表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/230

Zombie rush! rush! rush!

挿絵(By みてみん)


深夜、マミの声で目を醒ます。

窓際に三人が固まっていて、田中がM110の銃口を外に向けている。

鈴木と阿澄はそれぞれM24を手に釘付けになって外を眺めている。

何があったのかは瞬時に察せられた。


「寝てた、ごめん」

「いいのよ、私も今起きたとこ。それよりも外……」

「ああ、今行く」


体を起こして、暗視スコープを持って窓際に身を寄せる。

三人に倣って体を見せないよう顔だけ出して外の様子をうかがうと

工場の正面にある道路に、大量のゾンビたちがたむろしていた。

数にして数千人はいるだろうか。

全員が工場の方面に歩いていて、ゾンビたちの後方には例の怪物の姿もある。


「あれは鳴いたか」

「いいや鳴かない。それに動かない」鈴木が答えた。

「みんなM4A1を持て。田中、それを貸せ」

「いいけどよお、これどうすんだよお、もう終わりだよお!」


本当に終わるのだろうか。

米軍からこれほどの武器を盗んできたというのに?

暗視装置を装着して照準器を覗くと、世界は緑色だった。


「READY」


怪物に向かって発射する。距離が距離なので外れた。

もう一度撃つ。これも外した。

音を聞きつけたゾンビたちの歩くスピードが、心なしか上がったように感じられた。


「何してる。撃て、撃て、撃て!」


僕の声を皮切りに、一斉に発砲音が鳴る。

射撃の腕前は全員素人だ。

しかし絨毯のように道路を埋め尽くしているゾンビ相手では、たとえ目をつむってでも当てられるだろう。

案の定、早くもバタバタとゾンビが倒れ始める。


照準器を外し、もう一度丁寧に付け直してから狙いを定め、引き金を引く。

命中。銃弾は腹部を貫通した。

悲鳴に似た鳴き声をあげた怪物は、逃げるように路地へと隠れた。


「だめ! 追いつかない」阿澄が叫ぶ。

「マミ、M72を持ってきて」

「アイアイサー」


使い捨てであるM72の一本をここで消費するのは痛かったけれども

相手が物量戦をしかけてくる以上、消費を恐れていては押し込まれてしまう。

後部を引き伸ばし、後ろに誰も居ないことを確認すると、ゾンビ隊列の先頭をめがけて打ち込んだ。


爆音と炎上。どうやら近くにとめてあった車のガソリンに引火したらしい。

あたりは一面火の海と化し、それが運良く道を横断する形になったので

火の壁がバリケードとして機能した。


無我のゾンビは火があってもおかまいなしに突っ込んで、自滅する。

鈴木、阿澄、マミの三人に道路に向かって射撃を続けるよう指示し

僕は狙撃銃をM16に持ち替えて田中と二人で一階に降りた。

難を逃れたゾンビが侵入していないか調べるためだ。


工場の敷地内に数人のゾンビが入り込んでいた。

有刺鉄線に絡んでウネウネ動いている。

弾を節約するためよく狙いをつけて一発で仕留める。


「これが花火大会のかわりになるのかよお」田中が言う。

そういえば、今日が花火大会の予定日だった。

「自分で花火をうつなんて、なかなかない経験だろ」

「そうだけどよお!」

彼は興奮している様子で、未だに銃を抱きかかえていた。


「田中、引き金に指」

「ああ、すまねえ」

ようやく力が抜けてきた彼の背中を、平手で叩く。

「しっかりしろ。三人の中ではお前が一番年上なんだろう?」

「一番年下なんだよお!」

彼は悔しそうに叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ