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かけもちの勇者様!!  作者: 禎式 笛火
3章 思い描いた大学生活は程遠くて…
29/58

始動!実況サークル!



 ゴールデンウィーク最終日、国が管理し、世界中の動画が投稿されている超人気動画投稿サイト、MOWAに新しい動画が投稿された。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

[第一回企画!!鬼ごっこ!]


 どうも!宝大実況サークルです!これから実況を始めていくのでどうぞよろしくお願いします!!

 さっそくですが、実況企画第一弾!!鬼ごっこを行います♪


 なんと実況サークルの一員、エルクウェルの大事なフィギュアが盗まれてしまいました!?Σ( ̄□ ̄;)

 盗んだのは同じサークルメンバーの剛堂情音!!今、執事に車を運転させて逃げ回っています!


 そこで今回はその情音を追いかけて、エルクウェルの大事なフィギュアを取り返して欲しい、といった企画になっておりますv(^^)/!


 如何なる手段を使っても構いません!皆さんが情報を共有できるサイトも用意しました!!情音を追い詰めた皆さんとは、そこでちょっとした出し物でもして楽しみたいなぁと思っています♪

こちらが情音とエルクウェルのフィギュアの写真です!大体ここら辺の場所を逃げていると思うので、見つけたら、どんどん情報を共有して追い詰めていきましょう!!


 今日で終わるゴールデンウィークの最終日、最後の機会にパッーと一緒に楽しみましょー!(>.<)y-~!


 皆さんのたくさんの参加をお待ちしております!!ではでは!ご視聴ありがとうございました♪


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 もちろん、投稿したのは帝里達である。羅瑠が考えた方法というものは、源蔵を追いかけるのを一つの企画として、視聴者に源蔵を一緒に探してもらうという、人海戦術だったのである。

 しかし、この作戦を聞いた帝里は始めから否定的であった。


 まず、参加してくれる人がほとんど居ないであろう。いくら実況者が政治に関わったりするほど動画投稿が注目されている世界とはいえども、そう簡単に視聴者が増えるわけでないのは同じであり、それは帝里自身が経験済みだったからである。

 確かに、帝里も自分のエルクウェルのチャンネルで実況サークルのことを宣伝したので、普通の初投稿よりも多くの人が参加してくれるとは思うのだが、動画が全世界に配信されているこのご時世に、エルクウェルの視聴者が都合良く帝里の近くにばかり居る、なんてことはまずありえない。


 そんなわけで、この作戦は失敗に終わると思いながらも、渋々ながら動画の撮影をしたのだが…


「…は!?…は!?…いったい…どうなっているの!!?」


 京介の車の中で、現状起きていることが信じられない帝里が驚愕のあまり、動画の管理画面から目が釘付けになったまま叫ぶ。


 画面に映る動画の再生回数は見たことのない速度で伸びていっており、すでにエルクウェルのチャンネル登録者数の数倍を軽く超えていっている。

 そして…


“1コメ”

“これってこの女の子を追いかけて、着いた場所で何かするってことやんな?”

“なにこれ!面白そう!”

“エルクウェルの動画からきた人挙手”

“この子じゃね?黒い車に乗ってるわ”

“スタート地点とかないのかな”

“剛堂ってあの剛堂グループ?”

“このフィギュアの元ネタ分かる人おる?”

“あ!今この女の子の乗せた車が通った!!”

“これガチなやつじゃね?”

“暇だしちょっとやってみようかな”

“よく見たらわりとみんな可愛くね?”

“いたいた!場所はここの、交差点を右に行ったよ!”

“これ初投稿なのに再生回数凄いなw”

“登録しますた”

“ガチで追うやつここに集合”

“投稿ペース遅すぎww”

“この企画を実況してる人もおるな”

“エルクウェルの地声初めて聞いた…”

“俺、情音ちゃんタイプやわ”

“はい!高速道路に乗っていった!”

“あー、遠すぎるから実況見るだけやわ”

“情報サンクス”

“よし、車ないし電車で追うか”

“着いた場所で何するんだろ?”

“初投稿うぽつです!”

“エルクウェルって誰???外人?”

“プロフィール見たんだけど、メンバー構成ヤバくね?”

“手段問わんって言ってるし、この企画を実況しても問題ないやろ”

“関係ないコメ自重して”

“エルクウェルは魔法大全の人やで”

“これは出し物期待”

“この人って聖剣戦日本代表の選手じゃね!?”

“今チェイスしてる”

“実況者の本気見せたろやないか…”

“協力してる実況者の数すげぇな。これ初投稿?”


 …とこのように情報を共有するために用意したサイトは多くの人でごった返しており、その中から玲奈と双治郎の二人体制で有力な情報を必死に抜き出し、羅瑠がもらったコメントに返信をしていく。


 始めの10分は帝里の予想通り、全然再生回数が伸びなかった。ほら見ろと帝里がため息をつき、次の作戦を考えていたとき、予想外の出来事が起こったのである。

 それはなんと日本で現在実況ランキング1位である実況者が帝里達の企画を後押ししてくれ、自身のアカウントでも宣伝してくれたのだ。さらに、次々と他の実況者達が便乗してくれ、一気に大イベントへと変化を遂げたのである。

 そして、その瞬間から再生回数は跳ね上がり、現在に至るわけである。


「いや…まさかランキング1位が協力してくれるなんて…まじラッキーすぎだろ…」


「ふふふ、それは違うぞ入多奈。実は前から実況コラボをしたいという申し出を受けていたんだ」


「え、まだ動画も投稿したこともないのに!?なんで!!?」


 羅瑠はニヤリと笑うだけで教えてくれず、さっぱり分からない帝里に向かって、運転中の京介が代わりに答える。


「意外と簡単な事ですよ、帝里さん。

 今の日本政府は武器の所持を認可したことにより、武器の量の調整や輸入に関することなどを始めとして問題が山積みなんですよ。実況者の出した新政策などでお金も必要ですし。

 そこに、さっきもコメントにあったと思いますが、日本一の武器商人と言われている羅瑠さんの道治寺家、そして昔から財力のある情音さんの剛堂家と僕達の千恵羽家。この3グループの子供達が実況を始めようってことですから、協力して恩を売っておくに決まってるじゃないですか」


「なるほど…てっきり俺の動画が評価されていたのかと思っていたのに…なんか大人な事情だったな…

 そういえば、出し物って何するんですか?」


「考えていない。この移動中にお前が考えろ。そのためにお前はフリーにしてやっているんだ」


「そんなの考える余裕があるか!!ほんとにこの企画ダメダメだな!!」


「まぁ公共の場で実況というのは、関係ない人に迷惑をかけて良くないが……緊急だし、実況社会様々ということで今回だけ許してもらおう」


 羅瑠が少し考える表情を見せるがすぐに消え、淡々とコメント返信に戻るので、帝里も仕方なく、出し物について考えてみる。

 とはいえ、これだけ大きな企画に膨れ上がってしまったのに、全く用意も何もないので、大したものが思いつくはずがない。仮にイブ達を救助することが出来たとしても、その後がとても思いやられそうで、帝里はそっと考えるのやめた。


「もう、色々あって大変だわ…お、ドローン撮影している人までいる!?ランキング1位はやっぱり帝里の宣伝とは全然違うわね…」


「おい」


「しかも…うん、ビンゴ!源蔵の車だわ!

 この映像をここに固定表示させて…京介、場所のデータ送るからこの場所に向かって!」


「了解!!」


 羅瑠の考えた作戦は功を奏し、帝里は着々と源蔵に近づいていることを実感しながら、画面に映し出される源蔵達の乗る車を見つめていた。




 しかし…こうして源蔵の居場所が分かった帝里達はすぐに向かっていたのだが、ここで問題が生じる。


「おいおい…なんで動かないんだよ!?」


「ゴールデンウィーク最終日の渋滞ですね…しかも源蔵のせいで交通機関が滅茶苦茶に混乱してますね…」


 そう、居場所が分かり時間短縮のために高速道路に乗ったのだが、渋滞に捕まってしまい、思うように進まないのだ。


 一方、視聴者が飛ばしたドローンに映る源蔵の車は渋滞を抜けており、それが一層焦燥感を駆り立てる。


「くそっ、このままじゃ逃げられる!……こうなったら…!」


 映像では源蔵の車の外傷は修復されており、このままではすぐに時空を飛ばれてしまうという危機感に襲われた帝里はとうとう我慢できず、車から降りようとドアを開ける。


「ちょっと帝里さん!?一応時速50km出ているから危ないですよ!!?」


「でも!!」


「落ち着きなさい、帝里!マナが少ない今のあなたが焦ったって魔法もろくに使えないのだからっ――」

「姉上っ!!」


 双治郎と羅瑠の前でつい勢いで魔法の話をする玲奈を京介が大声でたしなめ、玲奈も慌てて口を押さえるが、もう遅い。


「魔法…?なんでこんなときにそんな話…?テリー、どういうこと?」


 双治郎が帝里達に問い詰めてきて、帝里、玲奈、京介は黙り込んでしまう。


「前々からテリーが僕たちに何か隠しているのは分かってたけど…今回のと関係があるならちゃんと話してよ!!僕だって、情音ちゃんやイブちゃんを助けたい!」


「それは……」


 帝里は口ごもってしまう。この後、源蔵と遭遇したらおそらく戦闘が開始され、もう遅かれ早かれ魔法のことを隠せなくなると思うので、この二人には話しても良いのだが、今はゆっくり説明している暇がないのだ。


「…双治郎、ここは入多奈に行かせてやれ」


「先輩…?」


「今の状況をどうにか出来そうなのはこいつだけなんだろ?情音が助かるなら、入多奈を早く行かせるべきだ。未来とやらに帰られる前に」


 一心にコメント返信をしていた羅瑠が顔をあげたかと思うと、双治郎をなだめ、この現状を完璧に把握した行動を取る羅瑠に思わず帝里は言葉を失う。


「…だが、全てが終わったら全部話してもらうぞ。貴様らが魔法というものを知っていることや何から何まで。…実況メンバーの間で内緒事は無しだからな?」


 羅瑠の言葉に帝里はしっかり頷くと、再びドアを開け、車から飛び降りる準備を始める。


「……待ちなさい、帝里」


「…玲奈?」


「早くしないといけないのは分かってるわよ。でもちゃんと真面目な話よ!あんた…本当に行くの?」


「……??」


「別に行くのが全てじゃないってことよ。まず情音を連れているのは人質のつもりでしょ?これ以上何かするのは、あの子に危険が及ぶのよ?

 確かに源蔵って奴は気に食わないけど…世界を平和にする方法を持ってそうだったし、任せてもいいんじゃないの?あんたが全て背負い込むことはないのだし」


 玲奈の言葉に帝里の中で深く響き、少し踏みとどまる。

 別に玲奈は邪魔したいわけではないのはよく分かる。帝里がこれからどうしたのかという質問の続きを問うてくれている。答えを出す最後のチャンスを与えてくれたのだ。


「…………やっぱ分からない…まず剛堂さんも連れて行かれる可能性もあるし、相変わらず全く俺の気持ちはまとまらないし。でも……」


 真剣な目でこちらを見てくる玲奈に帝里は意思表示をするように車から身を乗り出して、玲奈の目を真っ直ぐ見返す。


「俺はイブの勇者でいたい!!これだけははっきりしてる!この先どうなるか全然分からないけど、これだけはぜったい譲れない!!」


 帝里の言葉に息を飲む玲奈に帝里は笑顔を見せる。


「悪いな、どうやらまだまだ俺は夢を見ていたいらしい。

 迷ったときはやりたいことをするのが俺の勇者道ってやつなんだ」


「………はぁ、分かったわよ」


 玲奈が呆れたようにため息をつくと、疲れたような笑顔を見せる。


「それじゃ、俺は…」


「ちょい待ち帝里!……あったあった…ほい!」


 また玲奈が飛びだそうとした帝里を引き留めると、ポケットから何かを取り出し、帝里にそれを投げつける。


「これは…?」


「小型通信機よ。試しに作ったやつで、これで私が源蔵の場所を教えてあげるわよ。いちいちスマホ開いて調べるのめんどくさいでしょ?

 電源つけて耳に入れとけば、どこでも通信可能よ。GPSもオンにしといたから最短距離コースでいくわよ!!」


「おお、ありがと!

 じゃあ…行ってきます!!」


 周りを見渡し頃合いを見計らって、帝里は車から飛び出して行った。



「…いいんですか、姉上?選択肢に自分が入ってませんでしたが」


「あんたといい、羅瑠といい…だから私は帝里に恋愛感情はないから!

 ただ…あいつが勇者でいたいって言うなら、私はそのパートナーとしていたいだけよ」


「それは…もう…どうなんでしょうか…」


 運転しながら困ったような表情で笑う京介に玲奈も自分に呆れたように笑う。


「いいじゃない!それが私のしたいことなんだもん!

 さーて、いっちょ行きますか♪源蔵め、私と帝里を敵に回して無事で済むと思うなよ!!」


 玲奈はパソコンを膝に乗せ、耳に通信機をはめると、不敵に笑うのだった。





「……ッ!!…」


 車から飛び出した帝里は地面につくと一回転して勢いを殺し、そのまま体勢を立て直すと、魔法で跳躍力を上げて再び飛び上がり、高速道路から一気に飛び降りる。

 後ろからどよめきがかすかに聞こえるのを無視し下を見ると、高速道路の下は川だったようで、水面が迫り来るなか、帝里は腹に力を入れて、体中の魔力を一カ所に集める。


「“ブレーヴ…オクスタル・サーラ”ッ…!!」


 全身全霊の力を込めてクリスタルを呼び出すと、緑色に輝く風属性のクリスタルが一つ、落下する帝里の下に出現する。


「一個だけか…でも今回は十分!いくぞ…!!」


 帝里とクリスタルが触れた瞬間、クリスタルが軽快な音と共に凄まじい威力の風を放出し、水面が荒々しく揺れ、帝里の体が空高く舞い上がる。


「…やっぱり、吹き飛ばされてる、って言った方が正しいよな…でもこれが一番速いし、さっさと見つけますか」


 その後も数回、クリスタルに上空に飛ばしてもらい、下の人に見えない高さまで来ると、 一つのクリスタルを巧みに使い、帝里は空中でバランスを取る。


“…帝里、聞こえる?行き方教えるわよ?”


「聞こえる!体勢も整ったし…ナビ頼む!!」


玲奈の指示を聞く限り、まだそこまで距離は離されていないようで、イブと情音を連れている源蔵のいる方角を睨みつける。


「待ってろ、イブ、剛堂さん!!すぐに追いついてやるからな!!」


帝 里は指示された方向に向かって暴風を起こすと、風に乗って高速で移動しながら、空からの追跡を開始したのであった。

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