銃弾が不足してきたので打開策を考える
通常の戦闘時、軍隊では一人あたり百数十発の銃弾を携帯している。
これを一日ですべて使い果たすとして、僕たち20人が戦闘できる期間は、単純に倍数して11日。
実際には全て使ってしまうような非常事態はなかなかないし、これは僕たちが所持している5.56x45mm NATO弾だけで計算したものなので、厳密な数字ではない。
現に銃弾はまだ余っている。
しかし人数が増えて不足しているのは確かだ。
銃弾のプレス機や、火薬を調合する道具を探して自作しようかとも思ったが、素人が簡単に出来る作業ではない。
銃弾が暴発すれば命の危険もある。
面倒な計算はしたくないのだが、こればかりは仕方がない。
今なん発残っていて、これから何発必要になるかだいたいの値を割り出しておく。
第二次世界大戦に備えた日本軍は、年間約4億発の銃弾を作ったという。
その後戦争はなかったとはいえ、約100年前に出来たことが現代で出来ないわけがない。
自衛隊に配備されている弾薬が何発なのかは分からないが、駐屯地を漁れば相当数の弾が発掘できるはすだ。
もちろん、無事に持って帰れたら。
立川の西に陸上自衛隊の駐屯地がある。
駐屯地があるということは武器庫もある。
数万発を持ってくるのではジリ貧になるだけだ。
ここはドカンと一気に数十万発は運んでおきたい。
仮に30万発運ぶとして、約6000kgくらい。
30kgのセメントを300袋運搬したこともあるから余裕である。
20人といえばほとんど小隊規模だ。
通常は長期戦を行うことはない。
しかし僕たちの場合は、分隊規模の少人数でさえ長期戦になることはありうる。
緊急時にあたふたしないよう、それぞれの役割をはっきりさせておいたほうがいいだろう。
噂ではイワンの装甲車に大量の銃弾が隠されているという。
別に隠しているわけではないと思うが、イワン自身は見せたがらない。
彼と交渉して譲ってもらうのもアリだけれど、なるべく借りは作りたくない。
彼の装輪装甲車タイフーン-Kには、おそらく荷物を10トンは載せられる。
そのうち1割が銃弾だったとしても、僕たちが今欲しい30万発以上が隠してある計算だ。
「イワン、銃弾を漁りに行きたいんだが、手伝ってくれるか」
ユキが不在の時を見計らって声をかけた。
「いいよ。いつ行く?」
「それは未定だ。それにしても今日は冷えるな」
11月も半ばをすぎればかなり冷え込んでくる。
コタツなど無い工場では寒さは天敵だ。
「こんなのロシアじゃ普通だよ。零下20℃からが寒いね」
「ところであの装甲車には銃弾がどれだけ積んであるんだ?」
「ブリザードを体験したことある? あれは死ぬよ」
やはりはぐらかされた。
イワンも意外と計算高い男だ。
ユキとの生活を考えて、老後まで何発あれば足りるかを頭に入れてあるのだろうか?
それにしては酔ったときに無駄撃ちしている気がする。
それを言うと、彼は
「やめてくれ、その技は俺に効く」
と言っていた。
なにはともあれイワンの助力を期待できるのはありがたい。
細々とした計算は本当に苦手なので、ゆくゆくは数字に強いというトモヤに丸投げしたい。
トモヤなら良い物資調達係になりそうだ。




