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エッチな彼女は慎重派

挿絵(By みてみん)


まずはゾンビの身体能力を確かめる必要があったので、ハイスクールオブ・ザ・デッドの人がやっていたような方法で、何を感知して奴らが襲ってくるのかを確かめた。

付近にいるゾンビが少ないうちに情報を得ておきたい。


マミと僕は離れたところからゾンビを見ている。

車の陰に隠れて、ゾンビの横に石ころを投げた。

ゾンビは石が落ちた地点に駆け寄って、あたりをまさぐりはじめた。

なるほど、視覚よりも聴覚が敏感らしい。


僕は以前L4Dというゲームをして、ゾンビの気持ちはだいたい把握したと思っていた。

しかし今度の騒動ではまったく通用せず、むしろ昔のゾンビ映画が好きなマミのほうが活躍していた。


僕はワールド・ウォーZとか28日後のゾンビが好きなのだが、目の前にいるゾンビはのそのそゆっくり這いずりまわっているだけで、一向に俊敏でなく恐ろしくない。


何しろこちらにはアメリカ軍からくすねた武装があるのだ。

いざとなったら銃撃戦に持ち込んで、奴らを一体一体倒していけばいい。

しかしマミは違う考えを持っているようで、僕が何度説得を試みても、首を横に振った。


「そんなことしたら可哀想じゃない。どうしてゾンビになったのかもわからないし、元に戻す方法があるかもしれない。アナタが好きな映画でもあったでしょう。アイアムレジェンドでは、あの例の黒人(名前は忘れた)が最後のシーンか何かで元に戻すワクチンを作ったでしょう。相棒の犬はゾンビになって死んじゃったわね。あれは可哀想だった。私はね、あれと同じことはしたくないのよ……」


百理ある、と僕は首肯した。

けれども現状を打破するにはある程度の武力衝突は避けて通れない。

銃弾は使わなければ荷物になるだけ(くすねてきた銃弾はふたりで4000発+300発)5.56x45mm NATO弾は4グラムくらいなので、ひとりあたり2000発の重量は9kgほどになる。狙撃用の7.62x51mm NATO弾は置いてある場所がわからなかったのであまり量は持って来られなかった。



楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽



まったく嘆かわしい話だ。

帰国してすぐ花火大会に行くつもりが、この調子では中止になったに違いない。

我が家も無事かはわからないし、四六時中マミと一緒では気が休まる時がない。


僕たちが今夜のねぐらに選んだのは、寂れた工場の二階だ。

撃つなとマミが言うので、ゾンビがうろうろしている道を歩いて良さそうな建物を探すことができなかった。

内部は汚らしく、本来人間が住むようには作られていないので床がかたい。


だがいい部部分もあった。

機械類が散乱している一階は、目の悪いゾンビが歩けば物にぶつかって音がする。

仮の住居としては及第点と思える建物だったが、すぐに考えを改めることになった。

冷房もなく窓も開かない部屋では、寝苦しくて休むどころではない!


空気がよどんで変なにおいがする。

ただでさえ慣れない環境で神経が過敏になっているのに、こんな場所で寝なければならないとは。


文句が多い僕とは違い、マミは平気な顔をして横になっていた。

彼女は暑いからと上着を脱いでいたので、今は白のキャミソールを身についけているだけである。

エッチだ……w


下はパンツ一丁だが、それでも暑そうだ。

こんなに暑いと寝ているあいだに熱中症になってしまう。


気温が下がり始めたのは深夜を過ぎて、朝方近くなってからだった。

しかし一気に冷え込んだので、急な寒暖の変化で眠るどころではなかった。

中くらいの温度で十分なのに、少しは都合よくしてくれ! と僕は思った。


「寒くない?」

マミも眠っていられなかったようで、歯をガチガチと鳴らしていた。


僕たちは朝まで身を寄せ合って過ごした。

夏なのに、冬山で遭難したような有様だ。

さっきは少し「いいな」と思った彼女の体も、今では熱源にしか感じられない。

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