなる。
「私たちは完璧に騙されました。確かにそれでも脅威的な魔力ですが、そんな騒ぐほどでもなく、最悪、指輪を外せばいいとさえ思い込んでしまいました。
そして、あなたはしょうもない方法で民衆の人気も勝ち取り、まんまとあなたへの危機感は消え去ったのです」
源蔵はふぅと一息つくと、もう表情を見せまいと目を瞑っているイブの方を嬉しそうに見る。
「でも、あなたがネックレス型を知らないなら、この話は食い違ってきます。それに気づいた私は徹底的に調べまわり、とうとうあなたが本当は魔力増幅装置をつけてないことにたどり着いたのです!!」
「……それが私を捕まえたことと、どういう関係があるのですか?」
「おや、まさか知らないのですか?
あなたが魔力増幅装置をつけたらどうなるか……今の技術ならあなたの魔力は途方もないほど膨れ上がり、世界1つぐらいなら軽く滅ぼせるほどの力になるのです!!」
「!!!?」
ある程度は自覚していたものの、聞かされた己の本当の力の大きさが想像を遙かに超えていて、イブは目を大きく見開く。
「いやぁ、反乱を一人で鎮圧していく、あの力が素であると分かったときは本当に興奮しましたよ!
そして、あなたの魔力の想定値の結果を見たとき、私は計画を実行することを決意したのです……あなたを脅威の武力として、世界を支配するとね!」
「ッ!!?ふざけるな!!そんなの断る!!」
「やはりダメですか…なら仕方がないですが、操るしかないですね」
「ふんッ、馬鹿じゃないですか?操るにもその魔法の魔力ですぐに皆に気づかれるに-」
怒りにまかせて捲し立てていたイブがあることに気づき、急に口を閉ざす。
「…なぜ…エル様は情音様が操られているのに気づかなかったのです…?」
「ほおぉ、気づきましたか!これもこの計画を実行する上で必要だったものです。
この魔法は闇属性の上位互換とされている魔属性という、我が国にはない種類の魔法なのです。魔属性とはどうやら他の魔力とは違うので、普段のようには感じることが出来ないだとか。今回はこの性質が役に立ちましたね。
隣国の禁忌とされていた魔法で、まぁ操っているのがバレたところで何も手出し出来ないだろうし、別にどうでもいいのですが、力の強いイブ様を操るのにどうしても必要だったので、拝借させていただきました」
「まさかっ…前に国の機密事項を盗んだとか怒鳴り込んできて、それを言いがかりだと抗争になって戦争寸前までいきかけた、あのときの話は本当だったのですか…!?」
「あぁ、そんなこともありましたね。機密というわりにガードが甘いし、我々の国も盗んだのが私と分からないし、お互い、国として終わってますよね」
「どの口が…ッ!なぜ今ある平和を壊そうとするのです!?」
「…ふん、何が平和ですか。笑わせないでくださいよ」
イブの言葉に源蔵は目を細めると冷たく言い放つ。
「あんな国民のご機嫌取りをしているのが平和ですか??わざわざ昔の方法を掘り返してきて治めたところで何も変わってませんよ?
まだ分からないのなら教えてあげましょうか?あなたが未来からこの時代に逃げてきた元凶の火力姫襲撃事件、襲った彼らに魔法を教えたのは私ですよ」
「!!」
「そんな怖い顔しないで下さいよ。連中、あなたの本当の力の恐ろしさを教えてあげたら、すぐに排除しなければって一斉に騒ぎ出すもんですから、本当に倒せるか少し試しただけですよ」
「貴様ッ…!!あれのせいで…!」
「あぁ、あれはお気の毒さまでした。でも、あれも昔の体制に頼り切ったせいで起きた悲劇です。
ね、分かったでしょう?皆があなたの力を知ったらこんな平和、簡単に崩れ去ってしまうんですよ
ならもう力を使えば良いではないですか!そんな逃げ回ってばかりではあなたも辛いでしょう?」
「…それでも…私は…エル様の作る未来を見たいです」
「強情ですねぇ…仕方がないですが、私の操り人形になっていただきますよ
こんなに私は必要としているのに、なぜ必要とされてない方を選ぶのでしょうかねぇ」
“おいおい、それは心外だな”
「ッ!?誰だ!!!?」
突然車内に響き渡る声に、源蔵とイブがキョロキョロの探しまわり、そしてその正体を見つける。
「まさかッ…エ、エル様…!?」
“はーい、エルクウェルですよー。いやぁ、まさかこんな使い方が出来るとはねぇ”
可笑しそうにクスクス笑う声がイブのぶら下げている小型の通信機から鳴り響く。
そう、今日の午前は双治郎と羅瑠のデートということで、実際は使わなかったが、事前に前日と同様、帝里とイブは通信機をつけていたのである。
通信有効範囲は20kmほどで、さっきまで通信が出来なかったのだが、帝里が近づいたことにより通信が可能になったのである。
「ど、ど、どの辺から聞いていたのですか!?」
“んー、なんかお前が檻から出ようとしていたら辺?”
「結構前からじゃないですか!!」
“真剣な話していたから口を挟めなかったんだよ!
でもおかげで色んなことが分かったぜ!『圧倒的な力が必要』とか、なーんか剛堂さんにしては過激なこと言うなぁと思ってたら、源蔵、お前だったのか!”
「ふん、あの程度の話で、全てを分かったような物言いは止めていただきたいですね。
それでやはりあなたも火力姫の力が欲しくなったのですか」
“いや?別にそんなのどうだって良いんだよ”
涼しげに語る帝里の声に源蔵は疑問を隠せず眉をひそめる。
“だからお前と俺は目指すものが違うんだって。俺は魔法が暴走しないようにしたいのに、それを魔法で押さえつけたら意味がないだろ?”
「だったらなぜ…?」
“う、うるさいなぁっ、人の勝手だろっ!…そのっ…イブと一緒に平和を目指すと約束したんだ!だから、そのために一緒に動画だって作るし、その出来た未来をちゃんとイブに見てもらわないと俺が困るんだよ!文句あるかっ!!”
「エル様…」
気恥ずかしそうに答える帝里に思わずイブは涙ぐんだ声を上げる。
「そのような理由で…私の計画を邪魔するのですか!!」
“あぁ、イブが嫌って言うからな。それならお前になんか連れて行かせるかよ!
…………見つけた”
次の瞬間、車のすぐ後ろで突然爆発が起こり、その衝撃で車が激しく揺さぶられる。
「ぐわっ!?何だ!!?」
「ぎゃぁぁぁああっぁ!!檻が回るぅ~!!」
衝撃で檻が車内のあちらこちらに飛び回り、その中で軽く目を回したイブがフラフラと立ち上がり、首を振りながら後ろを見る。
車の後ろでは道路が衝撃で大きくひび割れており、その中心部では煙が濃く立ちこめ、辺りでは車のクラクションがあちらこちらで鳴り響き、パニックが起きている。
「おぇ…いたたたた…もう!一体何が…え、……あっ!」
忌々しそうにその煙を睨み付けていたイブだったが、急に煙に目を凝らしたかと思うと、突然嬉しそうな声を出す。
そしてその声に応えるかのように、煙が横一文字に真っ二つに割れると、煙は吸い込まれるようにどんどん晴れていき、中から一つの人影が現われる。
「さーて、そろそろ、うちの大事な実況メンバーを返してもらおうか」
立ちこめる煙の中に現われた帝里は真っ直ぐ源蔵の車を見つめ、ニヤリと笑うのであった。




