表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/230

飲む

挿絵(By みてみん)


「これだけの量を運ぶんじゃあそりゃ時間がかかるわ。滅茶苦茶つかれたろう」

今朝作ったばかりのバーに腰掛けて、非番の僕と鈴木、田中は杯を重ねていた。

野菜嫌いの田中でも酒は飲めるらしい。

初めて飲んだというバーボンを美味そうに飲む彼は、口当たりの良さに気を良くしてハイペースで注いでいた。


「疲れたには疲れたんだけどさ、酒集めは別にそうでもなかったんだ。あのオッサン、次から次へとものすごいスピードで酒を集めていって、俺たちはそれを運び出すだけでよかった。バーの中にいたゾンビも、バーテンらしき男が一人いるだけだったから、あいつ (田中)がポン刀で斬って終了」


「おかしいじゃないか。それならあんなに時間を食うはずがない」


僕はバスティーユをストレートでやっていた。

甘い味と香りが特徴のフレンチウイスキーだ。

ウイスキーとは思えない強い甘さがあるので、女性でもぐいぐいいける珍しい酒だ。


「問題は帰りさ。アレに出くわしたんだよ。例のマンホールにいるっていう」

「マンホール・ミミックか」

「それだ」


鈴木はラムをぐいっと煽ると、コップをテーブルに置き、こめかみのあたりを指で押す仕草をした。

その様子から、かなりの強敵だったことが容易に想像できる。


「それでどうだったんだ、実態は」

「あれは確実に足長手長だった」

「足長手長というと、妖怪の?」


「ハンヴィーがマンホールの上を通ったらよお、バックミラーで蓋が動くのが見えたから車を停めたんだ。みんなそんなモン見てねえって言ったけんど、俺ぁ絶対に見たと言い張った。50m離れた位置からM24で蓋に向かって三発、そしたら蓋が吹き飛んで、中からお出ましって寸法よお」


「その姿が、足長手長だったってわけか」

「そうだ。正確には手足の長い1体のゾンビだったがな」


手長足長は、手の長い一人と足の長い一人が肩車している妖怪だ。


「足長手長とは違うじゃないか」

「NO NO! そいつには顔が二つあったのよお。胴の部分に二つ、大きいのと小さい顔が」


その姿を想像して、ブルッと身震いをする。

人外の怪物ならまだしも、中途半端に人の形をしているほうが一層恐い。


「戦力はどうだ。俊敏か、怪力か、知能が高いか、跳躍力が優れているか」

「脚が速かった。50mなら3秒くらいだろう。一瞬死を覚悟したよ。反射的に引き金を引いてなかったら、全員殺されていた」

「倒したのか」


「当たらなかった。でも音に驚いたのか、俺たちから10mほどの距離で立ち止まって、欽ちゃん走りで路地に消えてった」

「それは、恐いな……」


マンホール・ミミックは撃退したけれど、発砲音を聞きつけた他のゾンビに囲まれたので、処理に追われ時間がかかったのだという。

その間橋部氏は車の中でガタガタ震えているだけで、まったく戦力にならなかったという話だ。


「よくやってくれたよ。二人は存分に飲んでくれ。俺はそろそろ御暇するとしよう。あんまり飲み過ぎても、マミがうるさいもんでな」

「まだしばらく飲んでから上に戻るよ。二人にはそう伝えてくれ」

「アイアイサー。田中はどうする?」

見ると田中の姿はなく、視線を下にずらすと酔っ払ってぶっ倒れている田中が、大いびきをかいて眠っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ