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二階から聞こえてきたお喋り

一階の天井、つまり二階の床は金属製で音がよく響く。

僕とイワンが飲んでいる一階にも、二階の会話が丸聞こえである。

夜勤明けの僕もそろそろ眠りたいが、これでは二階で眠れそうにない。


「え、お姉さんK大生なの? 凄い、尊敬!」

「マミでいいわよ」

「マミさんってさ、彼氏いるの?」


「今はいないわね」

「えー、意外! 今はってことは、昔はいたの?」

「言わなくてもわかるでしょ。昔は昔よ……」

「アハハ! 言わなきゃわかんないって!」


マミが圧され気味だ。

助け舟を出しに行こうか迷ったが、このまま盗み聞きを続ける。


「あそこに積んである本、マミさんの?」

「みんなの本よ」

「へえ、みんな本読むんだね。私無理。本読むと眠くなる!」

「あなたさっきK大目指してたって言ってなかった?」


「そう、私K大に行きたかったんだぁ。今はもうどうでもいいけど。それよりさ、ここ軍事基地か何か? なんでこんなに銃がいっぱいあるわけ?」

「それは言えないわ」


盗んできたとは絶対に言わないマミである。


「あ、そうだ。お風呂あるならさ、ここで髪染めしていい? マミさん手伝ってよ。イワンのリュックに入ってるの持ってくるから」

「夕方にしなさいよ。お風呂入ったばっかりでしょ」

「アハハ! 忘れてた!」


まさしくマシンガントークだ。

イワンは一日中これを聞かされていたのかと思うと、少々気の毒になる。


「その銃珍しいわね。ロシアから持ってきたの?」

今度はマミが攻める番だ。

黙っていてはひたすら質問攻めにあうと思ったのだろう。


「そうよ。イワンがこれを使えってくれたの。見てここ、綺麗にデコったのよ」

「このシールのキャラクター何? 可愛いわね」

「チェブラーシカ! 子供番組のキャラクターよ。ここにはショットガンは置いてないのね?」


ユキが持っていたSaiga-12Sは12ゲージショットガンだ。

女性でも取り扱いやすく、ショットガンなので近距離のゾンビに対しては圧倒的な殲滅力を誇る。


「ショットガンは置いてない。かわりにライフルがたくさんあるでしょ」

「イワンがライフルは狙いづらいからダメだって。サブマシンガンにしろって言ってたわ」

「へえ。彼氏、じゃなくて旦那さんのこと愛してるの?」


「愛してる! もうラブラブって感じ。一緒にプリクラ撮りたかったのになぁ」

「東京まで歩いて来たんでしょ。途中に電力が通ってる街はなかったの?」

「あったけど、プリクラが無かったのよ。やっぱり田舎ってダメね」


彼らは船で柏崎市に上陸したあと、関越自動車道を通って東京を目指したのだという。

途中までは順調だったが、東京を目前にして大渋滞の遭遇して、やむを得ず下道に降りたところ、道に迷ったのだそうだ。

それでこんな西の端に行き着いたという話だが、そっくりそのまま信じるのは禁物だ。


「イワン、持ってる武器はそれで全部か?」

「ちゃいます。車にたくさん武器入れてきたね。ロシアの装甲車。デカイよ」

話を聞く限りでは、彼らの車はUral-63095、船舶に積み込んで持ってきたのだ。

船にも武装を積んできたが、もっていけない分は置いてきたらしい。


途中で海上自衛隊に遭遇してもいいように、漁船に偽装して入港したと彼は語った。

どんな船舶だと、と僕は思った。

なんでそんなに手慣れてんだよ、とも思った。


Ural-63095は彼の言うとおりデカくて固くて重い。

中に武装が積んであるなら、牽引は諦めたほうがいいかもしれない。

燃料を直接持って行ってその場で給油しよう。

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