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仲間割れブルース

さて、起きたばかりの馬場雅功は機嫌が悪く、カズヤの提案を容易には受け入れようとしなかった。

提案を飲む代わりに、女子が多く乗車する車を自分に運転させろと迫り、助手席にはマリナを置かなければ言うことは聞けないと言い出したのだ。

馬場のような人間から遠ざけるための提案だったのに、彼と一緒にしては意味が無い。


しかしそれを言えば争いは避けて通れない。

馬場が現在のグループで力を持ち始めているのは事実だが、要注意人物は彼だけではない。

そのような要注意人物全員に企みをばれないようにして、人員を配置するのは困難だった。

いくら高偏差値の高校に通っていたといっても、やはり高校生のオツムで18名をまとめるのは厳しい。


ちょうど降りだした大雨の影響で、グループは個人経営のスーパーに足止めされていた。

車移動なので雨は関係ないと思いがちだけれど、実際に大雨の中を走行し、ゾンビに出くわせば晴れの日と比べて危険度が跳ね上がる。


車を移動させるたびに出入りすれば、必然的に濡れてしまい体力を奪われるばかりでなく、ストレス指数も上昇するというわけだ。

高校生三人にとっては幸いだった。

馬場の説得に時間をかけられるし、人員全員と意思疎通ができる。


車に乗ってしまえば運転手の発言力が高まり、連携が難しくなってしまう。

雨が上がる前に計画を固め、全員にウンと言わせる必要がある。

言うは易し行うは難しである。


「馬場さんお願いしますよ。他のことならいくらでも譲歩します。とにかく、女子だけ別の車に移すわけにはいきませんか」


「おめえよ、女だけ一箇所にまとめてどうしようってんだ。あいつらじゃゾンビが出たときに勝てねえべ? 男衆が守ってやらにゃ仕方ないべ」


理は馬場の側にあった。

彼の言い分は一見して筋が通っている。

それに引き換え高校生の主張は、自分たちの側に女子を集めて、よからぬことを企てているかのように見える。


「ガキが三人で何考えてんのか知らねえけどよ、俺は俺のやり方でいくぜ。この調子じゃ西側に理想郷があるなんて話も信じられねえな。おい皆! 雨が上がったら大島を目指すってのはどうだ? 免許は無いが船の運転を見たことがある。見よう見まねでなんとか着けるべ」


馬場の車に乗っていた者がこれに賛同した。

例外はトモヤ一人だけだった。


カズヤのいる車に乗っていた者は、カズヤに義理立てしてモジモジしていたが、最終的に半数が大島行きに同意した。

これで大島行きの人数が9人、全体の半分になった。


マリナの乗っていた車のメンバーは、女子二人が大島行きに加わった。

三人の男子はマリナの顔のファンだったので残った。

結果、11人が大島、7人が西を目指すということに相成った。


高校生たちの思いがあったにもかかわらず、女子の多くが大島行きに同意したのには、カズヤたちもショックを受けた。

西側に行くメンバーで、カズヤたちに着いていく女子はマリナともう一人、カズヤと一緒の車に乗っていた椎名梓しいなあずさのみだった。


「梓ちゃん、こいつらと心中するこたあねえぞ。俺たちについてくれば、大島まできっちり連れてってやる」


女子全員を連れて行きたい馬場はなおも食ってかかる。


「自分のことは、自分で出来ますから……」


デザイン系の専門学校に通っていたという梓は、控えめに言った。

控えめでも彼女自身に言われてしまえば、馬場も言い返すことが出来ない。


「まあ、梓ちゃんがそれでいいならいいけどよ……あとで後悔しても知らねえぜ。理想郷なんてものは端から無えんだから」


仕切りたがりの馬場は、雨が上がるまでの陣営をスーパーの中で二つに分けようとした。

安全面を考えると、別れるまでは一つにまとまっていたほうがいいとカズヤが言ったのに対し、多くの者が賛成したのはせめてもの救いだった。

もしここで馬場側とカズヤ側で分かれていたら、危機が迫ったときに対処しきれずに全滅しただろう。


連合離反から数日経って、彼らの頭も十分に冷えていた。

カッとなったら最後、命はないのだ……。

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