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改めて二人の外見

目出し棒を脱いだユキは一山いくらの美少女だった。

どういう風の吹き回しか髪を脱色して白くしていて、ミディアムヘアというのか、無造作にボサボサした感じになっていた。

僕も美容室で一度脱色を勧められたことがあるが、皮膚が弱いので脱色する液をかけただけで頭皮が燃えるように熱くなり、ひりひりした経験がある。


あれを髪が完全に真っ白になるまでやるとは、外聞はともかく度胸はある。

おそらく一度や二度美容室に行っただけではこうはならなかったはず。

何度も通いそのたびに料金を支払ったのだ。


顔つきは最近の若者らしく早熟な趣があり、顎のラインがシュッとしていながら女性らしい丸みを帯びたミケランジェロ的な逸品に仕上がっていた。

あるいはレンブラント的、もしくはフェルメール的でもあった。

まあ何が言いたいのかというと、昔からたくさんいる美少女ということである。


ちなみにダ・ヴィンチ的ではなかったので、モナリザ的ではなかった。


体つきは華奢そのものだった。

高校陸上で棒高跳びをやっていたそうで、インターハイで優勝するかしないかの逸材だったそうだ。

現在もその実力はいかされていて、主にゾンビを誘導する際、彼女がひきつけて並のゾンビでは登れない場所にジャンプで駆け上がり、それをイワンが一掃するという作戦をとっていたという。


コンビネーションは抜群というわけだ。

体に響かないのかと尋ねると、妊娠したのがわかったのはごく最近のことで、まだ大丈夫だろうとのことだった。

まあ少しの運動なら逆に健康に良いとも言う。


本人が気にしていなければ止める筋合いはないが、大人として見守ってやるべきだろう。


一方でイワンのほうはというと、誠にロシア人らしいがっしりとした体格をしていて、スラヴ系にありがちな額の広さ、鼻の高さだった。

しかし代々のロシア人というわけではないようで、先祖はポーランド出身だという。


ロシア革命以前に祖先が入植してきたというので、生粋のロシア人と比べてもロシア魂の純粋さでは負けない、と彼は言いはった。

それでも好きな政治家はゴルバチョフだという

ちょっと意味がわからない。


反対に嫌いな政治家はフルシチョフだとも言っていた。

ますます意味がわからない。


年齢は40歳。ユキとは22歳差のカップルである。

世の中には31歳差で結婚するコスプレーヤーもいるし、どうってことないのだろうが、複雑な気分だ。


ユキが二階でヒューイと遊んでいるとき、僕は一階でイワンと共に酒を飲んでいた。

酒を二階に持って行ってもよかったのだが、一階に残ったままのカウンターが飲むのに適していたのと、なんだかんだ飲みながら話すのに便利だったので一階で飲む習慣は変わらなかった。


「実際のところユキをどうするつもりなんだ?」

僕は尋ねた。

「ユキはまだ若い。嫌な目にはなるべく合わせたくない」


イワンはドスの利いた声で言った。

別に脅かそうとしているのではなく、落ち着くとこういう声になるそうだ。

だが急に聞かされると背筋がピンとなるくらいには恐い。


「台東区のマンションに行くって、行ってどうするんだ」

「ユキが行きたいと言ったから着いていくだけだ。俺にとってそれ以上の意味は無い」

「知っているかどうかはわからないが、ここにはゾンビ以外の怪物もたくさんいる。ユキを連れてそれらから逃げられるのか?」


彼はフッと鼻で笑った。

そして右の上腕二頭筋を、グラスを持ったままの左手の指でチョンチョンと叩いた。


「俺は泣く子も黙るスペツナズだぜ。女の一人くらいは守れる」

僕のような外野が口を出すことではなかったな。

しかしこれだけは聞いておかなくてはならない。


「結局、ユキはイワンにとって何なんだ?」

「ユキは、オレのヨメ」


そこは譲れないポイントらしい。

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