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悲観的な日野市民

マンホールの話を語ったときもそうだったが、8人はどうにも悲観的で、人生を諦めているようなきらいがあった。

ニッカポッカ連合にくみする英断を下してくれたとはいえ、端から諦めている態度はいただけない。

彼らを元気づける意味合いも込め、僕は小室直樹ばりの大演説をぶとうと画策した。


まずは元気になってもらわなければ、共同生活をしてもストレスが溜まって思わぬところで暴発するだけだ。

工場の一階に全員集め、僕は前に立ちビールケースの上に乗る。

おっぱじめるのは歴史の授業、それも過去46億年の概要である。


「かつて地上を制した生物は多くいる。最初期に地上へと進出したシアノバクテリア。三葉虫やアノマロカリス、ウミサソリ、中生代には恐竜、新生代には霊長類。僕が思うに、一度地上を制した動植物が絶滅した試しはない。恐竜は鳥類に進化したし、バクテリアの類はそのまま生き残っている。アノマロカリスだって絶滅しなかったという説がある。つまり人類70億人をいっぺんに殺すなんてことは、どうやっても不可能だ」


とうとうと述べ立てたのだが、8人は何やらざわついている。


「三葉虫は絶滅したよな……?」

「ウミサソリも絶滅したわ……」

「ダンクルオステウスだって絶滅したし……」


どうやら8人は僕よりも頭が良いらしい。

僕は高校のとき生物のテストで24点をとったことがある。

自慢じゃないが、過去の生物がどうなろうと微塵も興味が湧かないのだ!


「ええと、何が言いたいのかを簡単に説明しますと、人類の命運は僕たち生存者の手中にあるということです。実は、予想も含めて言いますと、都内には現在それなりに多くの生存者がいると見込んでいます。しかしそれぞれのグループは言わば陸の孤島状態。日野市役所でやっていたような放送用器具を持っていないグループは、外部と連絡をとる方法がないのです。それを一つ一つ当たっていて、統率し復興にあたる。僕たちの目標はこの一点です」


「それで私達は何をしたらいいんでしょう」

オバチャンの田嶋晴海が言った。


「当面はここで共同生活をしてもらいます。用がないときには二階に上がらないように。僕たちと協力して、食料調達などをして周辺の地図を覚えた後、別の拠点に移動してもらいます」


「移動? 私達を見捨てるつもりですか?」


「一つの拠点でやっていくより、二つの場所から一帯を監視して、牛耳るのです。生活してもらう場所はここよりも断然良いところを選ぶつもりなので、その点は心配いらないでしょう」


一個の拠点を死守するより戦力を分散させて面で守るほうが有益なのは、シヴィライゼーションⅤで覚えた。

13体のユニットをどう動かすか。

計画プランでは5・8で分散させるが、本音を言えば5・4・4で分けたかった。

グループの拠点を三角形トライアングルに配置して、内角を監視すれば内部ではかなりの安全を確保できる。


だがグループの少数化は諸刃の剣だ。

いたずらに不安を煽ってもしかたがないので、共同生活で連携を強化して対ゾンビ戦に慣れてもらう。

次に演説するときは茶々を入れられないよう、生物の教科書でも拾ってきて勉強しておこう。

アノマロカリスは絶滅した、アノマロカリスは絶滅した……。

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