表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/230

迫撃砲を試し撃ちしてみる

120mm迫撃砲 RTは五人一組になって動かす。

タイヤがついているので、500kg超の重量でも後部から押せば十分に動かせるのだ。

長距離移動する際には車を使わなければならないが、短距離であれば人力でも使用しうる。


砲についてる三つのハンドルをグルグルまわして左右水平向きを調整し、120mm迫撃砲弾を砲身に突っ込む。

砲弾は砲後部の紐を引くとただちに発射され最大で8km先の目標にまで届く。

ロケット弾の場合なら更に長距離の目標を撃滅できる。

だが僕には使い方がわからないので使わない。


砲弾は、普段から筋トレをしている男性であれば一人でも持ち上げられる。

一人で持てないような砲弾は使い物にならない。

砲身に入れた直後に発射するので、砲の正面に立っている人は装填してすぐしゃがむ。

しゃがまないと射出された砲弾が頭を貫通してそのまま8km先に落ちる。


迫撃砲というといかにも爆散しそうな響きがあるが、実は面攻撃には適さない武器だ。

弾薬によって調整可能とはいえ、通常は点目標に命中させなければ効果が得られない。

なので十分に狙って撃つ必要がある。ハンドルをグルグルやるのだ。


田中に砲弾をもたせると本当に死んでしまいそうなので

彼には僕に砲弾を手渡す役をやってもらった。

鈴木、阿澄、マミの三人は砲の後方に立ってハンドルを回したり発射の合図をする。

他の人員は見学している。


敷地の中からどの方角に撃ちだすのか昨晩話し合って、現状では未知の領域である都心側の、なるべく民家がなさそうな場所にと決まった。

砲弾を撃ちだすときの音と衝撃も相当だが、着弾の威力がそれを上回る。

ゾンビは音の大きいほうに群がるだろうと予測しての訓練実施である。


きちんと動作するか一抹の不安があったけれど、悩んでいても埒が明かないので強行する。

砲弾を入れると問題なく射出され、訓練用に用意した120mm迫撃砲弾50発を撃ち終えるのに三十分かかった。

砲弾は非常に重く、玄人は持って走って入れて撃ってまた持って、という具合に上手くいくのだが、僕たちは1発撃つだけでも非常に難儀した。


方向を変えながら適当に撃ってた弾の一つが、何に当たったのかはわからない。

26発目を発射して、27発目を準備しているときに着弾したらしき方角からゾンビどもの雄叫びが聞こえた。

かなりの大音量だった。


射撃の筋がよかった幹夫と真純を二階にやって、狙撃銃で索敵してもらっても、建物に阻まれて見えないという。

あんまり怖かったので残りの24発はすべて雄叫びがした方向に撃った。

13発目までは同様の雄叫びが聞こえたが、だんだんと小さくなってやがては聞こえなくなった。



楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽



砲を片付けて汗を拭っていると、見学者の一人である北村宗次郎が話しかけてきた。


「ずいぶんと過剰に訓練なさっているようだ」

「このくらいはなんともありませんよ。いざというときには訓練など役に立たない」

「それではなぜこんなに弾を撃つんです? 着弾した場所に生存者がいたかもしれないのに」


「それは神のみぞ知る、というやつですよ。まあ僕は数学には詳しくありませんが、確率から言っても微々たるものでしょう」

「だがゼロではない」

「Exactly、あなたはずいぶんな論客ロジカリストのようだ。ゾンビもそうやって論破ギャクサツしてくれると助かるんですがね」


「ご冗談を。ゾンビに理論など通用しませんよ」

「ええ、効き目があるのは銃撃あれだけです」


「さて、私は野菜の様子でも見てくるとします。訓練お疲れ様でした」

「野菜に変な知恵を吹きこまないでくださいよ。理論かぶれの味になったら大変だ」

「ワハハハ。心得ております」


なんだか頭の堅そうなオッチャンだな、と僕は思った。

やれやれ、ああいった村上春樹世代はペリエでも飲んで、健康に気をつけていればいいんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ