基地に戻って銃を盗ってくる
基地に到着した僕たちは、武装を品定めする前にある物を探して基地内を車で徘徊した。
ある物とはハンヴィーのことだ。
あるのかどうかわからなかったので期待はしていなかったが、基地の端に停められているのを見つけると、田中と抱き合って喜んだ。
中を見ると、発進する直前だったのかキーが挿しっぱなしになっていた。
エンジンをかけると問題なく動く。
やはりパニックものといえばハンヴィーだろうという意識は田中も同じだったようで、これに乗り換えてからは先程の弱気な表情とは打って変わって、鼻歌まで披露してくれた。
武器庫らしき建物を手当たり次第にあたってみたが、なかなか見つからなかった。
時折裸のままほっぽり出してある銃器があるだけで(僕とマミもこういうものから拾った)それをかき集めてもいいのだけれど、いちいち停まって拾うのは危険と判断したので見送ることにした。
基地のあるあたりは霧が晴れているおかげで、ゾンビたちが相当数うごめいていたせいもある。
車の音を聞いて寄ってくるも、スピードが遅いのでなんとか振り切ることが出来る。
マミの「なるべく殺生しないように」という言いつけは守れなかった。
方向転換やカーブの際、どうしても何人かのゾンビを巻き込んでしまう。
僕はその度に手を合わせて「南無」と唱えた。
昼過ぎになって、ようやく目当ての武器庫を発見した。
なぜ見つからなかったかというと、一度通り過ぎた建物の地下にあったからだ。
懐中電灯で照らすと、ずらりと並べられた銃器が光を反射して、それはそれは見事な光景だった。
予定の時間を大幅に超えていたので、急ぎ目に品定めをして、田中と二人で協力して地上へと運んだ。
重労働だったのは言うまでもない。
運びだしたのは
・M4A1 5挺
・HK416 5挺
・M24 5挺
・M110 2挺
・M82 1挺
・M72 LAW 3本
・5.56x45mm NATO弾 18000発
・7.62x51mm NATO弾 6600発
・12.7x99mm NATO弾 3000発
上記の品である。
加えて大量にあった土のう袋も積み込んで、基地を後にした。
戦争に備えることは、平和を守る最も有効な手段のひとつである――ジョージ・ワシントン
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工場に戻ると鈴木、阿澄、マミの三人に銃を運び出すよう言い
それが終わってから土のうに土を詰めて工場の周りに積んでおくよう支持した。
足りない分はまた調達するとして、フェンスも何もないこの工場は防衛に不向きである。
入り口を一箇所以外すべて閉じて、その周りを逆ハの字の形で囲っておけば
ある程度の侵入は防ぐことが出来るだろう。
銃器が手に入った今、生存確率は格段に上がった。
世界中に銃が普及している理由は簡単で、扱いやすいからだ。
人間が発明した武器の中で、石器や鉄器に匹敵する取り回しやすさ。
構造の複雑さに対して、使い方は引き金を引くだけという親切設計。
剣や槍に美的価値を認める人がいるのと同じで、銃にも人間工学的な美しさがある。
拳銃一つとっても、グリップ、握る部分の内部に弾を込めるなど誰が思いつこう。
発射の衝撃を利用して薬莢を排出して、そのまま次弾装填を行う。
こんなのは人間の発想ではない。
平和主義者は反対するだろうが、人が人を倒すのに最も効果的な武器は銃である。
広範囲を攻撃するミサイルや砲も効果があるが、それらは街や陣地を攻撃するための武器なので、個人で取り扱うにはかさばるうえに扱いづらい。
もちろん人の形をしたゾンビにも銃は有効だ。
持ち出してきた数からいって当面は5.56x45mm弾を使用するが、これには威力不足という意見もある。
撃たれても致命傷にはならず、平気で打ち返してきたりといった事例がいくつもあるらしい。
だが何の弾で撃ったとしても、敵がゾンビであれば死なない限り歩いてくる。
多少威力に問題があるとしても、頭部に何発も撃ち込まれれば無事では済まない。
それにゾンビは武装していないから、一発で仕留められなくても撃ち返される心配はない。
確実に狙えば5.56x45mmでも充分に倒せる。
なによりも小さいのでたくさん持って歩けるし、場所をとらない。
指示し終わった僕は、そのまま倒れるよう床に伏して深い眠りについた。
明日からもまた忙しい日々が続く。
体力を温存しておかなければならない。
いつでも動けるよう準備しておかなければならない。
大いに飲みかつ食い、眠る。
それが健康のヒケツであり、長生きのコツなのだ!