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序盤で死にそうな人の特徴

例の霧が発生しているとき、付近にゾンビが寄ってこないのがわかったのは、それからしばらくしてのことだ。

僕たちは依然として工場に寝泊まりしていたが、定期的に発生する霧を利用して

二階に窓をこしらえた。


こしらえたといっても、転がっていた金属カッターでトタンの壁を切り抜いただけなので

ゾンビの襲撃から身を守る防御機能はお察しだ。

マミは鉄格子をはめようと言ったのだが、一介の文系大学生である僕にそのような技能はなく

金属カッターの動かし方でさえ乱暴なもので、あやうく左腕を失うところだったのだ。


窓には木製の棚を取り付けて、狙撃銃で周囲を監視するのに適した形にした。

とはいえ霧が発生しているときには無用の長物である。

どうやら霧の発生と同時に、あの怪物が徘徊を始めるらしく、最初の一体を倒してからは、なるべく霧のある日には外を出歩かないようにしいた。


マミは断続的に響く咆哮におびえていたが、僕が一体を仕留めたと知ると

「なんでそんなに危ないことをしたの」と怒り、「これからは黙って出歩かないように」と言われてしまった。

しかし咆哮の主が銃で倒せることを知って落ち着いたようだった。


ところで駅近くのスーパー、コンビニエンスストアには、多くの食料品が残ったままだった。

おそらくこの災害は急速に進行したのだろう。

略奪にあわないまま放置され、ほとんど荒らされていなかったのは逆に不気味だった。


生鮮食品は腐っていて食べるどころではないので、ここはサバイバルの鉄則に従い缶詰を工場に運んだ。

缶詰は量があるとかなりの重さになるので、結果として何度も往復するはめになり、工場周辺の状況を把握するのに役立った。


ここら一帯には町工場が集中しているらしく、サバイバルに必要な工具一式が揃えられたのは思わぬ副産物だ。

工場の周りにはぐるっと有刺鉄線を張り巡らし、アイアムアヒーローでやっていたのと同じパイプ椅子を並べたトラップも設置しておいた。


できれば地面から棘を生やして殺傷能力のある罠を仕掛けたかったが、自分たちが引っかかると危ないとマミに言われたので辞めにしておいた。

マミのキャミソール姿は目に毒なので、ユニクロからかっぱらってきた黒のTシャツを渡した。

それからこれは僕の性癖でもあるのだけれど、帽子をかぶっている女の子が好きなので、同じくユニクロからかっぱらったワークキャップを彼女にかぶらせた。


僕はというと、自衛隊のヘルメットに上は厚手の作業着、下にニッカポッカ、靴は安全靴と、なんともダサダサな格好をしている。

一度でも噛まれたらいけないのか、噛まれたらどの程度正気を保っていられるのかが不明のため、とにかく噛まれにくい格好をしようと心がけての土方スタイルだ。



楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽



ある雨の日、二階から照準器で監視していると、前方500メートルの地点を歩く人影を捉えた。

しばらく注視していると、それはゾンビではなく生きた人間、それもグループで行動している人たちだとわかった。


小声でマミを呼び、彼女にも彼らの姿を見てもらう。

いかにも生存者といった出で立ちの三人だ。

服装はボロボロで、警戒しながら歩いているのが遠くからでも見て取れる。


僕らも人のことを評せる立場ではないのだけれども。


「呼んでみようか。なにか聞けるかもしれないし」

「安全だって保証はあるの? あの人達が感染していないという」

「わからないよ。でもこのまま二人でいても、進展があるわけじゃないし」

「それはそうだけど、でも……」


不安がる気持ちは分かる。

よくあるゾンビ映画では、ボコボコ仲間を増やしてトラブルの種を自分たちで撒いている。

しかしここは事情を聞いておくべきだろう。


こちらには銃がある。

もし相手が暴徒だったとしても、大事には至らない。


「だいじょうぶ、何かあったら僕が守るから」


かくして僕は生存者のグループを呼び寄せるため、工場の外に出た。

夏の暑い午後のことである。

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