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人魚姫  作者: 如月 雪
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邂逅

新しい人物が登場してきました。


流夏と海夜の繋がりは…

「お客さん 何処まで?」


不意に運転手が声を掛けてきた




「あっごめん。渋谷まで戻ってくれる?」



「喧嘩でもしたんですか?お二人共ずっと喋らなかったし…」


今まで気を使ってくれていたんだろうな。



無口な運転手だなと思っていたんだ









ー三月八日ー







あいつは自らの命を絶った





同じ大学の同じ学部を受けた二人の内 一人は合格し、もう一人は不合格だった





ずっと一緒に切磋琢磨しながら道を極めたかった






それなのに…






俺が殺した







あいつのプライドを、心を傷付けた




誇り高く、美しい心を傷付けてしまった




今年も あいつの好きだった百合の花を持って あいつが眠る高台の墓地にやって来た





「翔 そっちはもう桜が咲いてるか? コッチはまだまだ寒くて今年の桜は遅れるみたいだ。」



翔がいつも食べていたをプリッツを墓石の前に置き、海夜は歩き始めた









墓地の入口で海夜は、黒いスーツを着た男性とすれ違った。誰かを待っているみたいに白い菊の花と水桶を持っていた。 そういえば、去年も見かけた気がする。





駐車場の一番奥に停めてあった自分の車のドアを開けたとき、海夜は思いがけない名を聞いた。




「るう。遅いぞ。また遅刻だ。昨日 遅くまで出歩いているからだぞ。」









 …るう…




何処かで聞いた名前






あの名前は…







海夜はふとドアを開ける手を止め、声のした方を見た






五年前の出来事が走馬灯のように頭に蘇る



最初で最後の楽しくて幸せだった夏









*********************************************




まただ。




今年も 誰かが先に来たみたいだ。




毎年 兄の命日には

家族以外の誰かが朝早くにお参りに来ている。




今年こそはと 朝早くに来るつもりだったのに また遅刻してしまった。これでは、何のために夕べ家に帰ったのか判らない。




流夏は聖マリアンナ学院の寮に入っている。家からでも通える距離だが、あの広い家の中で、あの人と一緒にいることに耐えられなかったのだ。


あの人…


父の新しい奥さん




今までの女性(ひと)みたいに、数ヶ月いるだけなら我慢出来た。


愛想笑いをして、他愛のない世間話をしていれば良かっただけなんだから。


でも、今度の女性(ひと)は最初から違っていた。


私に媚びるわけでもなく、愛想笑いをするわけでもなく、我が儘に高飛車に振る舞っていた。



そう……まるで…私のように…




大嫌いな女




美香




あの人を見ていると自分を見ているようで、気持ちが悪くなる。




父にしては珍しく、美香とは私の承諾無しに籍を入れてしまった。




これまでの女性は、数ヶ月私と暮らしただけで逃げ出したから、父の妻だった訳では無い。



父にとって妻と呼べる女性(ひと)は、私を産んで直ぐ亡くなった母 由希子と、今の奥さん 美香だけだ。




「パパ。今日は美香さん来なかったのね?」


お兄ちゃんの命日にも顔を出さないなんて、あの女は何を考えているのか。



「ああ。昨日急に仕事でトラブルが入ったと言っていたから、朝早くに出掛けたみたいだな。多分、山梨の工場じゃないかな。」



美香は会社を経営しているバリバリのキャリアウーマンで

仕事を生きがいにしているような女性(ひと)だ。

いつも一流品を身に付け、隙を見せない完璧な女性。


だったら、パパみたいな中年男と結婚しなくても良いんじゃないかと思ったものだ。



初めて紹介された時は三十代だと思っていたが、本当はパパより一つ年上なんだそうだ。


化け物なんじゃないの?




でも 一体誰なんだろう? お兄ちゃんの命日に来るって事は、お兄ちゃんの関係者なんだろうか。




恋人?友達?




ずっと離れて暮らしていた兄の交友関係など、父親にも妹の私にも知る術などなかった。




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