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かけもちの勇者様!!  作者: 禎式 笛火
3章 思い描いた大学生活は程遠くて…
24/58

デート…?with玲奈

※前回までの超簡単なあらすじ※

大学生になり、1ヵ月が経とうとしていた頃、情音、玲奈、双治郎と羅瑠の3ペアとそれぞれデート(?)の約束をしてしまう。

それぞれには秘密にしなければならない3つの約束。無事、帝里とイブは切り抜けることが出来るのか…



 あれから数日後、


 少し早い夏を感じるほどカラッと暑く、とても良く晴れた日のお昼時、大型連休の初日ということもあって、今居る公園も多くの人で賑わう中、帝里はポツリと噴水の隅で一人佇んでいた。


 今日は玲奈と「大学合格と入学のお祝い」ということで、二人で出かける日なのである。


 周りからは散々、デートだの違うだの、と言われてきたものの、帝里としては、玲奈にそんなつもりはないと思っているのだが、イブの協力のもと、デートとしても準備はしっかりしてきたので、どちらであっても大丈夫だ。


 そんな綿密な計画を頭の中でおさらいしつつ、帝里は少し緊張した気持ちをほぐすために辺りをゆっくりと見渡す。

 が、玲奈どころか、あれほど付いてくると言っていたはずのイブの姿すら探しても見当たらず、むしろ余計に不安になってしまった帝里は堪らず左耳の中に仕込んでおいた小さな機械に恐る恐る魔力を送り込む。


「…あ、あー…イブ、聞こえる…?」

 

“―…!はいッ!ばっちり聞こえますよ!!―”

 

「いッ!?うるさっ…!…やっぱりここまでする必要ある?」

 

“今更そんなこと言わないで下さいよ…!

 頑張ってわざわざ未来から取ってきたのに…”


 少し拗ねたようなイブの文句がキィィンとまた耳の中で響いて、その耳鳴りに帝里は思わず顔をしかめ、魔力の量を減らして音量を少し下げる。

 

 この帝里が耳に仕込んでいる装置、これはイブが未来からもってきた小型通信機である。

 魔力に反応して作動するといったもので、魔力の量で簡単に音量調節ができるだけでなく、なんと聞きたい声だけを抽出して聞けるといった優れものなのだ。

 

 これを使うことで、どこに行っても帝里と玲奈とのやり取りをイブが遠くから聞くことが出来るし、さらに別の所に魔力を込めると肌色になって、玲奈にも気づかれにくい。


 これほど今回にぴったりなアイテムはなく、つくづく未来の発展には感心させられつつも、帝里はキョロキョロしながらもう一度イブに声を掛ける。

 

「…で、お前はどこにいるんだ?見えてないと困るだろ?」

 

“フッフッフ~!その点はご心配なく♪今もエル様の真上で見守ってますよ!”

 

 そう言われて帝里は釣られるように空を見上げると、雲一つ無い澄んだ青空にポツリと小さなシミのようなものがうっすらと見え、目を凝らすとイブがこちらに小さく手を振っている。なるほど、視覚的情報は直接見て補うようだ。


“-あっ!エル様!玲奈が来ましたよ!!”


「はいはい、了解」


 朝からずっとテンションが高いイブから興奮気味にそう告げられ、少しうんざりとしてきた帝里が時計を見ると午前10時、玲奈との集合時間である。


「や、やぁ、帝里!」

 

「おう、時間ぴったりだな」

 

 緊張しているのか、声は少し上擦らせて現われた玲奈は普段と違った明るい白の涼しそうなワンピースと格好可愛らしいをしており、もしかしたら京介が一枚噛んでいるのかもしれないと思いながらも、その気合いの入り様が一層帝里の緊張を高ぶらせる。

 

「さて、揃ったわね!」


「いや、京介が居ないんだけど…」


「……京介はたまたま時間が空いてなかったからね…尊い犠牲だったわ…」


「よく言うよ、このデートのために京介の無理な日を狙ったくせに」

 

「ッッ!!!ち、違うから!!デ、で、デートじゃないっ!!」

 

 白々しく前で十字を切る玲奈に帝里が呆れてつい本心を滑らせた途端、急に玲奈が顔真っ赤に染めて激しく否定する。


「誘った後に気づいたけど、これは違う!!」

 

「じゃあ、なんで日を変えなかったんだ~?

 それに同じ家に住んでいるくせに、別々に出発してるし」

 

「きっ…気分の問題よ!変えたら意識してるみたいになるじゃない!

 それに、あんたと二人だけとか、今さらだし」

 

「いや、一度も二人だけでどっか行ったことないと思うけど…」

 

「-っ!!とにかく!私は別にあんたのこと好きじゃないしデートとも思ってないから!ほんとに!!!」

 

「はいはい…」

 

 緊張をほぐすために少しからかってやる程度の気持ちで口に出した帝里だったが、ここまで言われるとは思わず、頭から否定されて流石に少しへこんでしまい、これ以上の詮索しないことにする。

 

「じゃあ、どこ行くんだ?」

 

「……ふぅ…うーん…そうね、まずは服を買おうかしら」

 

「って、いきなりデートの定番かよ」

 

「ち、違うわよ!あんたらがいつも『センスがない、センスがない』って言うから、一気に買い替えるの!!

 せっかく闇の浪人生活を抜けて、花の大学生になったんだから!」

 

「闇ねぇ…」

 

 しかし、玲奈の主張も分からなくもない。帝里も、せっかく大学生になったことだし、新しい服が欲しかったところだ。

 

「じゃあ、まずは近くのショッピングセンターで見てみるか!」

 

「さんせ~い!」

 

 帝里の提案に玲奈が嬉しそうに頷き、こうして玲奈との二人での‘お出かけ’が始まったのであった。

 

===============================


 

「ふぉぉ…!!やっぱ、たくさん服あるわね!」

 

「そりゃ服屋だからな…メンズは…あっちかな」

 

 こうして近くのモールの一番大きな店に来た二人であったが、どうやら玲奈はこれまでネットでしか服を自分で買ったことのないらしく、特有のキラキラ感に圧倒されてながら物珍しそうにゆっくりと店の中に入っていく。


「…!ちょっ、ちょっと!?」


 そんな調子で大丈夫なのかとやや心配になりつつも、帝里も自分の服を探しに行こうとした瞬間、玲奈に慌てたように腕を掴まれ、帝里は怪訝そうな表情で振り返る。

 

「…俺は女装の趣味もないし、似合わないぞ」

 

「はぁ?誰もそんなこと求めてないわ

 それより、その…あんたが私の服選んでよ…」

 

「…え?」

 

「…じ、実は、これまで真剣に服を選んだことなくて…手本というか、コーディネートを教えてよ!!」

 

「いや、事前に………俺だってそんなファッションとか詳しくないし、まして女性ものなんて…」

 

“私にお任せください!!!”

 

 玲奈の要望に逃げ腰の帝里が自信なさげに後退っていたそのとき、突然通信機から声が聞こえ、肩をビクつかせながら帝里が慌てて周りを見渡し、天井にイブが張り付いているのを見つける。

 

「だ、大丈夫なのか!?」

 

“ふふん、今こそ私の出番です!

 玲奈の目的の半分は叶えてやる、なんと『落とさぬよう、呆れられぬよう作戦』にぴったりなんでしょう!!”

 

「う、うん?よく分からないけど、頼むわ」

 

“はい!未来のファッション、見せてやりますよ!”

 

 いちいち恐いフレーズを混ぜ込んでくるのが気になる所ではあるが、とりあえずイブに全て任せることにし、通信機からイブに指示された通り、服を選んでいく。



 こうしていくつかの組み合わせがイブによって見繕われたわけだが、どれも無難におしゃれで、思ったより普通で良い感じに収まり、帝里は内心ほっとしながら、玲奈の顔を窺う。

 

「ふーん…こういうのが好きなんだ」

 

「え、いや別に俺は……ってあれ…?わりと好きかも…」

 

 吟味するかのように呟く玲奈に否定しようとするが、言われてみると確かにどれも帝里好みであり、帝里は不思議そうに首を傾げる。

 

“…あぁー!?つい、エル様の好みに合わせてしまった…!!”

 

「なんでそんなこと知ってるの!?俺自身ですらよく分かってないよ!?」

 

「何ぶつぶつ呟いているのよ。とりあえず、適当に一つ試着してみるわ!」

 

 もうすでに満足げな玲奈が意気揚々と試着部屋に入っていくと、シャッとカーテンを勢いよく閉めていき、切り取られたような静けさが帝里の周りに訪れる。


 さすがの帝里も、ここで自分の服を探しに行くのは愚行だということはイブに言われるまでもなく分かっており、玲奈が出てくるまで前で待つことにし、近くにあった椅子に座る。


 

 正直この暇な時間をどう潰そうかと、出てきた玲奈を褒める言葉を考えていたときであった。

 

「きゃッ-!!?」

 

 突如試着室から玲奈の鋭い悲鳴が聞こえて試着室の中が慌ただしく暴れ出し、急いで帝里は駆け寄るとカーテンに手をかけるッ-

 

 …が、

 

「って開けねーよ!!何このラノベお決まり展開!

 異世界勇者だった俺が今さら引っ掛かるかよ!!」

 

 ここまで丁寧なフラグだっただけに、イブに警告されるまでもなく気づいた帝里は静かにカーテンから手を離すと、どうだと言わんばかりにどかりと座り直す。


 開けるのが礼儀?冗談じゃない。どうせ服に髪が引っ掛かったとか虫が入ってきたぐらいのハプニングであり、それで制裁を食らって3日連続デートの初日で大怪我なんてお断りだ。玲奈の下着姿は試着室の中に収まっておいてもらおう。

 


 こう結論付けて何もせずにただ待つこと1分、ようやくカーテンが開いて玲奈が出て来るが、着ている服がなぜか前の服のままであり、せっかく良い褒め方を思い付いていた帝里は思わず眉をひそめながら詰め寄る。

 

「おぉ、変な悲鳴が聞こえたけど、大丈夫か?

 …着替えてないけど、もしかして気に入らな―」

 

「…聞こえていたなら助けなさいよ!!」

 

「どはぁぁぁ!!?」

 

 俯いていた玲奈から不意討ちの飛び膝が見事帝里の腹にジャストヒットし、無防備だった帝里は派手にぶっ飛ばされる。

 

「ほんと死ぬかと思ったのよ!!?あんたは何してたのよ!!」

 

「ゲフッ…ぐっ…ぉほっ…いやだって…えぇ?」

 

 激昂する玲奈に何が起こったか分からない帝里が困惑していると、耳の奥から“はぁ…”と溜め息が聞こえ、

 

“まったくエル様はこれだから…

 玲奈は右腕を通すところに、頭と腕を突っ込んで、ちょうど肩固めの状態で窒息していたのですよ”

 

「器用だな!?てかお前は覗いてたのかよ!」

 

 試着室の上を見ると、イブが頬を膨らませて、天井に張り付いており、もはや店に入り込んだ虫のようだ。

 

「仕方がないから、服破っちゃったじゃない!!ハァ、弁償しないと…」

 

 玲奈が困ったように溜め息を吐きながら持っていく洋服は、確かに右袖から腰にかけて破れているが、よく見るとやけに綺麗にばっさりと裂かれており、どうやらイブが代わりに魔法で切って助けてあげたのかもしれない。

 

「よし、弁償終了。さ、次の服を試すわよ!」

 

「え!?まだ続くの!?」

 

「当たり前よ!今買えたのは布切れになった服よ!?もう全部試してやるっ!!」


 もう諦めると思って帰ろうとしていた帝里に、不満が爆発したようにキッと目を尖らせた玲奈がそこらの服を適当に掴むと、立て籠もるようにシャッと再びカーテンを閉めて入っていく。


 こうなると、もう玲奈の気が済むまで付き合うしか他なく、帝里はイブと呆れたように顔を見合わせると、くたびれたように椅子にもたれ掛かって玲奈が出てくるのを待つのであった。

 



 そして、途中で帝里の欲しいものを探したり、服の他にも見て回ったりなどを挟みながら買い物を続けること一時間半後、ようやく満足げな表情に戻った玲奈が成果を眺める中、やっと解放された帝里は疲労感と空腹で、もう丸一日やりきったように感じ、すでに少し帰りたくすらなる。


 というのも、


「いや、さすがに買いすぎでしょ…」


「ま、まぁ、ちょっと多いとは思うけど…

 こういうときはパァッと派手にいった方が良いのよっ!!服なら数年は持つし!!」


「いや、流行って確か毎年変わるからね?」


 大量に買い込んだ荷物を庇うように叫ぶ玲奈に、帝里は呆れ果てながら玲奈をどかせて荷物を確認する。

 

 なぜこんなに玲奈のテンションが高いのかというと、実は数日前に人生初バイトの給料が振り込まれてたからであり、そんな玲奈がうっきうきで服やら趣味やらに散財した結果、こんな二人でも持ちきれるか分からないほどの荷物が出来上がったのである。

 

「これはもう帰るしかないな…」

 

「はぁ!?何言ってるの!今こそあんたの出番でしょ?

 さぁ、はやく魔法でちゃっちゃと片付けなさいよ!」

 

「えぇ!?でも魔法はッ―!」

 

「トイレとか人目のつかないところで使えばいいでしょ

 別に誰も私達のことなんか見てないから荷物が減っても気づきやしないわよ」

 

 そう言って追いやるように玲奈から荷物を全て押しつけられた帝里は、仕方がなくフラフラになりながらもなんとかトイレに入り、荷物を召喚魔法“エレルナ”で逆に収納していく。

 

「ったく、俺を四次元ポケットかなにかだと思ってないか、あいつ…

 ……まさか今日呼んだのはこのため…?」

 

 そうぼやきながら次々と荷物を片付けていくが、それでも少し時間がかかってしまい、そのおかげで近くにいた客が入る前と一新されて、帝里は安心して出てくるが、玲奈の姿も見当たらず、慌てて辺りを見渡す。

 

「あれ…?どこ行った!?」

 

“右手10mほど先です!”

 

 イブに言われるがまま右を向くと、玲奈が店先でぼんやりと何かを眺めているのを見つけ、ほっとしながら軽く早足で駆け寄る。

 

「急にどこか行くなよっ…!…何を見てるんだ?」

 

「え、あ、ごめん……かなりかかったわね…やっぱり預かってもらう?」


「ううん、全部入ったから大丈夫」

 

 玲奈の問いに頷きながら、ちらりと玲奈の視線の先を追うと、まん丸な白色の透明感のある宝石が一つだけついた、シンプルながらもどこか品を感じさせるネックレスがショーケース越しに透き通るように輝いている。


「…欲しいの?」

 

「いや、別に…給料も結構使ったし、これからも使う予定だから、ここで無駄遣いは出来ないわ」


「えっ、まだ何か買うの!?」


「さっ、次よ!お昼御飯行きましょ!

 お腹空いたでしょ!!?行きたい店があるの!!」


 ハイテンションに戻った玲奈が目を輝かせて腕を突き出すと、浮き足だった様子で次の店に向かい始め、空腹だった帝里もようやく明るい気分になり、急いで玲奈を追いかける。



「…ハァ…まったく…いつも散々メタイことばっか言っているくせに、今の見逃しますかねぇ…」

 

 イブはその二人の後ろ姿を呆れたように見送ると、溜め息をつきながらその店に入っていった。

 

==============================

 

「んんっっ~~!!!うまいっ!!

 やっぱり外で食べるならラーメンよね!」

 

「いや、せっかくの入学祝いなんだし、もっと豪華なものを…」

 

「いいのよ!ラーメンなんて自分で作ろうと思わないし」


 そう言って玲奈は勢い良く麺を吸い込むと、満足そうな笑みを浮かべる。 

 確かに玲奈の作る料理は、育ちのせいか宮廷料理のようで凝ったものが多く、玲奈からすればこちらの方が良いのかもしれない。

 

「あ、そう言えば、実況サークルはなんか進展あった?羅瑠は何するって?」

 

「んー、特に何も。あ……俺のゲームをやろうって言ったら断られたよ…」

 

「あー、あれねぇ…はふっ…!妙にリアルなくせに所々適当なのよ」

 

「…全く同じことを羅瑠先輩に言われたよ…」

 

「そう……あれって、あんたの実体験なんでしょ?なんで適当なの?飽きたの?」

 

「それがさぁ!!」

 

 玲奈と羅瑠では少し話が違う。玲奈は帝里が異世界に行ってたことを知ってるので、理由も愚痴も素直に言うことができ、箸を置いて、口の通りをリセットするために水を一口飲むと、これまで散々酷評されてきた不満をぶちまける。

 

「…記憶がない…?なにそれ?」

 

「よく分からないけど、多分特定の人と場所の出来事とかの記憶が消えてるのかな……まぁ異世界干渉ってやつだな」

 

「異世界干渉??……だから……ま、まぁ、私にはよく分からない話だわ」

 

「でしょうね。あーあ、最初に救った村娘とか、絶対俺にベタぼれだっただろうになぁ!」

 

「そんなわけあるかっ!!」

 

「うぉい!?急にどうした!?」

 

「あ、いやっ…あんたが調子乗ってるから、活入れてあげただけよ!!

 さぁ、食べたなら早く出るわよ!次の予定があるんだから!」


「まっ、待って!まだ残ってるから!!」

 

 急に大声をあげた玲奈が話を強引に切り上げるように一気にスープを飲み干して席から立ち、帝里は慌てて残りのラーメンを口にかけ込む。


 そして、精算を終らせて外に出ると、日差しが眩しいほどに照りつけてくるが、お腹が満たされた今、植物のように力が体へ補充されていくように感じ、帝里は静かに目を閉じてその暖かみを味わう。


「…で、次はどこに行くんだ?」


「ん~、買いたい物はねー…機械系の部品と…まぁ、1から作ることになるだろうからブレボとか加工用具かな」

 

「また何か作るのか…?家の防衛設備はもう充分だと思うけど…」

 

 玲奈は幼い頃に機械いじりも習得していたようで、様々なシステムやその装置すら組む、実用レベルの腕前なのである。

 

「違うわよ…!ふふふ…なんと魔法を取り組んだ装置よ!!」

 

「…へ?」

 

「まずは、魔力に反応して点くLチカみたいな物かなぁ~…でも、いつかはもっと凄い大発明をしてやるわ!!

 そうね…魔力を使って音を聞き分ける通信機とかどうかしら!?例えば、これくらいの大きさで、耳の中にこう―」

 

「わ、わー!?」

 

 何処かで聞いたような話をしながら玲奈が急に通信機の入れた方の耳を覗き込もうとしてきて、帝里は慌てて耳を押さえながら、玲奈から離れる。

 

「なによ、急に恥ずかしがっちゃって…なら他にも魔法を使うゲームとか―」

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待て!!なんでそんなもの…」

 

「…ハァ、帝里。あんた、この世界を平和にした後のことって考えてる?特に魔法について」

 

「平和にした…後のこと…?」

 

 世界平和。最近口に出すことは少なくなったが、諦めたつもりはなく、正直どうすればいいかの模索に必死で、その先のことなど全く考えていない。

 世界の国々を一つにまとめ、魔法を正しく使うように導く。しかし正しく導くとはどうすればいいか、全く方針すら決まってないし、さっぱり分からない。

 

「で、私なりに未来を考えてみたのよ。

 まぁ、平和になったとする。でも魔法はきっと広まってるでしょ?そしたら何か捌け口が必要となってくる。

 そこで魔法の使った道具の出番ってわけ。道具なら使う魔法が決まってくるし、道具の開発に注目がいって、魔法自体は発展しないわ!!」

 

「な、なるほど…」

 

 力説する玲奈の気迫に押され、帝里はただただ頷くしかなく、話も納得のいくもので、目から鱗で、とても勉強になる。

 そしてなにより、


「お前もちゃんと考えていてくれたんだな…」

 

「…ふんっ、私もあんたの夢に乗るって言ったんだし、当然よ

 あんたの足りないところは私が守ってあげる。だからあんたは全力でこの世界を救いなさい!!」

 

 照れつつも、そう言って笑いかけてくれる玲奈の笑顔に、帝里は少し未来が明るく照らされたように感じたのであった。


===============================



「ふぅ~!いやぁ、買った買った…!

 まぁ、帝里に全部収納させたから実感が全く沸かないけどね~」

 

 あれから玲奈が買いたいものを求めて様々な店を歩き回り、いつしか空も真っ赤に染まった夕方ごろ、今日を終えた帝里達は最初の公園で休んでいた。

 今日は結局、昼食後もずっと買い物尽くめで、本当にデートというよりも在庫補充とかの方が正しいかもしれない。


「今日はありがと!!楽しかったわ!欲しい物もいっぱい買えたし!!」

 

 しかし、公園の椅子に腰かけて、ジュースを飲みながら足をパタパタさせている満足げな玲奈を見ていると、これはこれで良かったように思え、帝里も嬉しそうに頷く。

 

「さぁ、帰りましょうか!そろそろ京介とイブも帰ってくるだろうし」

 

「あ、ちょっと待って!」

 

 タンッと勢いをつけて立ち上がった玲奈がのびのびと背筋を伸ばして帰ろうとし始め、帝里が慌てて呼び止める。

 が、どう切り出したらいいのか分からず、仕方がなく帝里は右手を突き出し、

 

「これ…プレゼント」

 

 そう言って手を開いた瞬間、シャリンと軽やかに白い光が零れ落ちると、ある高さで止まって踊るように上下に揺れながら、金の鎖で帝里の手にぶら下がる。

 その見覚えのある光に、あっ、と玲奈が声を上げて目を見開くと。

 

「あのネックレス…いつの間に…」

 

「なぁに、ちょっとした魔法だよ。あ、ちゃんと金は払ったから!」

 

 憧れの定番の渡し方をしてみたものの、直接玲奈につけてあげるまでは流石に恥ずかしすぎて無理だったので、ケースと一緒に手渡しする。


「あ、ありがと…」

 

 照れて顔が赤くなっているのを誤魔化すかのように玲奈は敢えて夕日の方向を向きながら、さっそくネックレスを胸につけてくれると、その陽差しを受けて宝石の色が変わり、より一層幻想的な輝きを放つ。


「…確かに欲しかったのもあるんだけど、実はこれを見ていたのは理由があって…うん、ちょうど良い機会ね

 えっと……はい、これ!」

 

 決心するかのように玲奈が持っていた鞄を漁り、何かの袋を取り出すと、帝里に手渡す。


 まさか玲奈からお返しを貰えるとは思っておらず、ドキドキしながら玲奈に促されるままに袋を開けるが、中身を見た帝里の動きがピクリと一瞬止まる。


 なんと入ってたのは、帝里が買ったのと同じネックレスであり、玲奈はすでに買っていたのか、と一瞬ひやりとするが、よく見ると付いているのは宝石でなく、

 

「…これって…魔導石…?」

 

「うん。えっと…そう!たまたま見つけたのよ!あんた欲しがってたでしょ?

でも、渡すタイミングがなくて…それにまだ紐の部分の良いのが見つかってなくって…」


「いや、全然大丈夫っ!」

 

 さっそく帝里も首につけてみて、魔力を送り込んでみるが、何の反応も示さない。正直、帝里は魔導石に詳しくないので、どういう効果かさっぱり分からないが、とりあえず御守りがてら着けておこう。

 

「なんかプレゼント交換になったな

 さて、帰るか」

 

「いや、集合もバラバラだったし、解散もバラバラにしましょ!夕飯の買い出しもあるし

 じゃ、またね♪荷物は私の部屋の入口に置いといて!」

 

 そう言って玲奈はにっと微笑むと、手を振りながら公園から出ていった。

 

 

「エル様!完全にやってくれましたね!!」


「いや、これ考えたのイブだよね!?」

 

 そんな玲奈を見送っていると、玲奈の姿が見えなくなるや否や、頬を膨らませたイブが目の前に飛び出してきて、怒りながら帝里を責めてくる。

 

 ネックレスを勝手に買う魔法。そんなものが存在するはずもなく、帝里達が立ち去った後に、あのお店で帝里の代わりにネックレスを買ってくれていただけの単純な話である。

 あとは途中でイブから受け取れば、準備は万端。実はこの時になってやっと帝里は気づいたわけであるが…

 

「でもやっぱり私は必要でしたね!!」

 

「はいはい、そうだったな」

 

 何かしらこのデート作戦に関わりたいのか、恩着せがましく言ってくるイブに、仕方がなく帝里が頷いてあげると、ようやく気が晴れたのか、イブが満足そうに飛び回る。

 

「と、とりあえず今日は玲奈で良かったです…

 明日こそは絶対に落としてはいけませんからね!!」

 

「お、フラグ」

 

「そんな変なフラグだけ発見しないでください!!」

 

 夕日の中でギャーギャー騒ぐイブを連れて帰りながら、1日目の玲奈との‘デート’は無事終わったのであった。



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