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中島が手土産を携えて来る

何をシミュレーションしたのか、イワンと喋るのにシミュレーションが必要だと言っていた中島が手土産を携えて工場に現れた。

眞鍋の運転で、夕方、幹夫を観測所に送り届けがてら来たらしく、今日は泊まっていくと中島は言った。

残念ながら、現在イワンは東方へ斥候に出ている。


予定の三日を過ぎても、イワンたちは戻らなかった。

それを伝えると中島は心底残念そうにしていた。

「心配ねえ。なんとか連絡はとれないの? アタシすっごく楽しみにしてたのに……」

それは今の彼の格好から一目瞭然だった。


東京喰種(グール) に出てきたオカマのような服装をしている。

この時期では寒そうなくらい肌を露出させている。

攻めるにしても攻め過ぎだろう……。


彼は紙袋を持っていて、イワンに渡すつもりだった品々を皆に配り始めた。

「いいのよ。みんなでいただきましょう」

「これはなに?」

僕は尋ねた。

「ロシアのお菓子らしいわ。名前は知らない。毒味は済ませてあるから食べて平気よ」


チョコレートのような、砂糖を固めたような、不思議な形をしたお菓子だ。

僕が怖気づいて口に入れられないでいると、幸いなるかなマミが食べてくれた。

「不思議な味。異国の味ね」

決して美味いとは言わなかった。


「こんなものどこで手に入れた? このへんのスーパーには置いてないだろう。まさかこのために遠出したんじゃあるまいな」

「そんなコワイことアタシがするわけないでしょう。ある時トイレに入ってるときにビンッ! ときたのよ。スーパーにはない貴重品が、宅配便のトラックに眠ってるかもって」


思いつきそうで思いつかなかった。

なるほど宅配便のトラックには、通販や郵送品が詰まっている。

中には外国から取り寄せた品や、高価な物も含まれているだろう。


「今日はその相談も兼ねて来たのよ。まあ、イワン様がいれば話は別だったんだけど」

「いや、イワンが帰ってこないことを先にこっちから連絡しておくべきだった。田中も帰ってこないし、これじゃ警備が手薄になっていかん」


「アタシでよければ、手伝うわよ」


癪ではあるが彼の申し出はありがたかった。



楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽



宅配便のトラックが横転しているという場所の地図を広げながら、中島と僕は作戦を練っていた。

中島班が食料調達のときに発見したこのトラック。

品を持ちだそうとすると、辺りから一斉にゾンビが現れて、妨害されたのだという。


「ンもう死ぬかと思ったわ。変な奇声をあげながら、ものすごい勢いで突進してくるんだもの。あんなの初めて見たわ!」

身に覚えがあった。

「それってもしかして、ポーゥ! と叫んでなかったか?」


「そうそれ! ポーゥ! よ。ポーゥ! ポーゥ! ってしつこくてイヤになったわ」


サイケデリック・ゾンビだ。以前目撃したのは西国分寺のあたりだったか。

あそこからずいぶん移動してきたものだ。

それにしても、三箇所からの監視網を抜けて三角形内トライアングルに入り込むとは、ザル警備と言わざるをえない。


「急いで片付けなきゃいけないモンでもないし、イワンたちが帰ってからゆっくり殲滅に当たればいい。動きが速いゾンビなら、ユキが持ってるショットガンが役に立つ」

「帰ってくるのかしらね。田中っちが心配だわァ」


彼は心配していると口では言うものの、特に自分から動かないタイプの人間だ。

悪いやつではないが時々癇に障る。


「行けそうな場合は距離を伸ばして最大一週間くらいは調査すると言ってたから、問題ないんだろうよ。少しはスペツナズを信用してやれよ。イワンが好きなんだろ」


「わかったわよ。じゃあ場所は伝えたからね。あっちでマミちゃんとガールズトークしてくるわ!」

「お前はボーイだろ。イテッ」

つねるのではなく普通に肩パンされた。やっぱりボーイだ。

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