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いざ大海へというときになって明かされた事実

挿絵(By みてみん)


豪雪地帯新潟。

降る雪は人間の背丈など優に超え、メートル単位で積もる。

柏崎市は雪で埋もれていた。

街全体が、雪に埋もれていたのである。


港まで行くのは無謀だった。

イワンのラッセルがなければ体力が尽きて引き返さざるを得なかっただろう。

行軍には数日かけ、比較的雪がない場所に拠点を設け、徐々に道を作っていくことでなんとか港まで行けた。

それも道を作っているあいだに雪が降らなかったから成せた技で、もし降っていたら苦労が水の泡となっていただろう。


スキーショップで上等のスノーシューを盗んでおいて正解だった。


船は転覆を免れていた。

というより沈む寸前でなんとか持ちこたえていた。


急いで雪下ろしにかかったが、凍りついていて尋常ではないほど重い。

ここまでの行軍で疲労困憊の体では、シャベルを使って持ち上げるのさえつらい。

しかしそんなことを言っている場合ではない。


腕がちぎれても雪を下ろすという覚悟で、がむしゃらに、もう何がなんだかわけがわからなくなるほど一心不乱に、ひたすら雪を海に投げ捨てた。

モリモリ雪を掘ってドサドサ捨てた。

雪の白色がチカチカして、シャベルがゲシュタルト崩壊した。


今自分が雪を掘っているのか、積み込んでいるのか分からなくなった。

腕の筋肉が悲鳴を上げ、不安定な足場に立っていたため膝が震えた。

足にできたマメが潰れた。


気温はおそらく氷点下だったが、連日汗ばんでの作業となった。

そう、雪下ろしは連日かかったのである!

ある晴れた日は、マミと眞鍋が厚着をしていたのに対し、僕とイワンはTシャツ一枚で雪と格闘した。


もうこれ以上動けないという程疲れが溜まったとき、ようやく雪下ろしが終わった。


「助かった! いや助かったよ! オ兄サンありがとう。一番頑張ってたよ!」

「あ、ありがろう」


僕は口が回らなくなっていた。


だが本当に一番頑張っていたのはイワンだ。

これはどうこう言っても仕方がないが、彼は体のつくりからして常人とは違う。

ゴリラ人間である。


「私、手伝えなくて、ごめんなさい」

「卑屈になるな、香菜ちゃん。見てみろ、夕日が沈んでいくぜ」


僕は清々しい気持ちだった。

特に今日は、雪下ろしが終わった日である。

このまま日が沈んでしまえば、作業は明日に持ち越しになるところだった。

なんとか今日中に終えて、気持よく夕日を拝めるよう頑張ったのだ。



楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽楽



翌日は船の内部を掃除した。

僕らとイワンは別行動を取って、船の掃除をしている間に、イワンが出発の準備を整えることになった。

筋肉痛で鈍くなった動きでも、内部の掃除くらいは出来る。

雪下ろしと比べたら寝ていても出来るくらい簡単だ。


さて、燃料を補給し、必要な物資を積み込み(もともと積まれてあったものが大量にあったので、調達するのは少しでよかった。調達のとき、また店の周りを雪かきした)出発と相成った。


本日は晴天なり。

絶好の航行日和に出港できたのは、日頃の行いがよかったからか。


青天の霹靂。

船が港を離れようとしたとき、僕たちが作った町から港へと続く道に、ゾンビの行列が現れた。

蟻の列のようなものである。


町にいたゾンビが道に入ると、一方通行のため列になって港に押し寄せることになる。

けれど僕たちはもう岸から離れている。

襲われる心配はない。


列をかき分けて、猿か牛か獅子のような鳴き声をあげて、雪男が走ってきた。

それも数体いる。


「見送りありがとう!」

イワンが叫んだ。

「祝砲をあげよう。オ兄サン、例のものを皆に。場所はさっき教えたところ」


操縦しているイワンに代わり、僕はみんなに手渡したのはAKMだ。

僕が以前イワンに一度やってみたいと語ったこと。

それはロシアン・マフィアか中東のゲリラのように、馬鹿みたいにAK-47を撃ちまくること。


絶好の機会がやってきたというわけだ。

見送りのゾンビに向かって、僕、マミ、眞鍋はAKMを連射する。

当たらなくても構わない。


7.62x39mm弾の掃射で舞い上がった雪が雪煙となって天に登った。

さらば新潟、さらば陸。

航海には不安があるが、ゾンビの心配がなくなる良い場所だ。


なんといっても、しばらくは雪の上を歩かなくてもいいのだ!

これほど嬉しいことはない。


「さあ、みんな中に入って。海ゾンビが出るから、警戒は怠らないでネ」


僕はイワンの言葉に絶句した。

海ゾンビ……だと……。

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